↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
内通者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
159/912

ザファムート




アラウィリアでの市は初めてなので、正直とても新鮮だった。

ムナグレークが言っていた通り、本当に武器屋が多くて笑ってしまったリディオノーレ。


「ねぇ、ちょっとあそこも見ていい?」

スティルナーデが1番はしゃいでいた。

昨日の感じはどこへ行ったのやら、完全に浮かれている。


「この短剣可愛くない?」

スティルナーデがリディオノーレに尋ねる。

「可愛い………?」

リディオノーレは疑問形で返す。

短剣に可愛いとか可愛くないとかあるのだろうか。


「お!お目が高いね!流石アラウィリアのお嬢ちゃんだ!」

店主も食い付く。

「あの……何が可愛いんでしょうか?」

リディオノーレは後ろに控えるフェルバールに尋ねる。


「ちょっとそれは私も分かりません…」

フェルバールが答える。

剣を可愛いなどとは思ったことがない。


「お兄ちゃん達はまだまだだねぇ」

店主がにやりと笑う。

「ねぇ、リディ。この短剣お揃いで買わない?」

「!!??」

短剣のお揃いとはまた斬新である。


「これって、普通なんですか?」

リディオノーレはコソッとアングロードに尋ねる。

「普通ではないですが、友達と出かけるのが初めてなのですごく浮かれています」

アングロードがコソッと返答する。


なるほど、とリディオノーレは頷くと「じゃあそれお揃いで買いましょう!」とスティルナーデを誘う。

スティルナーデは一瞬にして顔を輝かせてその短剣を購入した。

リディオノーレがお金を払う暇など無かった。


「お金…いいの?」

「いいわよ、別に」

スティルナーデは鞘付きの短剣をリディオノーレに渡した。


「ありがとう」

お礼を言うとスティルナーデは恥ずかしそうにしていた。


「じゃあ私からも何か……ないかな」

リディオノーレは店を見渡す。

「この持ち手のところに付けれるような飾り無いですか?」

店主に聞くと案内してくれて、良さげの物が見つかった。


「じゃあこれは私が購入するから、お揃いでつけましょう」

リディオノーレが柄飾りを購入して渡す。

スティルナーデはそれはそれはもうとても嬉しそうな顔をしてくれて、リディオノーレも嬉しくなった。


それからもスティルナーデに色んな武器屋に連れて行かれる。

正直リディオノーレには剣それぞれが何が違うかなどは全く分からなかったが。

アングロードは書籍が好きらしく、本屋にもまわり、リディオノーレもアラウィリアの小説などを購入した。


フェルバールとザファムートは、殆ど荷物持ちである。


「ねぇ、この市がやってる裏手の山からアラウィリアの町並みが見える景色のいい所があるの。行かない?」

スティルナーデはリディオノーレの手を握る。


合図だった。


「是非見てから帰って下さい。結構いい景色なんです。あんまり誰も来ないので、ゆっくり出来ると思いますよ」

アングロードもすすめる。


「じゃあ、行ってみようかな」

リディオノーレはフェルバールに視線を送る。

「荷物先に持って行っておいてください。見てきたら戻るので」

「分かりました。早く帰ってきてくださいね」

フェルバールはそう答え、ザファムートが持っていた荷物も受け取り、天馬車の方に向かって行った。


「私もその景色、見てもいいですか?」

ザファムートが双子に尋ねる。

「どうぞどうぞ。気に入ると思いますよ」

アングロードは微笑み、先頭に立ち案内してくれる。

その彼の後ろにリディオノーレとスティルナーデが歩く。

彼女たちの後ろにザファムートが続き、ケネスが最後尾だ。


少し樹々の中を歩き、頂上近くになると途端に視界が開けた。


「ぅわぁ」

リディオノーレは驚く。

天馬から見下ろす視界とは違って、町並みが近くに感じる。

空から見る景色は、あっという間に流れていくけれど、今見える景色はすぐそこに存在している。

暖かさを感じる景色だった。


リディオノーレの左隣にスティルナーデが並び、その隣にはザファムートが町並みを見下ろしていた。


高い山ではないが、山は山なので見下ろしている場所の足を踏み外せば、真っ逆さまに急斜面を転がり落ちていくような所だった。


アングロードとケネスは少し後ろから、3人の様子を眺めていた。


「絶景ですね」

ザファムートがそう言った瞬間、スティルナーデは首に短剣を突きつけられていた。


「!!!!」

その短剣は先程リディオノーレとお揃いで購入した物だった。

ザファムートは殺気を出すこともなく、何ともない会話のままスティルナーデが腰につけていた短剣を奪っていたのだ。


「一体、何してるんですか」

リディオノーレがザファムートを睨みつける。

アングロードは既に杖を剣に変えて、構えていた。

ケネスも唸る。


スティルナーデは何とか逃れようとするが、短剣を持っていない腕が彼女を押さえつけている。あまりにも力が強い。

身体強化をかけようとすると、ザファムートは首に当てている短剣に力を込める。


「ちっ」

スティルナーデは首から血が流れるのを感じた。

恐らく自分が身体強化をかけて逃げるのと、ザファムートが首を切るのとでは後者の方が断然に早そうだと確信する。


「リディ………いえ、リディルレーネ・リンド・カルムクライン」

ザファムートはリディオノーレの本名を呼ぶ。

「貴方には死んでもらいたい」

「無理です」

リディオノーレは即答した。


「こちらのお嬢さんが死んでも良いと?」

ザファムートが唇の端を上げた。

「……殺せばいい」

アングロードはそう言って、剣を持ち彼に向かって行った。

ザファムートは嘲笑うと、スティルナーデを斜面にすぐさま落とす。


「!!!!」

リディオノーレは思わずそちらに視線を向け、手を伸ばす。

「駄目です!放っておけばいい!!!」

アングロードはリディオノーレを庇うようにザファムートの短剣を受けた。


「………流石、アブストールの弟」

ザファムートはにやりと笑って、短剣で長剣に向かっていく。

グレイザックに負けず劣らずの連撃の速度だった。


斜面に落ちたスティルナーデはもう姿が見えない。

リディオノーレは膝をついて目を凝らす。


「リディ!魔法を!」

ケネスが叫んだ。

まさかの狼の叫びにザファムートとアングロードが驚く。


「この馬鹿が!」

ケネスがリディオノーレの服を咥えると力づくで背中に乗せる。

「ティルを!探さないと!」

リディオノーレの顔は焦っていた。

死なせるわけにはいかない。


「約束だったろ!思い出せ!」

ケネスはそれだけ叫ぶと地を蹴る。

だが、少し走ると何かに阻まれるようにして体がぶつかった。


「!?結界か!?」

ケネスが叫ぶ。

いつの間に。


「リディ、結界の解除をしろ。急げ」

ケネスが指示する。

でも、リディオノーレの頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。


油断はしていなかった。

あまりにも突然のことに思考がついていっていない。

スティルナーデが斜面に転がり落ちて、それも気になって仕方がない。

何を優先させればいいか分からなくなっていた。


「ふんっ!!!」

ザファムートは短剣でアングロードを圧倒し、彼の体に無数の傷をつけていた。

かなりの血を流している。


「回復を……」

リディオノーレはそっちに思考が行く。

「リディッ!!!!」

ケネスは彼女を呼ぶ。


「何だかんだで子どもだな。動揺するとは」

ザファムートは血のついた短剣をリディオノーレに目掛けて投げた。

ケネスは彼女を庇うため、その短剣を体で受ける。


「か、回復を」

リディオノーレは杖を取り出し、回復魔法をかけようとする。

「馬鹿野郎!逃げろ!」

ケネスは叫ぶが、彼女の耳には届いていない。


「毒のことを知る者は何人たりとも生かしておけません」

ザファムートは杖を剣に変えながら彼女に近付く。

ケネスは彼の足に噛み付くが、ザファムートの剣に斬りつけられる。


「ぐぅっ!!!」

斬られて蹴られ、ケネスは離れたところで呻く。


「リディオノーレ様!!!」

アングロードも叫ぶ。

血を流しすぎた。頭がくらくらする。


「グレイザックの弟子だとは思えんな」

ザファムートはそう言うと、剣を振りかぶった。


キィィン!と甲高い音がして、彼の剣はリディオノーレの装飾品の魔法によって防がれる。


「………そう、グレイザック様」

そうだ。

リディオノーレは目を見開いて、ザファムートを見た。

彼は剣が防がれたのを見て、すごい嫌そうな顔をしていた。


リディオノーレは懐から魔法陣の紙をいくつも取り出す。

臨戦態勢に入ったのを見て、ザファムートは剣を解除した。


リディオノーレは彼を睨み、雷撃を放った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。