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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
内通者

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精霊師のことと手紙





「精霊師は何が違うか分かるか?」

「精霊と契約して、精霊魔法が使えるようになるんですよね?」

「そうだ。精霊魔法を何か知っているか?」

「いえ。何も知りません……」

しゅん、と項垂れるリディオノーレ。


「知らなくて当たり前だから気にしなくて良いですよ」

サムエルが口を挟んだ。


「精霊魔法は、言葉だ。呪文というよりは、精霊たちに話しかけ、精霊の力を借りるんだ。だから、短い言葉ではなく語りかける呪文なので長い」

リディオノーレは興味深そうに話を聞いている。

「そして、杖がなくても唱えられる」

「!」

リディオノーレは驚く。


精霊魔法に関しては公にされていないため、知る者が少ない。

何故グレイザックがここまで詳しいのかは、流石に命が惜しいので聞けないリディオノーレ。


「杖がなくてもいいのはいいですね」

「よく杖を破壊するお前にとってはもってこいだな」

グレイザックがにやりとする。


「そして、杖なしで魔法を行使できるということはそれだけで脅威であり畏怖の対象である。その対象に戦を起こそうとはしない」

「そういう意味の繁栄なのですか……」

「それに、国が一丸となってその精霊師を祀り上げる」

「うわーー……嫌ですね」

リディオノーレはすんごい嫌そうに答えた。


「お前はなりたいか?」

グレイザックが問う。

その質問にサムエルが目を見開いた。


「なりたくないですね。でも、精霊魔法は使いたいです」

リディオノーレが答えた。

「お前らしい答えだな」

グレイザックは、ふ、と笑った。


「グレイザック様は使いたくないですか?」

「勿論、使いたいさ。杖を出さなくていいなら誰にも気付かれず魔法を行使できるだろう」

「グレイザック様らしいですね」

リディオノーレも笑う。


「精霊師になれる条件はなんなんですか?」

リディオノーレは尋ねる。

「さあな。魔力が高いのは言わずもがならしいが」

「じゃあ、私もグレイザック様も可能性ありますね!」

リディオノーレは目をキラキラさせて発言した。


「確かにな。もしお前が精霊師になることがあったら教えてくれ」

「もちろんですよ!1番に言います!」

「必ずだ。約束してくれ」

急にグレイザックの声音が変わったので、リディオノーレは目を瞬いた。


「約束します。師匠に隠し事はしませんよ」

リディオノーレはそう答え、にこりと微笑んだ。


「じゃあ今日は魔力操作のおさらいといくか」





順調に予習も進み、執務の方では徐々にリディオノーレのやり方に慣れてきた人が増え、少しずつだが1人1人の能力が伸びてきた。


「これでいいですか」

「そうです!助かります」

リディオノーレは微笑む。

書類の書き方自体がなっていなかったし、分からない所は放置だったのがきちんと尋ねて理解してくれるようになった。


グレイザックの執務室に入るのは、やはり皆緊張するらしいが、リディオノーレに褒められるとグレイザックに褒められているようで嬉しいそうだ。


ただ、笑顔を漏らすとグレイザックに睨まれるので怖いのだが。


それでも自分の能力が伸びているのが分かると本人たちは嬉しいようで、ザファムートよりはリディオノーレに尋ねてくる。

リディオノーレの方が分かりやすいと評判らしい。


グレイザックは口を出さない。

口を出すのは、リディオノーレに向かって「休憩しろ」だの「もう休め」などの彼女を案じた言葉だけ。


彼女が本当に可愛いがられている様子を見て、書類を見せにやってくる者たちはよく驚く。

そして、くるくるとよく働き、よく気が付き、グレイザックや領主にも臆さず物を言う彼女に尊敬の念が集まっていて、株が急上昇している。


少し彼女に気がありそうな素振りをする男性たちもいるし、崇高しているような女性もいる。たまに羨望か嫉妬のような眼差しを向ける女性もいるが。


敵意ある者には厳しいグレイザックな為、サムエルが個人調査をし、問題が見つかればリディオノーレの部屋には近付かせない徹底ぶりである。

過保護を通り越しているような気がするが、サムエルは黙って従っている。


グレイザックがもし本当にいなくなれば、執務の大半を担うのは彼女であり、取り仕切るのも彼女となる。害意ある者は今の内に排除しておくに限る。


気がある素振りをする男性に対しては、彼らの機微などリディオノーレが気付くはずもないので放置しているが、度を越せば排除するつもりのグレイザックである。




そんなある日、アラウィリアから手紙が届いた。


「こっちがグレティアーナからだ。リディ宛てだな」

グレイザックは彼女に渡す。

「こっちもグレティアーナからだが、俺宛てだ。あとグレークのも」

リディオノーレは受け取ると嬉々として封を切る。

グレイザックは中身を読んだあと、顔を強張らせて彼女を見た。



「リディ、どういうことだ」

問いただすグレイザックの声音がかなり低かった。

「グレークも呼んでこい」

何でそんな不機嫌なのか分からないが、グレイザックが怒っているのは分かったので素直に従うリディオノーレだった。




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