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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

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見合い相手のリスト




それから数日後。


「リディオノーレ様、本当にありがとうございました」

食堂で夕食にありついていたところ、アングロードが頭を下げて感謝を示す。


スティルナーデが補講に全て合格したのだ。

1番問題の素材の授業さえ乗り越えられれば大丈夫だ。


「良かった。じゃあ、ティルにこれあげる」

リディオノーレはドロゴルミットで買っていたお土産を渡す。


「え!?何これ!!」

スティルナーデは早速中身を見る。

「髪紐は使わなくても髪留めなら使うと思って」

「嬉しい!!ありがとうっ!!!」

スティルナーデはすぐさま髪留めをつける。


「似合うじゃないか」

アングロードは意外そうな声を上げる。

「失礼な。私も女の子だから似合うに決まってるじゃない」

スティルナーデとアングロードが少し言い合いを始めた。


「リディオノーレ様、ラルシャーク子息から手紙が届いております」

フェルバールが書状を渡す。

「?」

リディオノーレはそれを受け取り、双子から少し離れたところに腰を下ろして中身を見る。


ケネスが横からそれを覗きこんだ。

そして、眉間に皺を寄せながら口を開いた。

「何だこれは」


子息から送られてきたのは女性の名簿だった。


「あー…そう言えば頼んでましたね」

リディオノーレは熟読し始める。


「我が主の女を見繕ってもらったのか」

ケネスが問う。

「あっちから提案してきたので」

「……主が知ったら怒るぞ」

ケネスが苦い顔になる。

「でもですね、グレイザック様に見合う女性はいないと思うんです」

リディオノーレは苦笑しながら答えた。


リディオノーレが求めているのはそこそこの身分で、まあまあの魔力があり、実験や研究が好きで魔法の扱いにも長けている女性だ。


書状には趣味や特技、好きなことや食べ物など事細かく書いてある。


今回紹介されている女性は3人。


1人目の女性はラルシャーク領主の従兄弟の娘。

杖の魔石は馬1つ。


「この人は駄目ですね」

馬の魔石1つでは全く釣り合わない。

「駄目な理由は?」

ケネスが尋ねる。


「馬1つでは全く魔力量が釣り合ってません」

「リディの基準は?」

「最低でも虎か獅子。出来れば熊ですね」

「そうだな」

「なので、この方は却下です」


リディオノーレは次の女性名簿を見る。


ラルシャーク領主の伯母の三姉妹の娘の内の末娘。

グレイザックの1つ年上の女性。

魔石はこちらも馬である。

その時点で候補から外れる。


「美人っちゃ美人ですけどね」

リディオノーレは絵姿を見て言った。

「そうか?」

ケネスは言う。


「フェルバール様はどう思われます?」

リディオノーレは絵を見せる。

「この方は美人ですね。……私より1つ下ですか」

フェルバールがじっくりと詳細を見る。

「会いたいです」

フェルバールがじっくり詳細を読んだのち、そう言った。


「え!?」

リディオノーレは思わず声を上げる。

「………いいんじゃないか」

ケネスは賛成した。

「ええ!?ケネス様まで」

リディオノーレは驚く。


「リディ、お前、ラルシャークの子息とどうこうなる気はないだろう?」

ケネスの急な真剣な問いにリディオノーレは訝しがりながらも頷く。

「なら、お前の護衛騎士であるフェルバールとラルシャーク領主一族の娘を結びつけるのは案外丸く収まるかもしれん」

ケネスは言う。


「リディの護衛騎士というだけで、こいつとバルデミアンの価値は上がっている。案外いい手かもしれん。それにこの相手もそこまで遠縁でもないし、フェルバールをやるからリディのことは諦めろ、とこちらも言いやすい」

ケネスは唇の端を上げてそう言った。


「………なにか良いように使われそうな感じがしていますが、気のせいでしょうか」

フェルバールの顔が引き攣る。


「どうだ、リディ。いい手だろ?」

「………フェルバール様も気に入ってるようですし」

リディオノーレはチラとフェルバールを見る。


「会いに行ってみますか?」

リディオノーレは問うてみた。

「行けるのならば、是非」

フェルバールは答える。


「では、決まりですね。もう1人はどう思われます?」

リディオノーレはケネスに名簿を見せる。


「これは貴族でも何でもないだろ」

ケネスが一刀両断する。

最後の女性は、ラルシャーク領主が懇意にしている商家の娘だった。

一代で商人としてのし上がり、主に衣服、化粧などの女性ものの販売で利益を上げている。


「言わば、成金だろ」

ケネスは吐き捨てる。

「………ナックルンドとも交易しているそうですよ」

リディオノーレは取引相手の欄にナックルンドと書いてあったので、そこに注目していた。


「………」

ケネスはリディオノーレを見つめる。

「何する気だ」

「何か情報を得られるかもしれません」

リディオノーレはケネスを見つめ返す。


「先日、影の騎士団がやられたんだろう?一般人には無理だ」

ケネスが怖い顔になる。

「一般人だからこそ、ですよ」

リディオノーレは答える。


「師匠やその団長様たちは王族を調べているんでしょう?」

リディオノーレはケネスを見つめて問うた。

「私は王族を調べるつもりはありません。危険ですから。市井を探るのです。民衆の声は馬鹿に出来ませんよ」

リディオノーレは鋭い目を向ける。


「………恋愛ごとには疎いくせに、そういうことだけ鋭いな」

ケネスはそう言って息を吐いた。


「フェルバールの見合いに関しては、きちんと主に報告しろ。但し、この商人に関してはお前の女友達の紹介という体にしろ」

「私の女友達ですか?」

リディオノーレは今まさにそこにいるスティルナーデを見つめる。


「あいつはどう足掻いても興味ない部類だろ。アラウィリアの息女かアインズビル夫人かその娘だな」

グレティアーナか、シャイリーネか、シャーリネーヴェを提示された。


「その中ならティア様、でしょうか」

領内でコソコソしていたらすぐバレる。

グレティアーナなら、アラウィリアに行く名目で誤魔化せたりも出来る。


「我か、この護衛騎士か、バルデミアン、そしてディールのどれか2人を連れて行くこと。且つ、アラウィリアの娘と口裏を合わせること。それが出来るなら主に黙っておいてやる」


その言葉にリディオノーレは一瞬目を輝かせたが、すぐに鋭い目を向けた。


「何か裏がありますね?」

「いや、今回のは純粋な興味だ」

ケネスはにやりと笑う。


「リディの人望、人脈でどこまでのことが出来るのか。誰をどう使うのか」

「使う、って、そんな上から目線な」

リディオノーレは言う。


「いや、将来的にそうなるからな。色々見ておきたい」

ケネスは言う。

「主に見てもらうのが1番だがな」

言葉を重ねるケネス。


「………ケネス様までそんなことを言うのやめてください」

リディオノーレは苦い顔でケネスを見つめた。

「心の準備は早い方がいいぞ」

「……っ」


「護衛騎士2人とディールはお前が主人だから、使えるようにしとかないとな」

「………分かりました」

色々言いたかったが、ぐ、と堪えて、リディオノーレは頷いた。


「では、まずはこちらのフェルバール様が気に入った女性の方から行きましょう。その後にこちらの商家の娘さんとお会いしたいです」

「分かりました」

フェルバールは答える。


「まずは、今日グレイザック様に言ってきますので日程とかはお待ちください」

「了解した」


リディオノーレは名簿を少し強く握りしめ、夜にまたグレイザックの部屋へと転移した。




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