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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

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グレティアーナの提案




「はあ、はあ」

フェルバールとバルデミアンは、騎士団と天馬合戦を繰り広げ、汗だくになっていた。


「お疲れ様です」

リディオノーレは2人に声をかける。


「鍛えられてるだけあるな。アラウィリアに欲しいくらいだ」

アブストールは2人にそう言った。


「まだまだです」

バルデミアンは汗を拭きながらそう答える。


「夕食にしましょうか。遅くなってごめんなさいね」

グレティアーナが皆に声をかける。

「グレティアーナ様、グレイザック様からお手紙が届いております」

ライムグートが言う。


受け取って中身を見たグレティアーナは、リディオノーレに手紙を渡した。


1枚目は感謝と詫びが書いてある。

2枚目はリディオノーレ宛てで、まあまあ怒っていた。


突っ走りすぎるな。

迷惑をかけるな、などと書いてある。


「愛されてるわね」

グレティアーナはそう呟いて、リディオノーレの手を引いて城に入った。




夜、与えられた部屋でリディオノーレは転移陣を描くとグレイザックの部屋に転移した。


「こら、リディ」

転移してくるのが分かっていたのか、仁王立ちで待ち構えていた。


リディオノーレはびく、となる。


「今日はラルシャークに行って帰ってくる予定ではなかったのか」

グレイザックが彼女の額を弾く。

「………えへへ」

リディオノーレは笑顔で誤魔化す。


「用事が早く終わるならば、早く終わらせたいですし」

リディオノーレはそう言って、用意してあったお茶を淹れる。


「まあまあ、座っててください」

お茶を淹れると隣同士で座って一服する。


「何しに行ってきたんだ」

聞かれると分かっていたので、リディオノーレは用意していた答えを返す。


「女性ものを扱う今勢いに乗っている商人を紹介してくれるそうなので、是非にと返事してきました!取り扱っている商品とかを見せてもらってきたので、今度はその商人とお会いしてきます」


「グレティアーナがいるなら大丈夫か」

グレイザックはそう答えた。

「はい」

リディオノーレは笑顔で答える。


「帰領している間にお会いできると思うので、それが終わればグレイザック様は休み取ってくださいね」

「ん?」

「休みですよ、休み。執務しすぎでしょう?週一で休みは絶対に取りましょう」

「人手不足だからな」

「だから、帰ってきたんです。交代で休み取りながら執務しましょう。それに、ルーグアの実験で睡眠不足でしょう」

リディオノーレは頬を膨らます。


「私が寝てから実験してるの知ってますよ。今日はそんなことさせませんからね」

リディオノーレは言う。

「だから、俺のことはいいと言っている」

グレイザックは息を吐く。


「飲んだら寝ますよ。今日は先にグレイザック様を寝かすんです」


リディオノーレは意気込むが、そんなこと出来る筈もなく、2人で布団に入るとあったかくて彼女の方が先に寝付くのだった。


グレイザックもリディオノーレを抱きしめたまま、大人しく寝ることにした。






「リディ。……リディ、起きて下さい」

呼びかける声が聞こえ、リディオノーレはもぞもぞと動く。

ぎゅ、と頭を押さえつけられているので、声の方を向けない。


「………時間か」

グレイザックが彼女の頭を抱いたまま、片目を開けてサムエルに問うた。


「そうです。リディはアラウィリアにいる体でしょう?」

抱き締めるグレイザックにサムエルは少々呆れながら進言した。


「リディ」

呼びかけて腕の力を緩めると、リディオノーレが顔を覗かせた。

「おはようございます」

リディオノーレは挨拶する。


「帰る時間だ。行ってこい。今日中にこっちにも帰ってこいよ」

グレイザックは腕をほどき、ゆっくりと起き上がる。

「はぁい」

リディオノーレは欠伸をしながら返事したのち、のそのそと起き上がると隣室に行って転移した。



転移を見送ったサムエルは、グレイザックに一言言い放つ。


「よく手を出さずにいられますね」

グレイザックが怒るのを知っているので、サムエルは言い逃げして行った。





転移で帰ったリディオノーレは、同室のケネスに呆れられた。

狼姿で寝ていたが、リディオノーレが帰ってきて人化した。


「遅かったな」

ケネスは欠伸をしながら言う。

「寝過ぎたようです」

リディオノーレは笑う。


「朝食に呼ばれているぞ。早く支度しろ」

「はーい」

リディオノーレは支度をすると、朝食の席に向かった。



朝食にはアラウィリア領主夫妻も同席だった。

食事を摂る前にリディオノーレはグレティアーナに手招きされる。


「あなた、もうちょっと髪の毛どうにかなるでしょう」

グレティアーナは呆れたように言うと、側近から櫛をもらってリディオノーレの髪を梳く。

そして、ひとつに編み込んでいく。

編み下ろしをしてもらい、リディオノーレはお礼を言った。


「髪型いつもどうしてるのよ………。あ、グレイザック様だったわね……」

グレティアーナは呆れる。

「じゃあ、学院じゃ無造作な髪型っていうこと?」

「グ、グレイザック様の時間があれば、色んな髪型してくれます」

リディオノーレは言い訳する。


その言葉を聞いて、全員が呆れた息を吐いた。


「ちょっと、あなた達」

グレティアーナがフェルバール達に呼びかける。

「側近の仕事ができる女性の知り合いはいないの?」

その問いかけにフェルバールとバルデミアンとケネスは顔を見合わせる。


「女嫌いの我が主の周辺に女の影があるわけないだろう」

ケネスは答える。

「でも本当にこれはどうにかしないと。シャーリネーヴェ様も言っていたわ。部屋にも服にも無頓着だと」

グレティアーナが咎める。


男3人はそれを聞いて苦い顔になり、リディオノーレを見る。


「リディ、学院に休み申請どれくらいで出してるの?」

グレティアーナが尋ねる。


「1ヶ月ほどくださいと言ってきました」

「……大雑把ね」

グレティアーナが眉間に皺を寄せる。


「そうね、商人の件もあるし、リディを預かろうかしら」

グレティアーナが提案した。


「ぶっ!!!」

その言葉にアブストールが飲んでいた水を盛大に噴き出した。




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