外食
6人は相談の結果、多数決で肉料理のお店に決まった。
「本当に遠慮しなくていいんですね?」
バルデミアンが最終確認する。
「良い。いくらでも食え」
グレイザックの言質を取り、騎士2人は本当に遠慮なく肉料理を頼んでいく。
「そんなに食べれるんですか?」と、リディオノーレが思わず聞いてしまうような量である。
「これでも騎士ですからね」
フェルバールがにこりと笑う。
「リディは、目当ての物を買えましたか?」
バルデミアンが話を振る。
「はい。素材って案外高いことを知りました」
「実験に何でもかんでも使ってはいけないことを痛感したのなら良かったです」
ムナグレークが言う。
「なら、やっぱり魔獣狩りに行かないといけないですね」
リディオノーレは意気込む。
「………誰と行くつもりですか」
フェルバールが恐る恐る尋ねる。
「師匠はどう思いますか?」
リディオノーレが尋ねる。
「お前とあと2人誰か連れて行くなら、俺なしでもいいぞ」
グレイザックの答えに彼以外が目を丸くした。
先に運ばれてきた飲み物を飲みながら、サムエルは口を開いた。
「危険では?」
「今はまだ警戒要素があるから危険だが、何もなければ問題ない」
グレイザックはにやりと笑う。
「1人で熊10体くらいまでなら倒せるだろう」
「………」
誰も何も答えない。
「過大評価ですよ」
リディオノーレが口を開いた。
「じゃあ逆に聞く。リディ1人でどこまで倒せると思う?」
グレイザックは酒をあおりながら、5人に尋ねた。
「………熊はグレイ様と既に倒していますしね。それくらい出来るでしょうね」
ムナグレークが考えながら発言した。
「熊……ですよ?騎士団で前衛や後衛と分かれて、新人騎士なら、3人で1体倒せばいいくらいなのに」
フェルバールが呟く。
「正直、きちんと作戦を立てていくのであれば、リディなら象1体くらいいけるかもしれませんね」
バルデミアンが述べる。
その言葉にリディオノーレは目を見開いた。
それはいくら何でも過大評価すぎる。
バルデミアンの言葉にグレイザックは唇の端を上げた。
「魔法だけならバルデ様の言う通りかもしれませんね」
サムエルも同意する。
「魔法だけならな」
グレイザックがリディオノーレに笑いかける。
「知ってますー!剣がまだまだだって、言いたいんですよね!鞭も頑張ってるんですから」
リディオノーレは頬を膨らます。
「まあこのまま訓練を怠らなければ大丈夫だろう」
グレイザックはにやりとした。
もう既に、騎士並みの手腕を持っているが、ここで充分だと言ってしまうとこれ以上伸びなくなるため、グレイザック達は絶対に剣に関しては煽ることにしている。
面白いくらいに成長するので、このままグレイザックと対等になるくらいまで頑張ってもらいたい所である。
そんなこんな話をしながら、料理がたくさん運ばれてきた。
大皿料理が3つに、副菜が3つ、汁物とパンが人数分。
フェルバールとバルデミアンは塊肉をそれぞれ頼んでいた。
「俺が先に食べるから待ってろ」
グレイザックが大皿と副菜と汁物とパンを一口大ずつ自分の皿に盛り、先に口をつける。
「………大丈夫だ」
グレイザックは食べ終えると、皆にすすめた。
「その塊肉は知らんぞ」
グレイザックは騎士2人にそう言って、皆が料理を取り始める。
「毒味ならするのに」
リディオノーレは小さい声で呟いた。
「この中でなら、俺が1番耐性があるからな」
グレイザックはそう言う。
「私も少しは耐性ついてます」
リディオノーレが言う。
「お前には早い。ほら食え」
グレイザックは彼女の皿におかずを置く。
「師匠も食べてくださいよ」
リディオノーレは別のおかずを渡す。
相変わらずの仲の良さである。
「今年は大盛況ですね」
サムエルが話題を振った。
「確かにな」
「これって毎年開かれるんですか?」
リディオノーレが尋ねる。
「大体はな」
「アラウィリアと違って、こっちの方が栄えてますね。品揃えも多いですし」
ムナグレークが述べる。
「領地によって違うんですか?」
リディオノーレはムナグレークに尋ねる。
「私はアラウィリアとここしか知りませんが、アラウィリアは武器屋が多いですね」
ムナグレークが苦笑する。
土地柄、武器を売る方が儲かるということだろう。
「夜市は全く違うんですか?」
リディオノーレが興味本位で尋ねる。
「…………」
ムナグレークが視線を逸らした。
「あー…………成程。夜市で魔石を手に入れたわけですね」
サムエルが思い当たることがあったのか、そう発言し、グレイザックを見た。
グレイザックは知らんふりをしている。
「だから、リディが夜市の存在を知っているわけですね」
サムエルが苦笑した。
「夜市はですね、男女の逢瀬や出会いの場なので、雰囲気ががらりと変わるのですよ。機会があれば、私と行きますか?」
サムエルが提案する。
その提案に皆がぎょっとした。
「待て待て。お前たち2人はどう見ても親子だろう」
グレイザックが慌てる。
「それか幼女を買った風に見られるぞ」
慌てて止めに入る。
「では、行かれますか?」
サムエルがにこりとグレイザックに微笑む。
「……あの雰囲気は嫌いだ」
グレイザックが苦い顔をする。
「私が!私が行きます!」
フェルバールが元気良く挙手する。
「……………」
グレイザックが可哀想な目でフェルバールを見つめる。
「グレイ様みたいに特に顔がいいわけでもないですし、まず出会いが全くありません」
フェルバールの主張にバルデミアンが大きく頷いている。
「騎士団は許可を出していないのか?」
グレイザックが尋ねる。
「あまり良くは思っていませんね」
バルデミアンが答えた。
「俺は夜市にしか出ない貴重なものを目当てに行っている。俺の護衛を名目として、今度ついてきてもいいぞ」
グレイザックの提案に騎士2人は目を輝かせた。
「但し、俺が物色してる間だけだがな」
「なら私も行きます」
リディオノーレが身を乗り出す。
「貴重な素材、見たいです」
「………」
グレイザックは押し黙る。
「だから私も行きますので問題ないでしょう」
サムエルが口を挟む。
「………夜市は未成年には早い」
「ですが、興味を持ってしまってますからね。1人で抜け出されて行かれるよりは、皆で行った方が良いのではないですか」
サムエルが提案する。
その提案にグレイザック以外が頷いた。
「……グレーク、お前も行きたいのか」
グレイザックが呆れた目を向ける。
「勿論ですよ。何か新しい扉が開くかもしれないでしょう」
ムナグレークがにこりと笑う。
「それは如何なものかと……」
バルデミアンが小声で突っ込んだ。
「うるさいですね。バルデも行きたいんでしょう?なら、大人しく賛成してくれればいいんですよ」
ムナグレークが言い返した。
「私は、行くとは一言も」
バルデミアンが呟く。
「では、行かないんだな?」
ムナグレークが問い詰める。
「バルデ、後悔するぞ。今の内に約束しといた方がいい。グレイ様は約束を守る方だからな」
フェルバールが上手にグレイザックを煽る。
必ず連れて行け、と暗に告げているフェルバールが面白くて、リディオノーレは笑ってしまった。
「私もお願いします」
熟慮の末、バルデミアンが同行を願い出た。
「じゃあそういうことで、次は連れて行ってくださいね」
リディオノーレは取り分けた料理を平らげ、グレイザックに微笑みながら告げた。




