素材収集
「俺たちは素材収集しながら帰るから、お前たちは好きに帰っていいぞ」
上空を駆けながら、グレイザックは後ろの4人に告げる。
「目付け役がいります」
サムエルが答えた。
「ムナグレーク様、私がそちらに行きますので、相乗りさせてもらっても大丈夫でしょうか」
サムエルは尋ねる。
「構いません」
「フェルバール様、私の天馬に乗ってバルデミアン様と馬車を引いて先にお帰り下さい」
「承知しました」
ということで、サムエルとムナグレークが相乗りで残ることになった。
「では、お先に失礼致します」
フェルバールとバルデミアンが馬車を引き、先にアインズビルに戻って行った。
それを見送り、グレイザックは手綱を握る。
「口煩い奴が残ったな」
グレイザックはぼそりと呟き、リディオノーレはそれに対し噴き出した。
「とりあえずあの山に下りる。魔獣が出たら自分で対処しろよ」
グレイザックはアラウィリアとウィスナビアの境界線に跨る山に降り立った。
「そっちに鷹と鷲の魔獣が来ますよ。こっちはお任せを」
ムナグレークがリディオノーレに言う。
「早く倒して採集しろ。魔力操作、下手になってないか」
グレイザックは辛口発言する。
彼はひたすら採集していた。その採集を手伝わされるサムエル。
そして、やってくる魔獣を倒すのがリディオノーレとムナグレークだ。
「私も採集したいですー!」
リディオノーレは叫んだ。
「次の山でな。お前、魔石もきちんと取っておけよ」
グレイザックはひたすら指示を飛ばす。
「グレイザック様、これ以上採集すると怒られてしまいます」
サムエルは延々と採集し続ける主に進言した。
「………ち。次行くか」
次は、ウィスナビアの人里離れた山に降り立つ。
「今度は私が採集しますからね!」
リディオノーレは早速杖を小刀に変えて、採集していく。
「おい、それも採れ。根までごっそりと。あれも。あっちもだ。そこの花も。出来るだけ潰すなよ。あー、そこのも葉を取れるだけ採れ」
グレイザックが魔獣を倒しながらそう指示する。
とても余裕そうに倒すため、サムエルもムナグレークも手持ち無沙汰だった。
「ちょっと!細かすぎますよ!サムエル様もグレーク様も手伝ってくださいぃぃーーー!!!」
リディオノーレは叫ぶ。
「え?細かすぎて覚えてません」
ムナグレークは肩をすくめる。
「グレーク様はそこの草を根も一緒にお願いします!サムエル様はそちらの黄色がかった花をお願いします!」
リディオノーレは指示を飛ばす。
この状況でよく覚えている彼女にムナグレークとサムエルは舌を巻いた。
彼女は回復薬の素材を収集しにきたのに、グレイザックに目についたあらゆる素材を片っ端から採集しろと命じられていた。
正直もう採集が嫌になるくらいの採集をさせられた。
「ほら、次行くぞ」
グレイザックは満足気に収納魔法がかかった革袋を叩き、次の山を目指す。
ラルシャークでも同じような指示が飛び、リディオノーレはくたくたに疲れた。
夕方までには帰る予定だったのに、アインズビルに着いたのは陽が沈んでからだった。
「今か今かとお待ちしてました」
フェルバールが出迎える。
「一体、どこまで行ってたのですか」
バルデミアンは眉間に皺を寄せながら言った。
「すまんな」
グレイザックは悪びれた様子もなく謝った。
「このまま素材を仕分けするから、保存魔法がかかった箱を幾つも持ってきてくれるか」
彼はサムエルに頼む。
「リディ、このままこっちに来い。お前達は好きにしろ」
グレイザックはそのまま訓練場へと向かう。
陽が沈んだので、訓練場には誰もいなかった。
グレイザックはそこに、革袋に収納していた素材を並べ始める。
気になるムナグレークとフェルバール、バルデミアンも見守る。
「それはこっち。これはそっち」
グレイザックとリディオノーレが手分けする。
回復薬として使える素材とその他で分けると、サムエルが持ってきた箱にしまう。
「これは学院に持って行け。代替品になる物も入っているから、色んな種類のものをつくり、あいつらに感想を書かせておけ」
「なるほど」
リディオノーレは頷く。
本来の素材でつくる回復薬と代替品でつくった回復薬の比較をおこなうということだ。
そして、その感想をアラウィリアの者たちに書いてもらうというわけである。
「いいですね、それは。結果が気になりますし、大量に情報が手に入りますし」
「だろう。じゃあ学院で頼むぞ。出来上がれば一旦、俺宛てに送ってくれ。そしたら俺が送っておく」
「了解しました」
リディオノーレは答え、フェルバール達にも手伝ってもらいながら箱を運ぶ。
「何回も言いますが、学生は学業が本分ですからね」
フェルバールが突っ込む。
「その通りですよ。実験ばかりしないと約束してください」
ムナグレークも言う。
「本当に。ちゃんと授業に出て下さいよ」
バルデミアンまでも言う。
「………」
リディオノーレは唇を尖らせた。
「小言は行く前でいいですー!早くご飯食べましょうよ。お腹すきました」
彼女は皆を誘って、城に戻った。




