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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
カルムクラインの生き残り

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28/912

覚醒の予兆



魔力の使いすぎにより、その日は爆睡したリディオノーレ。

目が覚めたのは翌日だった。


ぱちぱちと目を瞬く。

周囲がチカチカする。


起き上がると目をこするが、チカチカが消えない。

頭が少し痛い。喉も乾いている。


辺りを見回すと、まだ日が昇っていなかった。

なのにチカチカしているわけが分からない。


立ち上がると、ここはグレイザックの部屋だと分かった。長椅子に寝てたらしい。

グレイザックを探すと、椅子を繋げた簡易の寝台で横になっていた。


「…っ」

鈍痛がするし、周囲がチカチカしていて気持ち悪い。

グレイザックの元に近づくとしゃがみこんだ。


「……?」

グレイザックは身じろぎをして、目を覚ました。

彼の服を引っ張るリディオノーレを見て、少し驚く。

頭を押さえて俯いている。


「どうした?」

グレイザックは体を起こす。

「…っ。頭が、痛くて、気持ち、悪いです」

それを聞いて、彼は彼女の額に手を当てる。

「……熱だ。頭痛は熱のせいだろう。どう、気持ち悪い?」

グレイザックは優しく尋ねる。


「周りがチカチカしています。たまにチカチカすることはあったんですが、今は眩しすぎるくらいです」

その言葉にグレイザックは唇を引き結んだ。


「目を閉じていろ。開けなくて良い。それは俺がどうにかする」

グレイザックは手で視界を隠してやる。


「とりあえず長椅子まで運ぶ。目は閉じていろ」

グレイザックはしゃがんでいる彼女をそのまま抱き上げる。

歳が6しか離れていない割に、グレイザックは力持ちだ。

長椅子に寝かせるが、手は彼女の視界を覆っている。


「これは一体、何なのですか」

彼女は尋ねる。

「……魔力の使いすぎだ。その熱だ」

グレイザックは息を吐く。


「……すまない。ここ数日で使いすぎたな。実験ももう少し止めるべきだった」

後悔している声だ。


「それはいいんです。自分でしたかったからやってたので。それより、眩しいチカチカは何ですか」

視界を覆うグレイザックの手をのけてみると、一気に眩しさが来て、ぎゅ、と目を強く閉じる。


「見るな」

グレイザックはまた手で視界を覆う。


「これはな、お前の魔力が上がって、前よりは見えるようになってるんだ」

「どういうことですか?」

「魔力の使いすぎにより、枯渇状態になった。すると、魔力量が少し増えるんだ」


初耳だった。

「枯渇状態になると、魔力を取り戻そうと体が必死になるため増える」

「じゃあ、皆枯渇状態にすれば、保有魔力が増えるのに何でやらないんですか」

リディオノーレは発言する。


「欠点もある。今のお前のように熱が出たりするし、酷い者なら死に至る」

「っ!!!」

彼女はびく、と驚いてしまう。

「だから、オススメはしない」

グレイザックは息を吐く。


「……その感じだと、試したんですね?」

リディオノーレは少し笑った。

「まあな」

グレイザックは苦笑する。


「寝れるか?魔法をかけるか?」

「このまま手を置いていてくれるなら寝れそうです」

手から伝わる体温が気持ち良い。

「分かった」

彼はそれだけ言うと、黙って彼女が寝るまで待ってくれた。


規則正しい寝息が聞こえてくると、グレイザックは手を離す。

「……ふぅ」

布団をかけ直してやり、疲れた息を吐く。


どうやら、精霊の存在に気付きそうである。

初めて話したとき、彼女はグレイザックと目が合わず、周囲に視線が行ったりするのを見て確信していた。

今までは視線が違うとこを向いてるのは稀だったのだが、どうやら覚醒しつつあるらしい。


頭をがしがしと掻き、彼女を見下ろす。


「忙しすぎる……」

彼はまた疲れたため息をつく。


彼女の杖の作成。学院に入学するまでの勉強。私生活の面倒。カルムクラインの粛清。出来れば黒幕も捕縛したい。そして、ここに来て精霊師として覚醒しつつある彼女を守るための道具を作らないといけなくなった。


カルムクラインで、彼女が夜更けに交渉してきた後、サムエルとライリルムントには彼女が恐らく精霊師であろうことは述べている。

2人が驚愕したのを覚えている。


精霊師は国に1人居れば、繁栄すると言われる貴重で英雄のような存在だ。

ごく稀に出現し、国のために仕える。

この国での記録に残っている直近の精霊師は、50年前だ。グレイザックはバレないように徹底的に行動している。細心の注意を払って。

この城で知っているのは2人だけである。


ライリルムントも別に奏上していない。奏上すれば、アインズビル領をもっと贔屓してもらえるのだが、

元々少数精鋭のアインズビルは、これ以上仕事ができる者が減ると困るらしい。

そんな理由でグレイザックのことをひた隠しにしている。


そんな彼自身を隠匿できるアインズビルに彼女を連れてくるべきだろうとグレイザックは判断したのだ。

カルムクラインでは隠しきれない。

そして、彼女がもし精霊師だとバレると現王か王子の嫁にされるだろう。

年齢的には王子の婚約者の方だろうな、とグレイザックは頭を押さえた。


彼女のように自分が精霊師だと気づいたとき、使用していた私物があったはずだ。

探さないと、とグレイザックは慌てて部屋を漁り始めた。


日が昇り、少し経つとサムエルが訪れる。

でも、扉を閉めているとノックをするので、開けたままにしておく。

すると、扉の外から気配がして、気配の主は訝しながら声をかけて入室してきた。

ノックを控えたのは流石である。


「……グレイザック様?」

「リディが起きる前に話がある」

グレイザックは私室の扉を開けたまま、サムエルと廊下に出る。


「どうやら覚醒しつつあるらしい。今朝早く、熱と頭痛と眩しくて気持ち悪いのを訴え、起きてきた」

その言葉に目を見開くサムエル。


「話すつもりですか?」

「いや、魔力が増えたんだと誤魔化す。話してしまうと研究しそうだろう?」

グレイザックは苦笑いだ。

「……確かに」

サムエルも苦笑いになる。


「とりあえず、俺が使っていた眼鏡がある。それで何とかなるだろう。ただ、眼鏡を外さないといけないとき用に早急に目薬をつくらないといけない。眼鏡も割れる心配があるしな。だが、素材が足らん。すまんが3日……留守にしてもいいか?」

グレイザックの顔が少し焦燥している。


「ムナグレークにも話しておくから、補佐してくれるだろう。俺が帰るまで眼鏡を外さないように言っておいてくれ。湯浴みもさせるな。魔法で身綺麗にしてやってくれ。頼めるか」

「……かしこまりました。予想外のことなのですね」

グレイザックの表情を読み取るサムエルは、真剣な顔で返す。


「ああ、早すぎる。……眼鏡は俺の机の上にある。後は頼んだ」

彼はそれだけ言うとマントを取り、翻しながら早歩きで立ち去った。

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