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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
内通者

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師弟2人の衣装




勿論、予想通り湯浴みさせられるリディオノーレ。使用人たちに頭から足の爪先まで綺麗に洗われる。

隣ではグレティアーナも同じようにされていた。だが、彼女はとても慣れている。


「自分で洗いますから〜〜〜っ」

リディオノーレは顔を歪めながら少し反抗するが、使用人たちは丸無視で仕事を続ける。


湯浴みをすると髪を魔法で乾かしてもらい、サラサラに梳かしてもらう。

「髪はグレイザック様が結ってくれるので、このままで大丈夫です」

リディオノーレの言葉にグレティアーナは目を瞬く。


「あの人は女性の髪の毛も結べるの?」

「器用なんですよ、本当に」

リディオノーレは苦笑いになる。

「ティア様の衣装綺麗ですね」

リディオノーレの準備は一旦休憩に入り、グレティアーナの様子を見る。


真っ白な衣装が所々透けていてとても艶めかしい。

袖口は広く長めで、裾は足首まで隠れている。

衣装を着たら、髪を結い上げられていく。

長い髪を綺麗にまとめ上げ、うなじを見せる。


「綺麗すぎますよ」

リディオノーレは破顔する。

「ありがとう。さあ、リディの衣装も見せてちょうだい」

グレティアーナに促され、リディオノーレも衣装に袖を通す。


すると、グレティアーナの顔がどんどん驚きに変わっていく。


「………リディ、あなた、その衣装、…………え?」

グレティアーナは驚きのあまり言葉が出ない。

「どうかされましたか?」

リディオノーレが首を傾げる。

「………綺麗よ。見方によって、金色になるのね」

「そうなんです。すごいですよね」

リディオノーレが感心している声を上げる。


これは、気付いていないのは彼女だけなのか。

グレティアーナは表情に出さないように気を付ける。


完全にグレイザックの所有物だということが分かる衣装だった。

愛されている証拠である。


「………大事にされているのね」

グレティアーナは徐に口を開いた。

「そうみたいです。グレイザック様の色を全面に出すことによって多分、誰の弟子に手を出してるか分かってるよな?っていう脅しだと思うんですけど」

リディオノーレは苦笑する。


「……それはそうなんだと思うけれど」

グレティアーナは呟く。

脅迫というよりは、独占欲のような気がするが。


グレイザックが分かっていない筈がない。

というより、婚約者以外でここまで色を纏うことがあるだろうか。

いつもみたいに髪飾りみたいな一部分だけなら何とも思わないが、これは完全に自分の女だと言っているようなものである。


グレティアーナは呆れを通りこして、思わず笑ってしまった。

これは、グレイザックの衣装も楽しみである。

噂になる大注目の結婚式になりそうだ。


少し緊張していたグレティアーナだったが、ほぐれた気がする。

楽しみになってきた。




そんなグレティアーナより反応が凄かったのがアブストールである。

着替えたグレイザックの衣装を見て驚愕の声を上げた。


「待て、グレイザック。そのベストにその袖……」

リディオノーレの髪の色である赤紫ではないか。

「待て!その上着の内側もか!?」

ちらりと見えたロングコートの内側までもが赤紫ではないか。

「それがどうした」

グレイザックは整髪料で前髪を上げながら、めんどくさそうに返事する。


最後に赤紫のブローチをつけ、リディオノーレからもらった疲労回復の腕輪をつける。

まあもう組み込まれている魔力がなくなって、ただの腕輪に成り果てているのだが。


男共が用意できたので、グレティアーナの部屋に向かう。

女子2人が着替え終わっていることを確認し、男共が入室するとムナグレークとアブストールが一目散にグレティアーナの元へ駆け寄る。


「綺麗だ、ティア」

アブストールが第一声に声をかける。

ムナグレークは「お前にやるのが勿体ないほどの綺麗さだな」と口を開く。


アブストールとムナグレークが小競り合いを始め、それをくすくすと面白おかしそうに見ているグレティアーナだった。



「サラサラすぎてやりにくいな」

そんな中、グレイザックはリディオノーレの髪を結いながら口を開いた。

グレイザックは彼女の横髪を後ろに編み込んでいき、後頭部でリボンで結ぶ。

防御魔法をかけたこの衣装用の髪飾りを挿そうとすると、リディオノーレが口を開いた。


「うわ、その髪飾り見せてください」

リディオノーレはグレイザックから受け取ると可愛いですね、と呟く。

「あれ、これ、袖の模様と同じですか?」

リディオノーレはグレイザックの袖の折り返しの花の茎のような刺繍を見る。

「グレイザック様のこだわり凄いですね」

彼女は思わず感心する。

後ろで控えて見ているサムエルは、呆れている。


ここまで自分の所有物だと言い張る衣装なら、公言してしまえばいいのに、とつくづく思う。


「………待て、グレイザック。その衣装は何だ」

アブストールはグレティアーナと少し歓談したのち、リディオノーレの方を向き、あわあわと後ずさった。


グレティアーナはグレティアーナで、グレイザックの衣装を見て少し目を瞬き、そして生温かい視線を向けた。


リディオノーレの白のようで金色に見える衣装を上から下までじっくり見るアブストール。

髪飾りに、首飾り、腕輪諸々の装飾品、金色ではないか。


「なんなんだお前たちはーーーーーーっ!!!」


アブストールが思わず叫んだこの結婚式、伝説として語り継がれることになるのは言うまでもない。




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