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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

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寝ている間の会話




暗闇の中、ひたすら気配を探る訓練をさせられる。耳と神経を研ぎ澄ませ、3人が居る場所などを当てさせられる。


「……とりあえずはいい感じですね」

サムエルは褒める。

そして、グレイザックによって瞼がくっつく魔法を解除してもらう。


リディオノーレは片目ずつゆっくり開けると、グレイザックの背中に隠れ、サムエルを見た。


「いきなりすぎます」

サムエルに抗議するリディオノーレ。

「1番手っ取り早い方法かと思ったのですが」

サムエルは微笑んだ。


「………」

リディオノーレは無言で睨む。

「ほら、眼鏡」

グレイザックは苦笑しながら眼鏡を渡した。

サムエルを睨んだままリディオノーレは眼鏡をかける。


「……嫌われてしまいましたか?」

サムエルはグレイザックに尋ねる。

グレイザックは、背後でサムエルに向かって威嚇するリディオノーレを見て思わず苦笑する。


「リディ」

グレイザックは呼びかける。

「何ですか」

「俺はお前と剣で手合わせしたいんだが」

「っ」

その言葉にリディオノーレは一度俯いて、唇を尖らせながら顔を上げた。


「私もしたいです」

その言葉を聞いて、グレイザックは微笑んだ。

「なら頑張れ」

「……分かりました」

リディオノーレは尖った唇のまま頷いた。


「では、このまま先を進んで、今日は洞窟で休みましょう」

サムエルに促され先を急いだ一行だが、途中大型魔獣が頻出した。






「………ふぅ」


熊が5頭、虎が12頭、獅子が6頭、そして犀が1頭。

全てを倒し終わり、リディオノーレは息を吐く。


「犀って硬いんですね」

リディオノーレは魔石を取りながら呟いた。

彼女の魔法攻撃でも数回当たらないと傷をつけられなかった。

熊や虎、獅子は余裕で倒せるのに。


「でも上出来でしょう」

サムエルは言う。

特に苦戦することなく倒せたのだから、正直余裕だろう。


「それならいいんですが」

魔石を全て取り終えて、彼女はもう一度息を吐く。


「大分、寒くなってきましたね」

「今は山頂に近いですから」

サムエルが答える。


「体調はおかしくないか?」

グレイザックがリディオノーレに尋ねる。

「大丈夫です」

彼女は安心させるように微笑んで答える。


「本格的に冷え込む前にご飯にしましょうか」

サムエルが魔獣たちの肉を削ぎながら、そう言った。



その日の夕食はなかなかに豪華で、サムエルが魔獣たちの肉を焼いてくれて美味しく頂いた。


満腹になったリディオノーレは、狼姿のケネスにくるまれながらうつらうつらし始める。


「寝ていいぞ」

グレイザックは彼女の頭を撫でる。

リディオノーレは、へへ、と嬉しそうに笑って目を瞑った。


規則正しい寝息が聞こえてきたのを確認し、グレイザックは息を吐く。


サムエルは野営の火を調整しながら口を開いた。


「宰相と騎士団長の地位はとても良さそうですね」

「……やはり聞いていたか」

グレイザックはサムエルを見る。

あの時、どうやら起きていたようだ。


「勿論です。なかなか愉快な会話でしたので」

サムエルはくす、と笑う。

「そこまで難しい地位でもないからな」

ケネスが口を挟む。


宰相と王宮騎士団長を難しい地位ではない、と言い切れるところがこの師弟の規格外さを示している。


「こいつが騎士団長は面白そうだが」

「前、アラウィリアでムナグレーク様と共に騎士団に指示を出しながら試合をしたんでしょう?教えるのは得意そうですから、ありだと思いますが」

サムエルは言う。


「教えるのが得意なら、学院教授がいいだろう」

「お2人で学院教授するのもいいかと思いますが、職務とかこつけて研究にこもるからよくありません」

サムエルの言葉にケネスが頷く。


「………ちっ」

グレイザックは舌打ちをする。

付き合いが長いのも困ったものである。


「お2人で授業もほったらかしで研究に没頭するのが目に見えてます」

サムエルは言葉を重ねた。


「お前たちは研究の楽しさが分からんのか」

「お2人が研究を楽しんでいるのは分かりますよ」


グレイザックの規格外な研究資料を読んで質問を重ね、嬉々として試そうとするリディオノーレを見て、彼もまた嬉しくなって談義が盛んになるのを何回も見ているし聞いている。


「会話の内容は全くもって理解できないですがね」

サムエルは苦笑しながら述べた。


研究に対する会話は、常軌を逸している。

この前彼女がつくった回復薬も、あれで何故回復薬が出来るのか意味不明だった。


「だが、面白いだろう?発想も良い」

「グレイザック様がそう言うのですから、そうなのでしょう」

サムエルは苦笑したままだ。


「発想が常人と違うのは認める」

ケネスが言う。

「我が主の弟子に相応しいのではないか」

ケネスは尻尾を揺らす。


「少し無鉄砲だがな」

ケネスは自分にくるまって、スヤスヤと寝ている彼女を見た。

知らないところで無防備にここまで寝れるところに尊敬する。


「だが、ここまで懐いてくれると嬉しいのではないか?」

ケネスはグレイザックに尋ねる。

「………」

グレイザックは無言でお茶をすすった。

無言なのが肯定の証だ。

リディオノーレに対し、最近はとても甘い。


「本当に丸くなりましたね」

サムエルは微笑む。

「うるさい」

グレイザックは2人を睨んだ。


彼にいい影響を与えてる時点で彼女には本当に感謝している2人であった。




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