↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
195/912

渓谷へ




「決死の覚悟でも、だ。………まず、命を無駄にするでない」

ケネスは述べる。

「そうかもしれませんが、それでどうにか出来るなら命を擲ちますよ」

「何故、そんなことができる」

「グレイザック様のためなら、この命安いものです」

リディオノーレはにこりと微笑んだ。


「………そんなことを言うものではない」

ケネスは息を吐きながらそう呟いた。

この師弟は互いの為にしか生きられないのか。


「まあ、さっきのは内緒でお願いします」

リディオノーレはからりと笑う。

「ああ。だが、我が主もリディと同じ考えだぞ」

ケネスは言う。

「我が主もリディの為になら、命を捨ててもいいと思っているぞ」

その言葉にリディオノーレは目を見張る。


「それは流石に嘘でしょう。私にそんな価値はありませんよ」

「………それもその内分かる」

ケネスはまた息を吐きながら答えた。


「もう少し寝るといい」

ケネスは尻尾をぴしりと地面に打ちつけた。

「……あ、眠たいのバレてました?」

「目をこすっていたからな」

リディオノーレは苦笑しながら、ケネスにもたれかかった。


「見張りは我がするから、ゆっくり寝たらいい」

「……すいません。お願いします」

リディオノーレはケネスにくるまれながら、目を閉じた。


彼女の規則的な寝息が聞こえてきたのち、ケネスは徐に口を開いた。


「本当によく懐いている弟子だな、我が主」

ケネスは笑いながら、寝たふりしていたグレイザックに話しかけた。

「……煩い。陽がのぼったら起こせ」

グレイザックは目を瞑ったままそう答えると、意識を遠くに持っていく。


そして、そのまま眠りについたのだった。






「リディ、起きろ」


「リディ」


「リディっ!」

額を弾かれる。


「っ!」

リディオノーレは額を押さえながら目を開けた。


彼女を覗きこむグレイザック。


「!………おはようございます」

リディオノーレは挨拶する。

「呑気だな」

グレイザックは呆れる。


「食べたら出発するぞ」

グレイザックはスープを差し出す。

彼女は座るとそれを受け取った。


「あれ?」

盗賊たちはぐーすか寝ており、結界も解かれていた。

リディオノーレの視線で、何を言いたいのか分かったグレイザックは先に答える。


「寝かせておいた」

グレイザックはそう答える。


「今の内に出発するぞ」

リディオノーレ以外は、準備万端だった。


慌ててスープを飲み干して、彼女も出発の準備をする。

ケネスも人化し、天馬を皆が一頭ずつ引っ張りながら渓谷に足を踏み入れた。



「……結構、疲れますね」

リディオノーレは歩きながら口を開いた。

「山道だからな。足に結構くるだろ」

グレイザックは唇の端を上げて答えた。


「足だけに魔力を流すのですよ」

サムエルが先頭を歩きながら言う。


「ここに入る人は熟練の方ばかりですからね。リディには少しきついかもしれません。魔力が半分になったと思ったら、すぐに仰って下さい」

「分かりました」

リディオノーレは返事して、一歩一歩踏みしめながら進む。


上を見上げると、何十羽の鳥たちが鳴きながら空を旋回している。

太陽は雲に隠れて見えなくなった。


「……不気味ですね」

リディオノーレは旋回する鳥たちを見ながらそう告げた。

「あの鳥たちは、私たちを狙っていますから気を付けて下さいね」

サムエルがさらりとそんなことを言う。


「え!?」

リディオノーレはまあまあ大きい声を出してしまった。


「しっ!!静かに。刺激しないで下さい」

「すいません」

彼女の隣で歩いていたグレイザックはため息をついた。



大体1時間山道を歩き続けたのち、休憩をすることになった。

「今何処ら辺にいるのか分かるのですか?」

リディオノーレは渓谷の地図を見ながら、眉間に皺を寄せてサムエルに尋ねた。


「ええ」

サムエルは地図を覗きこみ、「ここですね」と指を差した。


「すごいですね。何で分かるんですか」

リディオノーレは目を見開く。

「この地図、私がつくったのをもとにしていますからね」

サムエルがさらりと答える。


リディオノーレは目を瞬き、グレイザックを見た。

「……もう今更驚かん」

グレイザックはそう答え、お茶をすする。

「ほら、食え」

グレイザックは小さい菓子を差し出す。

リディオノーレが口を開けると、グレイザックはそのまま口に放り込んでくれた。


「グレイザック様って、いつも何かお菓子持ってますよね」

「……悪いか?」

グレイザックは片眉を上げた。


「糖分があると頭が回るだろう」

「なるほど。もう1つください」

リディオノーレは頷きながら、もう1つねだる。


「遠慮なくなったな」

グレイザックは苦笑しながら彼女の口に菓子を放り込む。

「ん。グレイザック様の持ってるお菓子、美味しいですからね」

リディオノーレは呑み込んでから、そう言った。


「相変わらず仲が良いのはいいですが、そろそろ魔獣が出てきますので気を付けて下さい。狼、虎、獅子辺りになるかと」

サムエルが口を挟む。


小休憩が終わったのち、洞窟や隘路を歩んでいるとサムエルの言った通り、狼の群れが現れた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。