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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

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好戦的なリディオノーレ




ひとしきり攻防が終わると、リディオノーレやムナグレーク達は荒い息を整える。


グレイザックとサムエルだけ呑気にお茶を飲んでいた。


「はあ、はぁ、何で行かせてくれないんですか」

リディオノーレはムナグレーク達を睨みつける。

「半殺しなんて器用なことが出来るわけないでしょう!」

そう言ったのはバルデミアンだ。


「………それは確かにそうかもしれません」

リディオノーレは目を瞬いて答えた。

「バル、それは怒る方向が違う」

フェルバールが呆れたように突っ込んだ。


「バルデの意見は一理あるな。すまん。……殺しておけ」

グレイザックはにこりと笑ってリディオノーレにそう言った。

「了解しました!」

リディオノーレは、すくっ!と立ち上がってまた窓から出ようとする。


フェルバールは慌てて彼女の体を引き寄せる。


「グレイザック様、それだと後処理が大変です」

サムエルが口を挟んだ。

「後処理って………」

フェルバールが思わず呟く。


「いっそのこと魔獣の山にでも放置してきたら良いのでは?」

サムエルは提案した。

「それはいいな。やれ、リディ」

グレイザックの許可が出れば、リディオノーレはやる。絶対にやる。


「グレイザック様、大問題になります。それもいけません」

ムナグレークはため息をついて言った。

フェルバールが必死にリディオノーレを押さえている間に彼女を説得しないといけない。


「分かりますよ。分かります分かります。リディの思いも十分、分かっています。ですが、いけません」

ムナグレークは止める。


「何故ですか。そんな阿呆なことぬかす奴は埋めてしまいましょう」

リディオノーレは言い放つ。

「そんな阿呆な奴の相手をするだけ無駄ですよ」

ムナグレークは反論する。


「ですがっ」

「リディがわざわざ出向くほどではありません。勝手に自滅しますよ」

ムナグレークは諭すように話す。

「……本当ですか?」

「本当です。そんな阿呆な奴の相手をわざわざリディがしなくても大丈夫です」

ムナグレークが頷きながら言う。


「リディが出るほどではありません」

「ですが、このままではメディオール様が」

「それこそ放っておけ」

グレイザックが口を挟む。


「そこでやられるタマなら、それまでだったということだ。お前を嫁にしたいと言うならば、最低限でも領主じゃないと話にならん」

グレイザックは言い放つ。

「………。では、私がムカついたので1発殴りたいです」

「それは構わん」

グレイザックが即答する。


「いやいや、ですから、それは駄目ですって」

フェルバールがリディオノーレをがしっ!と掴む。

気を緩めた瞬間、本当に飛び出しかねない。


「大問題ですよ。グレイザック様にまで迷惑がかかります」

「その後見人が許可を出してくれています」

リディオノーレは言い返す。


「1発くらいならいいでしょう!本当は殴り殺したいくらいなんですから」

リディオノーレはキッ!とフェルバールを睨む。

「何でそんな好戦的なんですか……」

ムナグレークは頭を抱える。


「本当に誰に似たんだか…」

ムナグレークはため息をつきながらグレイザックを見たあと、リディオノーレに視線を戻す。


「今回は見逃してあげましょう。もし、次に何か阿呆なことがあれば、その時は何も言いません」

「言ったな?グレーク」

グレイザックが聞き返す。


ムナグレークは、う、となったが、それでも「はい」と頷いた。


「フェルとバルデはどうだ?次に何かあれば、俺が手を出しても良いのか」

フェルバールとバルデミアンは顔を見合わせ、少し考えたのち頷いた。


3人の同意を得られたことで、グレイザックはにやりと笑う。

「リディ。今回は放っておけ。お前が出張るほどの奴じゃない」

「………」

それでもまだ納得のいかないリディオノーレ。


「今度阿呆なことをしでかしたら、好きにして良い。煮るなり焼くなり好きにしろ。後処理は任せておけ。………問題はラルシャークの子息の方だ」


「一体何の御用でしょうか」

落ち着いたリディオノーレは、グレイザックの隣に座り直した。


「………」

グレイザックは苦い顔で嫌そうに口を開いた。


「とりあえず、帰ってきたことを連絡して欲しいらしいから手紙を送っておけ」

「……分かりました」

リディオノーレは首を傾げながらも頷いた。


「返事が来たら見せろ」

「分かりました」

彼女は素直に頷いた。


そして、話題を変える。

「皆さんにお土産があるんです。お菓子とお揃いのマグです」

リディオノーレは革袋から購入した物を取り出して渡していく。


「ありがとうございます」

皆が口々にお礼を言ってくれる。


「はい、グレイザック様も」

リディオノーレは渡す。

自分の分も買っていて、皆お揃いにしてみたのだ。


「……礼を言う」

グレイザックは少し目を瞬いた。


土産も渡し終わり、報告も終わったので、リディオノーレは図書室に向かいたいと言う。


「…構わん。バルデ、頼めるか」

「はい」

バルデミアンに護衛についてもらい、2人は図書室に向かう。


完全に足音が遠ざかったのを確認し、グレイザックはフェルバールに向かって口を開いた。


「ラルシャークの息子は何と?」

「手紙の返信がないことに怒っていました。誰が手紙を握り潰しているんだ、と」

フェルバールは苦々しい顔で答えた。


「煩い奴だな」

グレイザックは言う。

「どうされますか。あっちは本気のようですが」

フェルバールは肩をすくめる。


「今までの文面からもそう読み取れる」

グレイザックは答えた。

やはり手紙を握り潰しているのは、グレイザックだった。

フェルバールは苦笑する。


「まあ、リディは何とも思ってないから大丈夫だろう」

「ですが、会う度に口説かれてたりしたら絆されますよ」

フェルバールが言う。


「……そういうものか?」

グレイザックはサムエルに尋ねる。

「どうでしょうか。リディは少し変わっていますからね……」

サムエルは苦笑いで答えた。


「まあ眼中にないことは確かですが、あまりこちらに来られても困ります」

特にグレイザックの機嫌が悪くなることは避けたい皆。

サムエルとムナグレークとフェルバールは顔を見合わせ、頷いた。


「まあもし、2人で出掛けるなどとなった時は誰かが付き添いますので大丈夫でしょう」

サムエルはそう締めくくった。




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