グレイザック達
「!」
グレイザックは腕輪が光ったのを見て、目を見開いた。
光の線が浮かび上がる。
「急ぎましょう」
それを見てサムエルが天馬の手綱を力強く握る。
もう少し。
もう少しで到着するのだが、それが遠い。
だが、その光の線は一瞬でなくなった。
『リディ』
グレイザックは念話で呼びかける。
『リディ』
天馬で駆けながら、グレイザックは彼女を呼び続けた。
「何だこれは」
ザファムートは自身の腕輪から光る線が浮かび上がり、顔を歪めた。
すぐに腕輪を外し、破壊魔法をかける。
その隙を狙って、リディオノーレは風刃を放つ。
ザファムートはそれを難なく防いだ。
彼女が繰り出す魔法をザファムートは余裕そうな顔で防いでいく。
「一度見たことがありますからね」
ザファムートはにやりと笑った。
結婚式での天馬合戦のことを言っている。
確かにあの時に色んな技を使ったリディオノーレ。
それが今、仇となるとは思っていなかった。
「つまらないです」
彼は杖を剣に変えるとリディオノーレに向かってきた。
最初は魔法で対抗していたが、魔法では味方も傷つけてしまいそうで、彼女も杖を剣に変える。
「くっ!!!」
身体強化をしていてもザファムートの力は凄まじかった。
「意外とやりますね」
ザファムートは剣を振るう。
「でも、それくらいでは私の敵ではありません」
ザファムートは嘲笑う。
「本当に内通者はザファムート様だったんですね」
リディオノーレは剣を力一杯薙ぎ払い、距離を取る。
「分かっていたんですか」
ザファムートは少し目を開くと突きを放つ。
「ぐっ!」
リディオノーレは避けるので精一杯だ。
体勢を崩した所をザファムートは追い打ちをかける。
彼はひたすら彼女の首を狙っている。
狙いが分かっているから受け止めやすいが、それがそう思わせる布石かもしれないので、リディオノーレは頭で色々考えていた。
あとは到着を待つだけ。
ただ、気掛かりは結界だった。重ね掛けをしている。
恐らく前日に天馬と荷物を持って行った際に準備していたのだろう。
「一体どこまで知っているのですか?」
ザファムートは余裕そうに笑いながら連撃を繰り出す。
リディオノーレはそれを受けながら、躱しながら言葉を紡ぐ。
少しでも気が逸れれば、すぐにやられるのは何となく分かっていた。
「あなたが内通者だということは知っています!ティア様の式の時、あなたは私が毒に倒れたと言いました」
ザファムートの剣を思い切り払うリディオノーレ。
だが、すぐさま次の攻撃が来る。
間髪入れない攻撃なので、リディオノーレはかなり消耗していた。
「ええ。実際毒だったでしょう?」
ザファムートは眉間に皺を寄せながら問うた。
「ですが、アインズビル領内で知る者は限られています。私とグレイザック様とサムエル様とフェルバール様とバルデミアン様、そして領主さまだけです。他は知りません」
リディオノーレは答えた。
その彼女の答えにザファムートの眉間に更に皺が寄る。
彼は距離を取る。
「……どういう意味だ」
ザファムートの口調が変わった。
「私が倒れたことを知っていても、何故倒れたのか、毒のことは知らないはずなんです」
「何故知らない?倒れたことを知っているなら、毒のことも知っているだろう。誰かが漏らしたかもしれないだろうが」
「毒に関しては漏らさぬように血判証明を結んでいました。なので知っているはずがないんです。その単語を言うと、呪いがかかるのですから」
リディオノーレは剣を構える。
「私の師匠がそんなヘマするわけないじゃないですか」
彼女は言う。
グレイザックなら見つけてくれる。
知っているし、信じている。
彼が来るまで、時間を稼げばいいだけ。
「だが、愛弟子を襲われるというヘマをした」
ザファムートは貶す。
「結局はグレイザックも子どもなんだよ」
ザファムートはそう言い放った。
その言葉にリディオノーレの頭の中で何かが切れた。
「グレイザック様を馬鹿にしないでください」
彼女の中の魔力が暴れ、威圧する。
「くっ!」
ザファムートはやっと顔を歪めた。
「魔法と剣より威圧の方がすごいとは……っ」
ザファムートの眉間に皺が寄る。
「聞かせてください。何故、私を狙うんですか」
リディオノーレは威圧をしたまま尋ねる。
「カルムクラインだからだ。お前達一族は粛清で処刑されるべきだった。なのに何故、まだ生きている」
ザファムートの顔が醜く歪む。
「グレイザック様に感謝ですね」
リディオノーレは答えた。
光る線が示した方向にグレイザック達は空を駆ける。
グレイザックを地上から見つけたフェルバールは杖から光を放った。
「!!」
すぐさま見つけたグレイザックは、「上がってこい!」と言うが、フェルバールはそれが出来なかった。
「?」
グレイザックを先頭に皆が地上に降り立つ。
グレイザックは眉間に皺を寄せ、簡潔に尋ねた。
「何があった」
「全ての天馬を殺されていました」
フェルバールは答えた。
その答えには眉をぴくりとしただけで、グレイザックは違うことを問いかける。
「場所は分かるか」
「はい。ですが、結界に阻まれて行けません」
フェルバールが答える。
「この先です。助けを呼びに城に向かう所でした」
「グレーク、お前はアブストールに」
グレイザックの指示でムナグレークはアラウィリア城へ1人駆けて行く。
「お前達は上から攻撃しろ。全力で。俺は地上から解除を試みる。フェル、俺の天馬に乗れ」
グレイザックはそのまま地上に残り、フェルバールは彼の天馬に跨り皆と共に上空へと駆け上がった。




