↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
226/912

祭りの終わり




リディオノーレとグレイザックは宣言通り、他の射的の店なども制覇し、挙げ句の果てにもう来るなと言われた。


「あの蝋燭の火を消すの楽しかったんですけど…」

リディオノーレは項垂れる。


蝋燭の火だけを狙って、水の球を放つのは面白かった。

そして、悉く成功していくのがこの師弟2人だけで、しかも景品を掻っ攫っていくものだから、終いには怒られる羽目になったのだ。


「2度と来るなって言われちゃいましたよ……」

リディオノーレは言う。


「仕方ないですよね、これだけやられてしまうと商売できませんし」

サムエルは苦笑する。

「だって簡単ですもん……」

リディオノーレは唇を尖らせた。


そうは言うが、成功者はこの師弟だけなのだ。

サムエル達も出来ないことはないが、この師弟みたいに百発百中ではない。


「まあでも楽しかったのでまた来ます!」

リディオノーレは宣言する。

「来るなって言われたじゃないですか」

ムナグレークが突っ込む。


「髪の色染めたら分からないと思うんですが、どうでしょう?」

リディオノーレは提案してみる。

「………好きにして下さい」

サムエルは諦めた。


「髪を染めたら傷むぞ。やめておけ」

「反対するのはそこですか」

ムナグレークがグレイザックの言葉に突っ込んだ。


「じゃあ、鬘かぶりますか?」

リディオノーレはまた提案する。

「それはありだな」

グレイザックはそう答え、天馬車に向かうまで2人でどうやって変装するか談義が始まった。



約束通り天馬車で来てくれていたグレイザックは、車内にリディオノーレと共に乗り込む。

御者台にはムナグレークとフェルバールが腰かける。


「私共の天馬はラルシャーク城ですので、取りに戻ってからそのまま後を追いますので、このままお先に行って下さい」

サムエルは車外から声をかけた。


「すいません、お願いします」

リディオノーレは自分の天馬のことをサムエルに頼む。


「では、また後ほどアインズビルで」

サムエルとバルデミアンは天馬を取りに去って行った。


「さあ帰るか」

グレイザックの合図で、天馬がふわりと駆け上がる。


馬車が安定した所で、師弟2人は購入した衣装を取り出し、早速杖を振るい始める。


「温度感知ってどうやったら出来るんでしょうか」

「温度感知?」

グレイザックは思わず聞き返した。

「寒いと暑いのを感知して欲しいんですけど」

「難しいことを言うんだな……」

グレイザックは眉間に皺を寄せた。


2人は「うーーん」と唸る。


「あ!」

リディオノーレは何か閃いたのか声を出したが、「いや、無理か…」と呟く。

「いや、でも、」と言うと、魔法陣を描き出した。


「師匠、ほらこの前、半永久的に回復がかかるように魔法陣描いたじゃないですか」

リディオノーレは言う。

こういう時は〝師匠″呼びである。


「………それは難しそうだがな……。一朝一夕で出来るような術じゃないな」

グレイザックは彼女の意見を聞いて唸る。

「じゃあ、2つ描いておいて、必要な時に魔力を流すのは?」

「描いた時点でそれは発動条件になるから……ならば、刺繍でどうだ?刺繍の魔法陣なら、必要なときにそこに魔力を流せばいい」

グレイザックは提案する。


「刺繍ですか?」

リディオノーレは目を瞬いた。

「……自信ないです」

リディオノーレは項垂れる。


「義姉上やシャーリネーヴェに聞けばいい」

「………やってみます。時間かかりますがいいですか?」

リディオノーレはグレイザックを見つめる。


グレイザックは、ふ、と笑うと彼女の頭に手を置いた。


「そういうことは不器用なのは知っている」

「失礼ですね!」

リディオノーレは頬を膨らますが、そんなには怒っていない。


衣装をしまいながら、リディオノーレは腰を下ろした。

グレイザックは汚れ防止の魔法陣を描いて、彼女に衣装を渡す。


「ありがとうございます」

リディオノーレは嬉しそうに受け取り、グレイザックが隣に座れるように少し横にずれる。


グレイザックは彼女の隣に座ると、口を開いた。


「あの劇を観てどう思った?」

「正直恥ずかしかったです。勝手に台詞をつけられていたので」

リディオノーレは答えた。


「だろうな」

「グレイザック様も観てたんですよね?」

「ああ。グレークが怒っていた」

グレイザックが小声で答えた。

小声じゃないと御者台のムナグレークに聞こえてしまうからだ。


「そうでしょうね」

グレイザック大好きのムナグレークだ。

怒っている様子が容易に想像できる。


「本も見たか?」

グレイザックは尋ねる。

「見ましたよ……。劇と一緒で脚色されてましたね」

リディオノーレは苦い顔で答えた。


「買ったか?」

「買ってません」

「グレーク」

御者台で話を聞いていたムナグレークは小窓から1冊の本を渡す。


その本を受け取ったリディオノーレは、題名を見て嫌な顔をした。


「買ったんですか」

「記念にな。詳しく読みたいだろ」

グレイザックは唇の端を上げる。


リディオノーレは無言で本を開き、ゆっくりと読み始めた。


だが、その内疲れたのかリディオノーレは目をこすり、本を閉じた。


「寝てもいいですか」

リディオノーレはそれだけ言うと目を閉じた。

座ったまま壁にもたれて、あっという間に寝てしまったリディオノーレ。


グレイザックは自分の膝の上に寝転がせてやると、上着をかけてやる。


彼は彼女の髪を弄びながら、自分も目を閉じた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。