↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
172/912

調合の腕




リディオノーレはフェルバールと共にアリウォーナと実験室に入った。


「………」

汚いっちゃ汚いが、最低限は片付けています、みたいな部屋だった。


まあでも実験室の名の通り、たくさんの種類の鍋や見たことのない色の薬、素材もたくさん並んでいた。

どうやら素材もここで保管しているようである。


「では、この鍋でお願いしますね」

アリウォーナが出してきた鍋はものすごい汚い鍋だった。

使用感があり、綺麗に洗えていない。


「……先生、これは流石に汚いのでは?」

フェルバールが顔を歪ませながら意見した。

「え?洗浄できますでしょう?」

アリウォーナは当たり前のように尋ねる。


「………一応新入生ですよ、先生」

フェルバールはそう突っ込んだ。

「でもグレイザックの弟子でしょう?」

「………」

フェルバールはため息をついた。


リディオノーレも何でもいいやと割り切って、洗浄魔法をかけて綺麗にしたのち、部屋にあった素材を取る。


「回復薬ですか?」

リディオノーレが鍋の周囲に並べた素材を見て、尋ねる。

それに、あまりにも迷いなく素材を取るものだから、アリウォーナは驚いた。

迷いの無さが日頃から調合をしているという証拠である。


そして、素材の量にも驚く。


「はい、回復薬です」

リディオノーレは答え、腕まくりをした。


「ちょっとお待ちください。一体、何人分をつくる予定なのですか?」

アリウォーナは彼女が並べた量を見て、目を瞬く。

おかしい。

1人で出来るような量ではない。

軽く20人分くらいはある。


「え?何人分でしょう………?」

リディオノーレはフェルバールを見た。

「え?私に聞きますか?何人分ですかね……。ざっと100人分くらいあれば足りるのでは?」

フェルバールの答えにアリウォーナはぎょっとした。


「だそうです、先生」

リディオノーレはにこりと笑って答えた。

「お、お待ち下さい。流石に魔力がなくなってしまいます」

アリウォーナは慌てる。

それにこのままいくと素材もなくなる。


「これくらいは大丈夫です」

リディオノーレは安心させるように微笑んだ。


いやいやいやいや、大丈夫じゃない。

アリウォーナの顔はそう告げていた。

フェルバールは彼女の顔を見て、苦笑いになる。

とても困っているのが見てとれる。

それが分かっていないのは、リディオノーレだけだった。


そんな時、扉を叩く音が聞こえ、アングロードがやってきた。


「失礼致します」

「お待ちしてました!」

アリウォーナが見てください!と並んだ素材を見せつける。


「……?」

アングロードは首を傾げる。

「ええと……今から調合されるということですよね?」

「量を見て下さい!量を!軽く20人分くらいあるんです!」

アリウォーナが言う。


「………リディオノーレ様、正気ですか?」

アングロードは目を瞬きながら尋ねた。

「アラウィリアへのお礼ですので、早く仕上げないといけません」

リディオノーレは答える。


アングロードはフェルバールを見た。

フェルバールは苦笑しながら彼に向かって口を開いた。


「回復薬のつくり方はご存知ですか?」

「……本通りなら。調合はしたことはないのですが」

「覚えているなら話は早いです。指示するので、私が言った素材をどんどん鍋に入れていってくれると助かります」

リディオノーレはやる気満々である。


「残りの80人分ほどはどうされるおつもりなのですか」

アリウォーナは尋ねた。

「もう少し素材もらえたりします?」

リディオノーレは駄目元で尋ねてみる。


「無理です!授業で使う物もありますから」

アリウォーナは引き攣った顔で断る。

「では、回復薬として使わなさそうな素材は貰ってもいいですか?」

「……構いませんが」

アリウォーナは答えた。

その答えにリディオノーレはにやりと笑う。


アリウォーナの顔がまた引き攣る。


「あそこのあれと、あれと、これは使わないでしょう?あと、これも」

リディオノーレは指を差す。

「……確かに使いませんが」

「では、ください」

彼女はにこりと微笑んだ。

「何に使うおつもりですか」

「回復薬ですよ。私は回復薬をつくるのです」


だが、リディオノーレが示した素材は回復薬をつくるのには絶対に使わない素材ばかりである。


「お待ち下さい。本当に回復薬ですか?」

「回復薬ですよ。余れば何本かあげますので、研究してもらっても大丈夫です。この条件でどうでしょう?」

リディオノーレは微笑む。


「う」

アリウォーナは呻く。

流石、グレイザックの弟子だ。

未知のことを研究したいという意欲に駆られることをよく知っている。


「もし心配でしたら、グレイザック様にご確認してもらっても大丈夫ですよ。先程言った素材は本当に回復薬に使えるのか、と」

アリウォーナは色々考えたのち、諦めたように口を開いた。


「………分かりました。どうぞ」

アリウォーナの許可をもらい、リディオノーレはフェルバールに指示して素材を持ってもらう。


「ありがとうございます。では、ぱぱっと始めましょう」

リディオノーレはにこりと笑った。





「………本当にこの量を1人でつくるとは」

アングロードが調合を終了したリディオノーレを見て、驚いた。

かなりの魔力を使ったはずだが、彼女は全然疲れた様子が見えない。


出来上がった薬瓶を見て、リディオノーレは満足そうな顔をしていた。


「お手伝いしていただいてありがとうございました。あ!こういった荷物を送りたいときはどうすればいいんですか?」

リディオノーレは困った顔でアリウォーナを見た。


「荷物は転移陣になります。学院と送付先に同じ転移陣を張っておけば送れます。グレイザック様ならお分かりかと」

「なら、手紙もそれで送った方が早いですよね?」

彼女の問いにフェルバールが苦い顔をした。


「………荷物を送る方は基本いませんので。荷物を持ち帰る時は帰領するときですから。帰るときは天馬がいますしね」

フェルバールが答えた。

「なるほど。では、グレイザック様にとりあえず手紙を送って転移陣を張ってもらうようお伝えすればいいんですね」

リディオノーレは納得する。


「それで、私の調合の腕はどうでした?」

彼女は尋ねる。


「……リディオノーレ様は本当にグレイザックの弟子なのですね」

アリウォーナは嬉しそうな、でもちょっと苦々しい顔をしていた。

「最高の褒め言葉です。ありがとうございます。あと、私に様はいらないです。リディでも呼び捨てでも何でもいいですよ」

リディオノーレは笑顔で答え、薬瓶と素材をフェルバールと共に持つ。


「では、調合器具は貸して頂けるということですね。では、また借りに来ますのでその時はよろしくお願い致します」

リディオノーレはそれだけ言うと、そそくさとフェルバールと一緒に部屋を出た。


彼女とフェルバールが出て行ってから、アリウォーナとアングロードと彼の側近が顔を見合わせる。


「……やはり規格外ですね」

アリウォーナは呟く。

「そうですよね?あの量は流石に5人くらいでつくる量では?」

アングロードが尋ねる。

「そうですね。あの量をつくってピンピンしていましたし、つくり方も慣れた様子で驚きました」

彼の側近が同意しながら意見を言う。


「あれほど調合が慣れているとは、学院で特に習うこともないでしょう」

側近がアリウォーナを見て言った。

アリウォーナも頷く。

「口では聞いていましたが、本当にここまで出来るとは」

アリウォーナは感嘆しているが、素材を掠め取っていく感じがグレイザックそっくりで思わずこめかみを揉んだ。


このままいくと、本気で素材が尽き果てそうで先が怖くなったアリウォーナだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。