過保護なグレイザック 2
「……ん」
身じろぐ。
「ああ、起きたか」
声をかけられ、は!とする。
「勢いよく起きるなよ」
まさに今しようとしていたことを止められ、リディオノーレは声の主を見た。
「……何でそんなにやること分かるんですか」
リディオノーレは唇を尖らせながらゆっくりと起き上がった。
「どれくらい寝てました?」
「1時間くらいか?」
グレイザックはサムエルを見る。
「そうですね。体調はいかがですか?」
サムエルはそう答え、彼女に尋ねる。
「とっても頭がスッキリしてます。今なら仕事がとても出来る気がします!」
遠回しに仕事を求めるリディオノーレ。
サムエルはくす、と笑ってしまう。
「じゃあ、こっち来い」
グレイザックは彼女を呼び、また診察を始める。
脈をはかり、熱がないか確認する。
「よし、今からのお前の仕事はこれだ」
またもや本を渡される。
今度も基本呪文のようだが、表紙が違う。
「……」
本当に今日はこんな感じでいいのだろうか、と彼女は考える。
サムエルの方を見るとまた慈愛に満ちた目で見ていた。
「ありがとうございます」
彼女は素直に本を受け取った。
長椅子に座り、読み始める。
読み始めたら周囲の音が聞こえなくなる。
午前中に読んでいた本よりは少しだけ分厚い。
仕事と称して読書できるなら、それはそれで有り難いのでもう深く考えることはやめて、読書に没頭する。
読み終えた数拍後、なんと夕の鐘が鳴り響いた。
彼女は驚きに目を瞬く。
手元の本を見つめ、グレイザックを見つめ、また本を見つめる。
数秒後、グレイザックをまっすぐ見つめると口を開いた。
「……もしかして、ちょうど読み終える量の本を渡してますか?」
その言葉にグレイザックはにやりと笑った。
「大正解だ」
「……手のひらでいいように転がされてますね、私」
リディオノーレはため息をつく。
「リディが読む速さなどよく分かりますね」
サムエルはそう呟く。
「大体な。この前の図書室事件で何となく分かった」
グレイザックは最後の書類にサインすると本を返せ、と命じる。
「面白かったか?」
「はい、とても。杖が早く欲しくなります」
「だろうな。俺もそうだった。あー、そう言えばムナグレークが心配していた。明日一緒に顔を見せに行くぞ」
「明日も仕事では?グレイザック様の手を煩わすわけには…」
「良い。俺も久しぶりにムナグレークと話したいしな。あと、お前の進捗状況も確認したい」
「……それならいいんですけど」
リディオノーレは渋々受諾する。
「3日も爆睡してるリディが悪いのです。過保護になるのは仕方ないので諦めなさい。当分、我慢です」
サムエルにそう言われ、彼女は頷いた。
そうしてリディオノーレは、過保護という名の監視付きの生活を3日ほど送った。
「……大丈夫そうだな」
グレイザックは呟く。
3日間何事もなかったので納得がいったようだ。
「明日から本格的に仕事復帰だ」
「やったーーー!!!」
リディオノーレは思わず腕を掲げて喜ぶ。
「ん?やったー?」
喜んだのち、喜んだのが合ってるのか分からなくなって自問自答する。
「喜んでもらえて何よりだ。頼んだぞ」
グレイザックはにやりと笑うと翌日からびっくりするくらいの量の執務を命じた。
午前はムナグレークの所で天馬の勉強。天馬に乗る練習も始まって、すごい楽しい。
図書室で調べた古い文献と比較しながら彼に質問すると、本当に色々と教えてくれる。
どれだけ古い文献が間違っているか事細かく、それはもう事細かく説明してくれる。
そして、午後からは死ぬほどの量の執務仕事。
前日までの休憩は何だったんだ、と思うくらいの仕事量だ。
彼女が休憩している間、サムエルが執務を頑張ってくれていたので、彼女が復活した今、サムエルは3日の休暇と相成った。
目が回るほどの仕事量である。
ただ、鐘が鳴れば必ず休憩を取るし、規則正しい仕事だ。残業もない。
そして知らない間に仕事内容が増えていく。
本館へ出入りすることも増えた。
そうしている間に3ヶ月。
あっという間に3ヶ月が過ぎ去った。




