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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

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リディオノーレの集中ぶり




グレイザックの元には数時間毎にリディオノーレの様子が鷹によって手紙が飛んでくる。


シャーリネーヴェはリディオノーレの部屋の扉を開けたものの、結界の重ね掛けにより部屋に入れない!と嘆願書が。


フェルバールもシャーリネーヴェやスティルナーデがいくら呼んでも出てきません!と手紙を送る。

分かっていたことだが、これは後が怖い。

このままだとグレイザックに怒られるのが目に見えているからだ。

少しでも罪を軽くするならば、ひたすら近況を送るしかない。

一瞬、女装をして女子寮に入るかどうか迷ったくらいだ。


しまいには寮監であるアリウォーナも出張るのだが、リディオノーレがかけた結界を解除することが出来ない。

女性教授が集まり結界の解除を試みるのだが、全くもって歯が立たない。

おかげで、女性教授たちからグレイザックに苦情の手紙がわんさか届いた。


外野がそんな騒いでることなんて露知らず、リディオノーレはひたすら部屋で回復薬の調合をしていた。

アリウォーナからもらった代わりになりそうな素材とアラウィリアからの帰り道に収集した素材を並べ、組み合わせながら薬をつくっていく。


アリウォーナは結界の解除を早々に諦めて、外から彼女の調合の様子を眺めていた。


3日飲まず食わずでリディオノーレはひたすら調合していた。目が爛々としていて、興奮しているのが一目でよく分かる。

寝る間も惜しんで色々書き留めたりしつつ、たまに独り言を呟きながら魔力を流し続けていた。

キリのいい数が出来上がれば、床に張ってある転移陣で薬瓶を送っている。


魔力が減ったと感じれば、彼女はその自作の回復薬を飲んで回復させ、続きを再開するというなかなかに体に良くない日々を送っていた。





「3日も出てきません!どうにかして下さい!」

とフェルバール。

「3日飲まず食わずです!結界の解除の仕方を教えて下さい!」

とシャーリネーヴェ。


それに対し、グレイザックは落ち着いたものだった。


1日に10本ずつほど転移陣で薬瓶が送られてくるので、それで安否は確認出来ていた。

代替素材に何を使っているのかきちんとメモも挟んだ状態で届くので、生きているのは分かっていたが、結界まで使って邪魔をさせない徹底ぶりに笑ってしまった。


「……グレイザック様、どうするおつもりですか」

ムナグレークが彼の執務室で窓を開け放ったまま、飛んでくる鷹を腕に乗せながら尋ねる。


あまりにも鷹や鷲や色んな鳥がグレイザック宛てに来るので、ムナグレークはグレイザックの部屋で手紙を受け取ることにした。

いちいち小屋から上がってくるのが面倒くさくなったのだ。


「教授たちからお叱りの手紙がたくさん来てますよ」

サムエルも告げる。


あの結界はなんなんだ!と。

グレイザックは何を教えてるんだ!と怒っている。


「フェルバールには、3日後まだ出てこなければ連絡を寄越せと言っている。シャーリネーヴェには都度、リディがどんな状態か教えろ、と言っているから大丈夫だ」

グレイザックは何も心配ない、と言った風に答える。


「それより、あの程度の結界の解除が出来ない方が恥ずかしいだろう」

リディオノーレはすごく複雑な結界を張っているわけではないはずだ。

調合に集中している間、邪魔してほしくないから結界を重ね掛けして入れないようにしているだけだろう。


「攻撃魔法を使ったら何とかなるだろうに」

グレイザックは言う。

「寮でそんな魔法を使ったら大惨事ですよ……」

ムナグレークが呆れたように言う。


「じゃあ地道に解除するしかなかろう。別にそんな難しくもないはずだ。結界の構成が分かれば、解除できるだろう?」

グレイザックはそう言うが、ムナグレークとサムエルはため息をついた。


「そんなことが出来るのはグレイザック様だけです」

「………そうなのか?」

グレイザックは少し驚いたように聞き返す。


「そうです。攻撃魔法で少しずつ弱らせていくことはできても、解除はかなり高度です」

サムエルは答えた。


「そういうものなのか」

グレイザックは一瞬目を瞬いてそう呟いたのだった。





リディオノーレは代替素材を駆使しながら、回復薬をつくっていた。

出来上がったらきちんと効果を自分で試す。


「これも効果あり。これは効果なし。だから、それを補えそうな素材を足して……」

本当に何十種類といった回復薬が出来上がった。


代替素材で回復薬を完成させることが出来るのならば、これは大発見だ。

そして、彼女が回復薬にここまで没頭するのは訳がある。

誰にも言っていないが、彼女なりに理由があるのだ。


「……ふぅ」

そろそろお腹がすいてきた。

それに眠いのだが、ここで寝てしまうと今色々思っていることが飛んでしまいそうになる。

頭が回っている内に完成させてしまいたい。


たまに自分でつくった回復薬を飲んで、体力回復と魔力回復をさせながらひたすら調合に没頭するのだった。





「リ、リディッ!!!!!」

側近と交代しながら部屋の外で見張っていたシャーリネーヴェが叫んだ。


スティルナーデは授業中。


アリウォーナはリディオノーレの調合が面白くて、ずっと外から見て書き留めていたが、流石に腰を上げた。


「リディ!どうしたの!?リディ!!??」

グレイザックからまた3日後出てこなければ連絡をしてほしいとフェルバールから聞いていた、その期限の3日目が終わった、翌日の朝だった。


リディオノーレが先程まで歩き回ったり、何か書き留めたりしていたのに、部屋の中で急に意識を失って床に倒れたのだ。


シャーリネーヴェは慌てて手紙をしたため、側近に渡す。ついでに寮に入って来られないフェルバールにも報告を、と託した。



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