目覚めると
グレティアーナの案内でリディオノーレが朝まで与えられていた部屋に入るグレイザック達。
「私は戻ります」
グレティアーナは現場の方に戻って行く。
グレイザックはリディオノーレ寝台に寝かすと、フェルバールの方に向き直る。
「話を聞こう」
グレイザックに促され、フェルバールは経緯を話し始めた。
粗方聞き終えると、グレイザックは彼に労いの言葉をかける。
「私も後処理を手伝って参ります」
フェルバールも現場に戻って行った。
「………グレイザック様もお休みになられて下さい」
サムエルが言う。
「………アブストールが戻ってきたら言ってくれ。少し休む」
グレイザックは椅子に深くもたれかかる。
「かしこまりました」
サムエルは頭を下げ、部屋を辞した。
後始末はアブストールが主導でおこなってくれて、グレイザックはすごい楽だった。
ザファムートの事件は、遮蔽の結界が張られていたのもあって他者にほぼ見られずに済んだ。
結界の解除には苦労したが、不幸中の幸いだった。
あれからリディオノーレはなかなか目覚めず、アインズビルに帰れなかった為、視察の報告書をサムエルとフェルバールがアインズビル領主に届けに帰り、サムエルがそのまま領主側近として会議に出席した。
そして、リディオノーレが目覚めたのは、その領主会議後だった。
がばっ!と急に起き上がった彼女に部屋にいた者たちは驚いた。
第一声は、「ティルは!?ティルは無事ですか!?」だった。
次に「ケネス様は!?ケネス様も生きてますか!?」と。
その次は「アングロード様は!?大丈夫でしたか!?」だ。
だが、「眩しっっ」と叫んでぎゅ!と目を瞑ったリディオノーレ。
「そのまま待ってろ」
グレイザックは慌てて目薬を用意し、片目ずつさしてやる。
彼女はぱちぱちと目を開閉し、グレイザックと目が合うと、へにゃ、と相好を崩した。
グレイザックも彼女を見て安心した表情を見せる。
リディオノーレは両手を伸ばした。
「………」
グレイザックは寝台に座ると彼女の好きにさせてやる。
リディオノーレは彼に抱きつき、胸に頬ずりする。
仕方なさそうに、グレイザックは彼女の頭を優しく撫でた。
満足いくまで頬ずりすると、リディオノーレは離れる。
そして、部屋を見渡した。
「……………」
全員いるではないか。
リディオノーレは羞恥で顔を赤らめる。
「……み、見てました?」
「……はい。がっつりと」
フェルバールが苦笑いになる。
「寂しかったとお伺いしてますので、別に良いのでは」
バルデミアンが微笑む。
「体調はいかがですか」
サムエルは話題を変える。
これぞ大人である。
「どこかまだ痛いところありますか?」
ムナグレークもそう質問する。
リディオノーレは腕を回したりして体調の異変を確かめたのち、「大丈夫そうです。熱も引いてますし」と答えた。
「……存外、平気そうだな」
グレイザックは少し驚くと、彼女の額や首を触る。
「………大丈夫そうだな」
グレイザックは診察を終えると、「さて」と発した。
「グレーク、まずはアブストールに報告を」
ムナグレークは素早く部屋を出た。
「さて、何から聞きたい」
グレイザックは寝台横に椅子を持ってきて座ったのち尋ねた。
「………何で皆がここにいるんですか」
何ともまあ事件と全然関係ないことを尋ねるリディオノーレに皆は笑ってしまった。
「お2人になられますか?」
サムエルが腰を浮かそうとする。
「ごめんなさい!違うんです!」
リディオノーレは慌てて止める。
「勢揃いしてるにびっくりして。………ティルは無事でしたか?」
リディオノーレは尋ねる。
「スティルナーデ様は無事でした。丈夫ですね、あの子は。気絶していましたが、特に目立った怪我もなかったです」
フェルバールが答える。
本当にあの斜面を転がり落ちたとは思えないほど外傷が少なくて驚いた。
「良かったです。ケネス様は?」
「……ケネス」
グレイザックが彼を呼ぶ。
ケネスが部屋の隅からのっそりと起き上がって近付いてきた。
「……ケネス様、すいませんでした」
リディオノーレは頭を下げた。
「次はないぞ」
ケネスはまっすぐ彼女を見つめた。
あの時、逃げないといけなかったのにスティルナーデ達の方に気を取られた。
「分かりました。本当に申し訳ありません」
リディオノーレは謝罪する。
そんな彼女の様子にグレイザックは額を弾いた。
「慣れるしかあるまい」
時には非情な決断もしないといけないということを。
またいつか味方を見捨て、自分だけ逃げるという選択を取らないといけないことがあるかもしれない。
「そんな状況、嫌ですけどね」
リディオノーレは言う。
「それは、お前が全員を助け出せるくらいの実力を身につけたらそうして良い」
グレイザックの言葉にリディオノーレは頷いた。
「アングロード様は?」
「あいつも無事だ。血は流し過ぎたがな」
(それはグレイザック様もですけどね)
サムエルが内心で呟く。
「良かった」
巻き込む羽目になった3人が無事なのを知って、ほっと胸を撫で下ろした。
そんなとき。
「リディーーーーっ!!!!」
急に大声が聞こえたかと思うと、扉が思いきり開け放たれた。
勿論、この扉の開け方をして急に入ってくる人物と言えばただ1人だけである。
スティルナーデはリディオノーレに思いきり抱きついた。




