グレイザックへの誓い
学院に到着すると、シャーリネーヴェにスティルナーデにアングロードが待っていた。
彼女の眼鏡姿に驚く3人。
「それどうしたの?」
スティルナーデが尋ねる。
「んー、ちょっとね」
リディオノーレは曖昧に返す。
「遅かったわね、リディ」
シャーリネーヴェが彼女を急かす。
「これからよろしくお願い致します。シャーリネーヴェ様」
フェルバールは頭を下げた。
「あなたがフェルバールね。話は聞いてるわ。早くいらっしゃい。下級生だけの集まりになるから私は中まではついていけないけれど。大広間で話が終われば寮に案内されるから後で会いましょう」
「分かりました。お姉様、今日からよろしくお願いします」
リディオノーレは微笑む。
「スティルナーデ様、アングロード様もご一緒にこちらへ」
シャーリネーヴェの案内でリディオノーレ達は大広間に向かう。
道中、すれ違う人たちに何やら噂されていたが、そんなのに動じることなく、大広間に到着。
「ありがとうございました」
「何を言われても気にしないのよ?」
「はい」
リディオノーレは苦笑いで返し、大広間の扉を開けた。
「グレイザック様、どういうことですか」
ムナグレークがしつこくグレイザックに尋ねる。
「サムエル、お前のせいだぞ」
グレイザックがサムエルを睨んだ。
「別におかしいことは言っておりません」
サムエルはそう返す。
「後々を考えれば、ああいうのはよろしくありません」
サムエルは譲らない。
「グレイザック様っ!!」
ムナグレークは叫ぶ。
「……………はぁ」
グレイザックはため息をついた。
「グレーク、お前は何を聞きたいんだ。お前は俺についてくるだろう?なら、何も聞くな」
グレイザックはめんどくさそうに述べる。
「……そうだとしても、リディのことも考えてやって下さい」
ムナグレークは意見した。
「グレイザック様と同様、私もサムエル様も、リディのことが大事なのです」
ムナグレークはまっすぐグレイザックを見つめた。
「知ってる」
グレイザックはぶっきらぼうに答える。
「グレイザック様は分かっていません」
ムナグレークは目を逸らさない。
「ああいう行為は、そういう仲だと言っているようなものです。なのに後々は別れるとはどういうことですか。それならリディを甘やかしてはいけません」
「その通りです、グレイザック様。あれほど大事になさっているのに、離れるつもりなんでしょう?そんなのは残酷すぎます。今すでにあの子は、あなたに依存している状態なのですから、本当によくありません」
サムエルもムナグレークを援護する。
「では、どうしろと?」
グレイザックは苛立ったように2人を見た。
一瞬威圧のようなものを感じたが、2人は怯まない。
「本当に大事なら、ある程度の距離感は大事ということです」
サムエルが言う。
「あのーー……」
口論をしている中、バルデミアンが恐る恐る口を挟んだ。
「グレイザック様はリディをどうなさるおつもりなのですか?今のお話を聞くところ、娶るつもりはないということでしょうか?」
バルデミアンは恐る恐るながらも、重要な部分を単刀直入に尋ねた。
「………」
グレイザックは押し黙る。
そして、少し考えたのち口を開いた。
「生きていたらな」
グレイザックは苦い顔でそう答えた。
「全てが終わってお互い生きていたなら、その時考える」
グレイザックのその答えにサムエルも苦い顔をする。
ムナグレークもすごい嫌そうな顔を向けた。
「聞きたくない単語が聞こえましたが、とりあえず今は流しておきます。では、生きていたらその気があると捉えてよろしいですか」
ムナグレークがグレイザックを見つめる。
「………」
「無言は肯定と受け取ります」
サムエルが言う。
グレイザックは苦い顔で3人を見つめた。
「お前たちは何なんだ。どうしたいんだ」
グレイザックは呆れたように尋ねる。
「グレイザック様をちんちくりんの小娘に取られるのはすごい嫌ですが、魔力量、知識量、仕事の腕などいろんなことを鑑みた結果、リディが最善だとは思っています」
ムナグレークが嫌そうに答えた。
「リディはグレイザック様のことをよく知っていますし、とても案じています。お互い信頼し合ってるのも分かっています。このような女性に出会える確率はかなり低いです」
サムエルも述べる。
「正直、アインズビルではなく、カルムクラインの元領地をもらって2人で治めるのも手かと思うのですが」
バルデミアンは斜め上の意見を述べた。
彼は時々、リディオノーレ寄りな発言をすることがある。
いつぞやに雨をつくればいいのではないか、と天馬合戦の作戦会議中に意見をしたこともあった。
「………それは大賛成ですね」
ムナグレークは目を瞬きつつも、賛成する。
「確かに。いい案ですね。お2人でどこかの領地を治めるのが1番良いかもしれません」
サムエルもにこりとする。
「……お前たち、言いたい放題言ってるが、今のところ俺が死ぬ確率の方が高い」
グレイザックは具体的には何も言わないが、自分の未来は自分がよく分かっていた。
「何のために私たちがいるんですか」
ムナグレークが眉間に皺を寄せる。
「私の主はグレイザック様なので、主人の命を優先させますよ」
「同じく、生き残ってもらう為に死力を尽くします」
サムエルもそんなことを言うものだから、グレイザックはため息をついて、バルデミアンを見た。
「バルデはそんなこと言ってくれるなよ?」
「……言いませんが、リディがグレイザック様を守れと言ったらそうします」
バルデミアンの答えにもグレイザックはほとほと呆れた。
「………好きにしろ。だから、俺も好きにさせてくれ」
「では、私たちはあなた達お2人が最終的に夫婦になれるように尽力致しますので、グレイザック様を死なせはしませんよ」
サムエルはまっすぐ見つめる。
「私も死なせません。グレイザック様を確実に、守り抜きます」
ムナグレークも見つめる。
「いなくなったら悲しみますから、私も微力ながら頑張ります」
バルデミアンも言う。
「…………はぁ」
グレイザックはため息をついた。
その頃、大広間での学院長による話が終わり、今度は寮に案内させられる。
女子寮寮監はアリウォーナ。
彼女筆頭に下級生である新入生の女子たちがぞろぞろとついていく。
「フェルバール様、でしたか?あなた様の住まいはこちらに用意しております。女子寮には入れませんので、それまでこちらに待機でお願い致します」
「かしこまりました」
フェルバールは女子寮のすぐ近くの小屋で待機となった。
「では、案内しますね」
アリウォーナは女子寮の扉をゆっくりと開けた。




