表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
内通者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
93/912

武器での天馬合戦




朝目覚めるとリディオノーレは体が軽いのに驚いた。

「あれ?」

もう既に起きているグレイザックを見やる。


「起きたか」

グレイザックは朝早くから何やら書き物をしていたらしい。筆を置き、顔を上げて彼女を見ると「ついてこい」と言われ、外に出る。


「え……」

到着したのは訓練場である。

リディオノーレは顔が引き攣った。


「体は大丈夫だろう?回復魔法をかけたからな」

グレイザックはそう言って剣に変える魔法陣の紙を渡す。

リディオノーレは渋々、杖を剣に変えた。


「素振りだ。朝食に呼ばれるまで、ひたすら」

グレイザックはそう命じる。

「えええっ」

リディオノーレは思わず声を上げた。

「何だ」

グレイザックにひと睨みされ、リディオノーレは押し黙る。


グレイザックは彼女の剣に「ルーナド」と術をかけた。

「!!!」

リディオノーレは思わず驚いた表情を見せる。

すごい重いわけではないが、少し重たくなったことで振りにくい。


「腕へと流す魔力は最低限に。疲れたら回復魔法をかけてやるから、ひたすらやれ」

リディオノーレは唇を尖らせながらも文句を言わずに素振りを始めた。


「……重いです」

リディオノーレは乱れた呼吸を整えるために少し休んだ拍子に愚痴った。


「当たり前だ。重くしたからな」

グレイザックはそんな当たり前のことを言うな、みたいな顔をしている。

リディオノーレからしたら、何で剣を重くされたのか理解していないのだ。


「続けろ」

グレイザックは簡潔に命じる。

彼女は文句を言いたげな顔をしつつも、素振りをやり続けた。

剣を投げ出そうとしたら、すぐさまグレイザックが回復をかけ、延々とやらされる。


「………朝から何をやっているんですか」

空が明るくなってきた所で、ムナグレークが訓練場にやってきて呆れた声で物申す。


「救世主っっ!!!」

リディオノーレはぱぁっと顔を輝かした。

その様子にグレイザックが彼女の額を弾く。


「素振りだ。お前もやるか?」

グレイザックがムナグレークに尋ねる。

「遠慮しておきます」

ムナグレークは断り、「朝食の時間です」と言った。


「やっと!やっとご飯食べれます!!」

リディオノーレはそれはそれは嬉し涙を湛えながら、叫んだ。

「………しごきすぎでは?」

ムナグレークは苦い顔をしながら、グレイザックに進言した。

「そんなことはない。回復魔法もかけてやっている。優しいだろうが」

グレイザックは片眉を上げながら抗議したのだった。




朝食を摂り、また訓練をさせられ、昼食を摂ると天馬合戦の時間になった。


「今回の鈴はリディだ。剣でやれる所までやってみろ」

グレイザックは命じた。


そうして、4対4の杖を武器に変えての天馬合戦が始まった。


同数なので1人ずつ相手する形になる。

グレイザックはアブストール。

ムナグレークはライムグート。

バルデミアンとリディオノーレは平騎士を相手にする。


ほんのついさっきまで少し重くされた剣を振るっていたリディオノーレは、今の剣が軽く感じられて目を見張った。

ただ、実践は片方で手綱を握りながら剣を振るうので、片手で騎士の剣をいなすにはなかなか苦労する。

剣を握る右手に多めに魔力を流して対応する。


何故、こんな非効率な肉弾戦の天馬合戦をするのか聞きたい。魔法で放てば終わる話だろうに。

誰も疑問に思わないのだろうか。


リディオノーレは悶々としながらひたすら逃げ回る。

魔法で攻撃をしてはいけない納得ができる理由を教えてくれたら素直に鍛錬に励むのだが。


リディオノーレはとりあえず逃げ回る。

手綱捌きなら、並の騎士程度にできる。


「逃げるのかっ!」

彼女の相手である騎士が叫びながら斬りかかってきた。

リディオノーレは頑張って剣を受ける。

彼女が受けないと、天馬が傷つく。

それだけは嫌なのだ。


天馬合戦で天馬を攻撃すれば、それで確かに勝敗がつくのだがそれは愚策だと思っている。

それに天馬は傷をつけて良い存在ではない。

ムナグレークがどれだけ大事に世話をしているのか知っているからこそ傷つけさせるわけにはいかないのだ。


「くっ!!」

やはり騎士の剣は重い。

押し返そうにも地上じゃないので踏ん張る所がないため、力が出ない。


それを軽々と押し返したりできるグレイザックやアブストールがすごいのだと本当に実感するリディオノーレ。

どこまで鍛錬したらあそこまでの境地に行けるのか。


「押すな!流せ!」

グレイザックはリディオノーレの戦いを横目で見ながらそう叫んだ。

「余裕だな!」

アブストールが剣を連続で打ち込む。

グレイザックは何事もないように全ての剣を受けきり、今度は自身が攻める。


「流せ……って言ったって」

リディオノーレは剣を交えながら呟いた。

全然分からない。どう流せばいいのか全くもって分からない。

彼女が相手している騎士は力押しでいけそうだと確信し、どんどん力を込めてくる。


「っっっ!!」

リディオノーレは歯を食いしばる。

「負けを認めろ」

「〜〜だーれーがっ」

リディオノーレはギリと歯軋りすると腕に流す魔力を増やす。


そのまま力任せに振り払うと、騎士は大きく後ろに避けた。

天馬に乗りながら剣を振るうなんて難しすぎる。

リディオノーレは苛立ち、天馬の上に立ち上がった。

少しでも足を踏み外せば、地上に落ちる。


「!!!!」

彼女の行動を見た全員が目を大きく見開いた。

「危ないっ!」

「やめろっ!」

次々と声が上がる。


「リディッ!!!」

ムナグレークとバルデミアンも思わず叫ぶ。

グレイザックはアブストールの剣戟を受けながら、少し呆れた息を吐いた。


リディオノーレは天馬の上に踏ん張って剣を構えた。

相手の騎士は驚きつつも、にやりと笑うと剣で突いてくる。

彼女は避けて、そのまま相手の天馬に乗り移ろうと飛んだ。


「!!!!」

またその行動に皆がギョッとして悲鳴が次々と上がる。

リディオノーレは振りかぶりながら飛び上がり、相手の騎士の上に乗ろうとしたが失敗した。


そう。失敗した。


跳躍力が足らなくて落ちていく。

落下により、彼女が首にかけていた鈴が風で上に上がる。

その紐を相手の騎士は上手に剣で引っ掛けて取った。


「あ」

リディオノーレは間抜けな声を出す。

落下しながらも彼女は「リヴァベーレ」と解除の呪文を唱え、剣を杖に戻した。

自分に浮遊魔法をかけないと死ぬ。

そんな彼女を相手の騎士は腕を伸ばして掴んで引っ張り上げてくれた。


「終了ーーーっ!!!」

審判の合図と共に終わりが告げられ、相手の騎士に引っ張られたリディオノーレは彼の前に腰を下ろした。


「すいません、ありがとうございます」

リディオノーレは苦笑しながら礼を言う。


規格外な剣の打ち合いをしていたグレイザックは終了の合図ですぐ剣を解除すると、リディオノーレの元へと向かう。

彼女の天馬は先に地上に降り立っていた。


「リディ、来い」

グレイザックが少し下から手を伸ばす。

リディオノーレ達がいる所より斜め下辺りで待機するグレイザック。

「飛べ」

リディオノーレは助けてくれた騎士にもう一度礼を言うと飛び降りた。


あまりにも躊躇いのない行動に、助けてくれた騎士が驚く。


リディオノーレを難なく受け止めたグレイザックは、彼女を前に乗せて地上に降り立った。

既に他の皆は地上で待っていた。


「このままついでに魔法陣を教えてやるから、闇か転移か選べ」

グレイザックは先に天馬から降りながら、アブストールに告げる。

「仕事柄、闇の方がありがたい」

アブストールはにやりとした。


「リディ」

グレイザックは名を呼ぶ。

リディオノーレはアブストールに手を引かれながら天馬から降りると杖を出した。


「闇の魔法陣は各々の魔力量によって範囲が変わります。なので、元から範囲拡大を組み込んだ上で展開すれば良いのです」

リディオノーレは杖で魔法陣を描いていく。

その様子を騎士たちと観客がジッと見ている。


彼女の一風変わった魔法陣を、皆が興味深く眺めている変な光景がそこにはあった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ