↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
233/912

見合い




帰領してきたリディオノーレ達を出迎えるグレイザック。

リディオノーレは上空からグレイザックの姿を見つけると勢いよく手を振る。


「馬鹿、落ちるだろ」

グレイザックは地上から見上げながらそう呟く。

リディオノーレは地上に降り立つと、一目散にグレイザックに駆け寄り飛びついた。


「っ!」

グレイザックは慌てて受け止める。


師弟の様子にもう皆は諦観状態だ。


「只今帰りました」

グレイザックの首に縋りつきながら、リディオノーレは嬉しそうに言った。

「ほぼ毎晩帰ってきてるがな」

グレイザックは突っ込む。


「こうして正式に帰ってくるのは新鮮ですね」

リディオノーレは言う。

「普通は許可を得て正式に帰ってくるものです」

サムエルが横から呆れながら突っ込んだ。


グレイザックはリディオノーレをゆっくり下ろす。


「朝食は食べてきたか?」

「はい」

「じゃあお前はこのままサムエルと訓練だ」

「げ」

リディオノーレは肩をすくめる。


「その後、俺の手伝いだ。アインズビルにはどれくらい居るつもりだ?」

「とりあえず1ヶ月は休みをもぎ取ってきました。私、ティア様の所にも行きたくて」

「グレティアーナの所にか?」

グレイザックは聞き返す。


「仲が良くて何よりだが、何用でだ」

「色々あるんですぅ。細かいことが決まれば言いますね」

リディオノーレはそう答えたのだった。





翌朝、リディオノーレにフェルバール、そしてケネスとバルデミアンが天馬に跨りラルシャークに向かって行った。


見送ったグレイザックは思わず呟く。

「忙しいな」

「楽しそうですからいいんじゃないですか」

サムエルが言う。


「グレイザック様こそ行きたかったのでは?」

見送り組のムナグレークも口を挟んだ。

「フェルの見合い相手が気になるのは気になるな」

その言葉にサムエルは苦笑した。

恐らく、ラルシャーク子息にお願いしていたグレイザック相手の女性だろう。

その事実を彼に言う必要はない。


「お前は好きな相手はいないのか」

ふと、グレイザックがムナグレークに尋ねた。

「………いると思いますか」

ムナグレークは呆れたように聞き返す。

「まず出会いがないでしょう」

ムナグレークは言う。


「それに、グレイザック様が結婚してから、ですよ」

ムナグレークはグレイザックを見つめて言った。

「お前は…」

今度はグレイザックが呆れたように呟いた。




ラルシャークに向かいながら、バルデミアンが珍しく口を開く。

「フェルの見合い相手はどんな方なのですか」

「絵姿は美人でしたけどね」

リディオノーレは答える。

「確か、領主の伯母の末娘でした」


「そこそこ領主に近い血ですね」

バルデミアンが目を瞬きながら言った。

「本来なら、私では相手してもらえないでしょう」

フェルバールが言う。


「そうなんですか」

今度はリディオノーレが目を瞬いた。

「本来ならな。領主とも血が近いから身分はあちらが上になる」

ケネスが説明する。


「だが、グレイザックの弟子として認められアラウィリア息女の結婚式では付き添い人を務め、領主会議では名も出るほどのお前と繋がろうと、誰もが躍起になっている」

ケネスがにやりと笑った。


「私と繋がってどうするんですか」

リディオノーレの問いにケネスは苦笑する。

「本当にそういうことは鈍いな」

「利点があるんですか」


「ありますよ」

答えたのはバルデミアンだった。

リディオノーレは見つめる。


「私やフェルの身分では領主一族と繋がる事は出来ません。グレイザック様に声をかけられリディの護衛となりましたが、リディがここまで名を馳せるとは思いませんでしたので、驚いてはいます」

バルデミアンは説明する。


「鬼畜師匠の悪辣非道の愛弟子。学院でも首席間違いないと噂の秀才。百戦錬磨の合戦王である師匠の名を受け継ぐかのような天馬合戦の技の数々。そして魔力量。かなり、貴重で希少な存在であることは確かです」


リディオノーレは目をぱちくりさせる。


「粛清の一族故に王族はお前を娶らないが、騎士団や研究者としての声はかけられただろう?お前を国で囲っておきたいのは確かだ」

ケネスも言う。


「粛清の一族という汚点はあるが、その汚点を払拭するほどの実力の持ち主だということは、皆知っている。お前とあわよくばと思っている者は多い」

ケネスは彼女を見る。


「でも直接言ってきた人はラルシャークの子息とメディオール様くらいですよ」

「我が主が牽制しまくってるからな」


「とりあえず、そんなお前に仕える護衛騎士はなかなかに優良物件であることには間違いない」

そう言って、フェルバールを見つめるケネス。

「だから、心して見合いしろよ。碌でもない女と付き合うなよ」


「分かっていますよ」

「なら良いがな」


そんな会話をしながら、あっという間にラルシャークに到着した。


出迎えてくれた子息は、応接室にすぐ案内してくれる。

そこには、もう既に見合い相手が待っていた。


「お久しぶりでございますね、リディオノーレ様。この間は息子と祭りに行って頂きありがとうございました。楽しめましたか?」

領主も一緒にいて、領主が1番に口を開いた。

「はい。こちらこそ、泊まりの用意をして頂き、ありがとうございました」


「いえいえ。あれくらいでしたらお安い御用ですよ。こちらが私の伯母でございます」

領主が手で示しながら紹介してくれる。

「お初にお目にかかります。リディオノーレ様ですよね?お噂はかねがね」

伯母が先に柔和な微笑みを見せながら口を開いた。


「急遽お伝えしたのにお時間を取っていただき、ありがとうございます」

リディオノーレは頭を下げた。

「とんでもない。私もお会いしたかったものですから。相手はそちらの騎士ですか?」

領主伯母がフェルバールを上から下まで見て尋ねる。

バルデミアンは廊下で護衛。

ケネスは部屋の中で護衛についていた。


「はい。私の護衛騎士のフェルバールでございます」

リディオノーレは紹介する。

「フェルバール・グリス・ヴィルウォードと申します」

アインズビルは名乗れないが、アインズビルに認められた騎士だということを中間名で示している。


フェルバールは頭を少し下げた。


「初めまして。お会いできて光栄でございます」

末娘が立ち上がり、頭を下げた。

絵で見たより綺麗な女性だった。


「どうぞ、お掛けになって」

椅子をすすめられ、フェルバールとリディオノーレは腰を下ろした。


そこからはお互いの自己紹介やらが続いた。

会話を聞いている分には、とても謙虚な女性だった。


次女とは10ほど歳が離れているらしい。

かなり可愛がられている末娘のようだった。


だが、リディオノーレも負けていない。

フェルバールの良いところを頑張って説明する。


でも話せば話すほど、自分が非常識だということを露見する羽目になり、リディオノーレは苦い顔になっていった。


隣でフェルバールが肩を震わせている。

リディオノーレは彼の膝をはたいた。


「主従なのに仲がとてもよろしいのですね」

見合い相手である末娘が発言した。

「そうですか?普通ですよ」

リディオノーレは答える。


「良ければお2人で過ごされますか?私、子息に話があるのですがいいですか?」

リディオノーレは子息の方を向く。


「いいですよ。別室にご案内します」

「ケネス様、ついてきてもらってもいいですか」

リディオノーレとケネスは、子息と共に別室に向かった。


素早く側近たちが部屋を整え、お茶を用意してくれる。


「話とは?」

子息が先に口を開く。

「商家の娘さんと個人的に連絡を取りたいのですが、可能ですか?」

「ええ。構いません。我が家と懇意にしておりますので」

子息は微笑む。


「何か気に入りましたか?」

「女性ものを扱っていることに惹かれまして。仲良くしてもらっている方がいますので、そちらの方に贈り物をしようかと」

「なるほど。それでしたらすぐにでも」

「ありがとうございます。会える日が決まりましたらまたご連絡下さい」

リディオノーレは頭を下げる。


これで話が終わってしまいそうな雰囲気に子息は焦って話題を振った。


「この間の祭りは如何でしたか?また来てくれますか?」

「また祭りが開催される時は教えて下さい。是非、行きたく存じます」

祭りに対して好印象なようで、安堵する子息。

まあ、あくまで祭りに対してだけなのだが。


「ラルシャークは魅力的でしょう?」

「………貴重なものを出店の景品にするくらいですからね」

リディオノーレは唇の端を上げて言った。


どのような経緯と経由で渡ってきたのかは分からないが、ウィスナビアの門外不出のルーグアの種が景品だったのだ。

驚きつつもこれは好機だと思った。


「出店は立ち入り禁止になったと伺いましたが?」

子息が恐る恐る述べる。

「え?そうでしたっけ?」

リディオノーレはすっとぼけた顔で聞き返したのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。