75話 アンティコルム国
正式名はアンティコルム マグリフィエリ・パトリアーレ。
400年前アンティコルムは大陸最後の未開拓地域であった。
西の砂漠の先の魔の森がつながっていると信じられていたのだが現在のグリーンフラワーから侵入できると発見した冒険者が探索した所、そこは魔の森ではなく居住可能な場所であると知られるようになる。
居住するにはまず上陸するための船が必要になり、道路もなく生活に必要な物すべての用意がいるのでわざわざ居住する者はいなかった、しかし魔の森の東端の大草原は魔の森の魔物達の死骸が溢れる宝の山だったのだ。
魔の森の王のキングウッドワームが定期的に暴れまわると魔の森から逃れて大草原への魔物の大移動が始まる、この世界のスタンピードである、スタンピードが終わり魔の森へ帰るまでに息絶えた魔物達の素材は魔の森へ侵入できない人族には宝の山であり、それを目的に冒険者達が続々とアンティコルムに来るようになった、そしてそれを買い取る為の商人がグリーンフラワーに店を出店するようになり町を形成しはじめ大草原への行くためのルートはいつしか道になり、そのルート上にも村のような物が形成された。
発展し始めたアンティコルムは各地で生きていけなくなった者が集まる格好の場所になり無法地帯と化していった。
無法地帯であるアンティコルムは魔物の素材こそ豊富ではあるが軍隊を送り込んで征服するほどの魅力もなかった、中央大陸から遠すぎるというのも問題であった。
そのせいかアンティコルムは自立独歩の気風を産み、各地の村の自営団は屈強であった。
しかし冒険者崩れの大徒党が各地の村を襲うようになると他の村との協力が必要になった。
徒党の首領のヴァルターは王を僭称し各村に圧力を加えてきた、それに対抗し選抜した自営団のリーダーが初代国王のジークベルト・アンティコルムである、オーガさえ一人で倒す実力と親分肌で少数精兵ながらヴァルターに対抗した。
その中に新たな薬草を求めてアンティコルムにやって来た戦う薬師の初代ドラッグ・マスターの姿もあった。
マスターは各地の人の入らない場所を探索しながらポーションなどを売って生計を立てていた、その時に拠点としていた村に初代国王となるジークベルト・アンティコルムがいて彼らを手伝うようになったのだった。
ヴァルターの兵は200人、一方のジークベルトは50人しかいなかった。
ヴァルターに襲われた各地の村を50人の集団で移動し挟撃して戦い続けた。
最終的にヴァルターは追い込まれ現在のベロニーニに籠城したのだがストアのご先祖のマスターは闇夜に城の中に忍び込み、警備兵を暗殺して門を開くとジークベルト達は城に侵入して突貫、深夜だったのも幸いしヴァルターをジークベルトは倒すことができた。
連合自営団で最後まで残ったのは35人であった、その後連合自営団は独立して各村からの援助で街道の治安を守ることになった、治安が安定すると噂を聞きつけた人達が増え、ジークベルト連合自営団の規模も大きくなり、村連合でジークベルトを王として国になることを宣言したのがアンティコルムの始まりであった、ただその中にはグリーンフラワーは入ってなかった、都市に近かったグリーンフラワーは繁栄していて自治防衛も自ら行えたので干渉されるのを嫌がり他国の商会が入り込み牛耳っていた影響もあった。
国に登録された人口は15000人程度であったという、約300年前の事であった。
貴族は村長一家・連合自営団の主要メンバーと決められたのだがストアのご先祖のマスターは念願の薬草マップ作製に集中したかったので拒否し、代わりにドラッグという家名を賜ったのだった。
「おい マスター 貴族になれよ」
「やなこった 俺はしたいことがあるんだ」
「薬ならココで作ればいいじゃないか」
「俺は新しい薬草を探すためにココに来たんだ 偉そうな大薬師様になるつもりはねえよ」
「なんだよ じゃあ 名前だけでももらっとけ」
「いらねえよ」
「う~ん わかりやすい名前がいいな ドラックでどうだ」
「そのままじゃねいか」
「そうだろ わかりやすいだろ」
「アンティコルムよりましか」
「おいおい」
こうしてドラッグ家の歴史が始まったのだった。




