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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
内通者

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魔力操作の魔獣狩り




あれから半月。

アインズビル騎士団の新人騎士の訓練を兼ねて、魔獣狩りが行われることになった。

それにはジャンドバルトも参加である。


リディオノーレは鳥の魔獣狩りの訓練のため、グレイザックと共に参加する。

フェルバールとバルデミアンは今回、師弟の護衛として一応つくことになった。


「団長、鳥だけ譲ってくれるとありがたい。あとは任せる」

グレイザックが団長に頼む。

「本当に加勢しなくて大丈夫なのですか」

リディオノーレの実力を見たことがないので、団長は再度尋ねる。

「良い。お前たちは、新人と励め」

グレイザックは唇の端を上げた。



そして、案の定、リディオノーレの実力に全員が驚くことになる。

彼女は騎士団たちと体力づくりと剣以外の訓練しかしていない。

天馬合戦をしたこともないので、彼女がどこまで魔法が得意なのかも見たことがない。


故に目の当たりにした騎士団たちはかなり驚いていた。


「………グレイザック様、リディは充分に騎士団でやっていける実力をお持ちですが……」

団長が苦笑いでグレイザックに話しかけた。

「ああ。俺の弟子だからな」

グレイザックはさも当たり前のように答える。


「フェル、バル、あれが言っていたことだったのか……。実際目にするまで信じていなかったが」

団長は今度は護衛騎士2人に話しかけた。

「……そうです。あの魔力操作、えげつないでしょう……」

フェルバールが苦笑いで答えた。


「何だあれは、本当に」

初めて見たとき、団長は呆気にとられていた。


リディオノーレは持参した小刀をまず増幅魔法で6個に増やし、それを風で操って鷹や鷲を倒したのだ。

そして、弓矢でも上手に射止めていた。

百発百中とはいかないが、動く的に4回の1回くらいの確率で仕留めることができたら素人としては充分だろう。


「グレイザック様!どうでしたか」

魔石を回収したのち、リディオノーレがグレイザック達の元にやってきた。

グレイザックは彼女の額を弾く。

「弓矢は要練習だな」

「ですよね。動く敵は難しいです」

リディオノーレはしゅんとする。


「魔力操作はどうでしたか?」

「まだ6個だけとは、全然だろうが」

そのグレイザックの言葉に団長含め、周囲にいた騎士たちが息を呑む。

ジャンドバルトも口には出さないが、顔がかなり驚いている。


あんな上手く操れる人なんて、グレイザック以外見たことがない。

それをリディオノーレが軽々とやってのけていたので、それだけで驚いていたのにグレイザックはそれでも充分ではないらしい。


「今は6個が限界です。………頑張ります」

リディオノーレは唇を引き結んだ。

「………だが、その魔力操作はお前の武器だ。今そこまで出来るなら充分だろう。………よくやった」

グレイザックの褒め言葉にリディオノーレは満面の笑顔になる。


「学院の天馬合戦で魔法を見せるのは、相手が魔法を放ってきたときだ。それ以外では極力見せるな。だから武器の腕を磨け」

「分かりました」

リディオノーレは頷いて、魔石を渡す。


「よくやった。この魔石を使って1つ面白いことを教えてやろう」

グレイザックはにやりと笑う。

リディオノーレは少し首を傾げる。何が出来るのだろうか。

「見るか?」

「見ます!是非!」

リディオノーレは嬉しそうに声を上げる。


「あ、でも最後まで魔獣狩りは見ていきましょう。おこぼれがあるかもしれませんし」

彼女はにこりと笑う。

「そうだな」

この師弟のやりとりに団長や騎士たちは苦笑いだ。

あまりにも常軌を逸した思考である。


「もしお気付きの点があれば、ご指導お願いします」

団長はそう言って、魔獣狩りの指揮を再開した。

ジャンドバルトは剣に覚えがあるようで、動きは悪くない。新人の割には強い方だということが、リディオノーレでも分かる。


「……案外、やりますね」

ジャンドバルトの動きを見て、バルデミアンが口を開いた。

「案外な」

グレイザックは答える。

思っていたより、周囲もよく見ていて指示もよく聞けている。


「グレイザック様にそう言われたら、ジャンドバルト様もかなり喜ぶと思いますよ」

フェルバールが言う。

「いい気にさせる必要はない。黙っておけ」

「………相変わらず手厳しいですね」

フェルバールが苦い顔をする。

「当たり前だ。俺は、あいつが次期領主の器かどうかを見ている」

なるほど。それなら仕方がない。

護衛騎士2人は納得する。


「とりあえず、問題なく終えれそうだな」

グレイザックは魔獣狩りの様子を見て呟く。

小型の魔獣しか出ていないので、余裕そうだ。


「よし、では、面白いものを見せてやろう」

先程リディオノーレが取ってきた鷹の魔石を2つ出すグレイザック。


彼はしゃがみ込み、それに倣って皆もしゃがむ。


「俺の杖、見たことあるな?」

グレイザックは彼女に尋ねる。

「あります。5つ埋めてあることを言ってるんですよね」

「そうだ」

「5つ!?」

フェルバールが驚きの声を上げる。

バルデミアンも驚いているが、声が出ていないだけ。


グレイザックがひと睨みして黙らす。


「俺の杖の調合は、1つずつ魔石を投入するとあんな感じになるんだ。だが、はじめから魔石をくっつけておけば1つだ」

「??魔石って、くっつくんですか」

「ああ、見ておけ」

グレイザックは答えると魔石を加熱し始めた。


「シュエンテ」

ぼこぼこと魔石が形を変え、ドロドロになっていく。

「溶かすのではなく、液状にする感じだ。そして、それを1つに今度は固形にしていく。型があればやりやすい」

グレイザックは右手で杖を操作しながら、左手で地面を掘り小さい穴をつくる。


その穴に液状化した魔石を流し込む。流し終えたら、今度は「フリンドレ」と固める呪文を唱えた。

すると、液体の魔石がその穴の形に固まる。


「うわぁ!」

リディオノーレは興奮して叫ぶ。

グレイザックはくっつけた魔石を無言で彼女に渡した。


彼女は色んな角度から見たり、触り心地など確認する。


「面白いです。何ですかこれ」

「繊細な魔力操作が出来る者にしか出来ない。加熱し過ぎると溶けてなくなる。溶けてなくならないよう液体状態を維持させることがコツだ」

グレイザックはそう言って、先程彼女が取ってきた残りの魔石を2つ渡す。


勿論、彼女は嬉々としてやり始める。

その様子を見て、護衛騎士の2人はため息をついた。


相変わらず規格外すぎる。

魔石を1つにくっつけるなどの方法があるとは知らなかった。

本当に何だそれは。

突っ込むのも馬鹿らしくなってきたので、護衛騎士の2人はもう無言である。

何を言われても恐らく2人には理解できない。


そして、成功しつつある彼女の魔力操作に感嘆する。

この師匠にこの弟子あり、と本当につくづく思う2人だった。





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