89話 リック囲まれる 冒険者養成所69日目
ストア達が飲食スペースに来ると人々に囲まれた。
目当てはリックのようだ、年配の貴族からは10歳から15歳までの娘の話をされ、若い男性貴族からは国際情勢や戦った魔物などの話を持ち掛けられ、若い女性には踊りの事や他国の文化などの話題を持ち掛けられた。
「家には12歳の娘がいるのだがどうかね 会ってみないか?」
「今日は仲間と一緒に来ていて帰りも同じなので私的な話はすいませんが出来かねます」
娘の婿にしようとする中年貴族達に話を進ませないように話すリック。
「オークより強かったのか その新種のゴブリンは」
「個別に戦えばもちろんオークの方が強いのですが戦い方が違うので一概には言えません 最初の敵は木の上から攻撃してきましたよ」
「ゴブリンが上からとは」
リックの話を驚いたように聞く青年貴族達
「アエテルニタス王国のトーリアはどんな感じだった」(大陸東側の中央に位置する大国 トーリアはドナドナ川の河口付近にある人口50万の大都市)
「流石に大国の都でした寺院でも建物でも装飾が凄くて歴史を感じさせますし戦争継続中とは思えないほど活気がありました」
なるほどとうなづく青年貴族達、令嬢達は今の流行を聞いてきた。
「トーリアでは何が流行っていたの」
「僕が行った頃は七色貝のアクセサリーは人気でした、最近は七色パールが人気だとか」
「素敵ねえ 実物を見てみたいわ」
「行った者たちが買ってきてますから、そろそろ店頭に並ぶ頃ではないかと思います」
リックが順番に来るものを捌いている間に話が終わった青年貴族達はカトリーヌを褒めていたというかカトリーヌとソフィーに興味が移ったようで最後に踊りに誘われていた。
「君は踊りがうまかったね どこで覚えたの?」
「私はベロニーニに住んでますのでなにかと誘われることが多くてアドリーヌ先生に習いました」
「どおりで筋がいいわけだ」
「すべてアドリーヌ先生のおかげです」
「リック君には負けるかもしれないが僕と一緒に踊りませんか?」
「ええ 喜んで」
そうしてカトリーヌはたくましい貴族青年とホールへ行くと生真面目そうな青年貴族はソフィーを誘っていた。
「実はあんまりうまくないんだけど一緒に踊ってくれませんか?」
「クスクス」と笑うと「ええ 喜んで」と手を差し出した。
そしてソフィーもホールへ消えていった。
ストアは時折、振られる質問に無難に答えながら周りを観察していた。
「本当にかわいい顔してるのね」と騒ぐ令嬢達
「ありがとうございます」
「ふふ 反応もかわいいわね」
どう反応していのかわからないので感謝の言葉を言ったのに変に受けてしまって困るストア。
そうしてるうちに自信満々の美しいご令嬢を誘うリック、それを見て焦るストア。
誘って欲しい令嬢は誰なのか一生懸命ご令嬢たちの目をみつめると頬を染めているご令嬢をみつけすばやく前へ行き習った言葉を言うのだった。
「見目麗しいお嬢様 一曲踊っていただけませんか?」と手を差し出し結果を待つストア。
「ええ 喜んで」
ふくよかでかわいいご令嬢とホールへ行くストア。
「私は踊りを習ったばかりなので失礼があるかもしれませんがよろしくお願いします?」とストア
「クスクス 私もそんなに上手な方じゃないから気にしないで」
そんな感じで舞踏会は進んでいった。
リックと踊ったお嬢様は喜色満面でリックの虜になっているようだった。
ストアも好感触を得た、カトリーヌもソフィーも卒なくこなして、陛下が退場なされた後、4人はやっと集合することができた。
「引っ切り無しに誘われて疲れちゃった」とカトリーヌ
「私達って珍しいのかな?」とソフィー
「僕もこんなに忙しい舞踏会は初めてだったよ」
「これが普通じゃないんだね よかった」とストア
4人は誘われないうちにホールを抜け出すことにした。
その時クロードが奏でる甘くてせつないメロディーが流れ皆月を眺めている気分になっていた。
外に出ると退屈していた御者もやっと帰れると喜んでいた。
そして馬車はハンデル商会に着くとモリッツ支店長が出迎えてくれた。
「リック様 ご苦労様です 問題はありませんでしたか?」
「ありがとう モリッツ支店長の御蔭で滞りなく舞踏会を過ごすことができたよ」
「それはようございました」
「それから陛下からお褒めの言葉を賜ったよ」
「ハンデル家の名も高まったでしょう」
「そうだ お風呂の準備はしてる」
「もちろんです」
モリッツ支店長は部下に指示してリック達は風呂に入り着替えて帰る準備をする。
「今日はありがとう」
「いえいえ」
ストア達も礼を言い、馬車に乗り養成所まで帰った、馬車の中ではさすがに疲れて無言のままだった。
帰ったころには就寝の時間になっていた、御者にねぎらいの言葉をかけて養成所内に戻った。
「リック君、又踊れる機会があるかな?」とカトリーヌ
「また来週の放課後に踊れるじゃないか」
「それは今の間だけでしょ」
「踊りたいときには誘うさ ただ待ってて欲しいとは言わない」
「虫のいい話ね」
「今はまだ子供でいたいからね」
そんな話をしているときにストアは寝落ちしそうなソフィーを抱きかかえながら、自分もはやくベットに潜り込みたいと願うのだった。
こうして長い一日が終わったのだった。




