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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

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試験終了




3日後の夕食後、リディオノーレはフェルバールと共にアリウォーナが居る実験室へと向かった。


「お待ちしておりました。試験は別のところでおこないますので、ついてきて下さい」

アリウォーナの案内で連れてこられたのは、面談で使った部屋だった。


長机に学院長を筆頭に教授が勢揃いしている。

面談の時に座った椅子の位置に机がひとつ置いてあり、そちらにリディオノーレは腰を下ろした。


「………あの、これは一体どういう状況でしょうか?」

フェルバールがリディオノーレの後ろに立って、恐る恐る尋ねた。


「一年かけて勉強する素材の授業の試験を申し込んできたというものですから、ここにいる先生方で一生懸命問題をつくったのですよ」

「……が、学院長も、ですか?」

フェルバールは引き攣った笑みを見せながら尋ねた。

「ええ。グレイザックの弟子の本領を見せてもらおうかと」

学院長はにこりと微笑んだ。


「これだけの人数がいた所で大丈夫でしょう?」

学院長はリディオノーレに尋ねる。

「ええ、別に」

リディオノーレは微笑んで答えた。


「では、側近の方は扉の近くに控えておいて下さい」

フェルバールは指示通り、扉の傍に立つ。

それを確認したのち、アリウォーナが試験問題を配布した。


「全部で6枚です。時間は1時間。では、始め」

アリウォーナの号令と共にリディオノーレは筆を滑らせていく。


迷いなく答えていく様子を見て、感嘆している先生が多数。

それを見て思わず苦笑するフェルバール。


そうして、リディオノーレは時間いっぱい使って、全ての問題を解ききったのだ。

最後は慌てていたようで殴り書きみたいになってしまったようだが。


「……ふぅ」

リディオノーレは息を吐いて、筆を置いた。


「このまま採点して頂けるのでしょうか」

彼女は先生たちに尋ねる。

「ええ。少々お待ち下さい」

アリウォーナが答え、複数の先生が採点を始めた。


何人もの先生が確認をし、最終確認を学院長がしっかりとおこない、そしてアリウォーナが口を開いた。


「合格点に達していますので合格です。成績順位に関しては、どの教科もそうですが、全生徒の結果が出てからになりますので、公表は卒院式の日になります」

「承知しました。では、このまま調合器具を借りたいのですが、構いませんか」

リディオノーレはにこりと微笑む。


合格したのなら話は早い。

半分以上取れていたら首席だと、昔ジャンドバルトが言っていたので、恐らく問題ないだろう。

アングロードくらいが聡明な印象だが、他はそうでもない印象だった。

成績を争うほど警戒すべき人物はいなかったはずだ。


「………分かりました。約束ですからね」

アリウォーナは答えるが、少し引き攣った顔をしていた。


「リディオノーレ様、調合前に必ずグレイザック様にお知らせ下さい」

フェルバールはリディオノーレにそう進言する。

「?分かりました」

彼女は少し首を傾げながらも頷いた。


「あと、調合過程もお手紙を出すようにお願いします」

「出来上がった薬瓶をこの前みたいに10本20本単位で送るつもりなので大丈夫ですよ」

その言葉を聞いて、フェルバールは少し安堵した。


薬瓶を都度送付するのであれば、グレイザックの方から連絡が取れるだろう。


「では器具を取りに戻りましょう」

アリウォーナに続き、リディオノーレ達も部屋を出た。


部屋の中では彼女の解答を見ながら、教授たちが唸っていた。


「この知識量は恐ろしいですね」

「まさにグレイザックの弟子」

「グレイザックがここまで教えこんでいるのか」

「どうでしょう。教えてここまで覚えられるものですか」

「本人にやる気が泣ければ無理でしょう」

「この試験は半分取れたらいい方ですからね」


「グレイザックは満点でしたか?」

「そうでしたね。あれ以来、満点は見ておりません」

「彼女も惜しい。ひとつだけ、間違っている」

というより、空欄だった。


「この問題、知らない筈はないでしょう」

問題はこうだ。

世界において、回復薬の最高級の素材は何か、という問いだ。

難しくもない。どちらかと言うと簡単な問題である。


「………」

学院長は思わず微笑んだ。

彼女はグレイザックの過去を知っているのだろう。

グレイザックの事件を知っているのは、学院長とアリウォーナとバイルミングだけである。


最高級の回復薬の素材であるルングを敢えて答えないということに彼女がグレイザックを想っていることが読み取れる。

ルングには媚薬成分があることを知っている証拠だ。


それに、答えが「ナックルンド」となっている問題では、ナックルンドの字がかなり荒れている。


感情豊かな字である。

学院長は笑ってしまった。


「……学院長?どうして笑っておられるのですか」

1人の教授が尋ねる。

「いえ、別に」

学院長はくすりと笑う。


「面談の時も思いましたが、彼女は本当にグレイザックに懐いていますね」

バイルミングが口を開いた。

短い銀色の髪が特徴的なサムエルくらいの年齢の先生である。


「仰る通り」

学院長は頷いた。






その夜、グレイザックの元に鷹からの手紙が2通。

転移陣に1通届いた。


差出人の1人、アリウォーナはリディオノーレを褒めちぎる内容であり、他の教授たちも驚いていたことを書いていた。そして、満点を取れるのに絶対知っているはずなのに答えなかった問題があると書いてある。


もう1通はフェルバールからで、素材の試験が合格したため、調合を開始する旨が綴られている。

グレイザックの方からも連絡を取るようにお願いも書いてある。


リディオノーレ本人からは全ての教科の試験が終わって調合を始めることが書いてあった。

フェルバールと同じ内容である。

グレイザックはこれからどうなるか大体の予想を立てながら、執務を早めに終わらせておいた方がいいと判断した。




そして、案の定、リディオノーレは部屋にこもることになる。

まさにグレイザックの予想通り、部屋にこもりきりになり、3日経った。




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