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63話 チェーン みんなに稽古をつける(後編) 冒険者養成所 60日目

 これで試合は終わりと思っていたが突然、アレクシスがチェーンに話しかけた。



「チェーン師匠 私も今の全力で戦いたい、戦わせてください 一度も全力で戦ったことがないんです」



 ザワザワする仲間達、アレクシスは全力だと3M以上のジャンプができるパワーがあるのを知っているから驚くのも無理はなかった。



「どうしても戦いたいのかね」


「はい 踏ん切りをつける為にも戦いたいんです」


「よし わかった かかってきなさい」


「お願いします」



 お互い向き合い剣を構えて試合が始まるとチェーンはアレクシスの手首にいきなり剣を当てたのだ。



「バーン」


「エッ」とみんなもアレクシスも声を上げるのだった。


「わかったかね これが君の実力だ」


「そ そんな」


「君は私の初動を捉えきれていない だから パワーもスピードも関係ないのだよ」



 ガクッとうなだれるアレクシス。



「レベルが上がれば目も耳も第六感さえもレベルをあげないと その中の一番低いレベルになってしまうものなんだよ」



「チェーン師匠 わかりました 一からやり直すつもりで頑張ります」



 そういうとみんなから暖かい拍手が送られた。



「期待してるよ アレクシス君」



 そういうとチェーンはアレクシスに固い握手をするのだった。




 アレクシスとチェーンの戦いを見てウズウズが止まらなくなったリック、ストアの方を見るとニカッと笑っていた。



「チェーン師匠 私もお願いしたい」とリック



 チェーンもしょうがないかというような顔をしていた。



「リック君も全力で戦いたいんだね」


「今度 いつ師匠と戦えるかわかりませんから 今の全力でぶつかりたいんです」


「わかった 試合をしよう」



 そう言われるとリックはチェーンの前へ行き、剣を構えた、チェーンも構えると素早く後ろに下がるリック、アレクシスの二の舞だけは御免だったのだ。


 なかなか間合いに入れないリック、先程戦った時の対応を身体強化したところで対応できたかを考えると答えはノーと言わざる負えない、自分は身体強化したカラダにその他の能力がついていっていない、多分チェーン師匠は身体強化した時のレベルに対応できているから判断が的確なのだろう。


 ならば答えはひとつ。


 リックは今までにないスピードで踏み込み連打をすると素早く離れた。


 周りのみんなは動きについてこれず、ただ凄い空振りする音だけがその凄さを知る手がかりだった。


 その高速の踏み込みと剣技を今までと同じように避けるチェーン。


 アレクシスも落ち込んでいた気持ちも吹っ飛んで見入っていた。


 やはりだめかとリックは思った、今までのパターンだと同じようにカウンターを取られてしまうだろう、やったことのない変則の連撃で勝負するしかない、2・5・3・4・5という感じで変則的に攻めて、未知の連撃攻撃で速さに対応できなくなることに賭けるしかない。


 リックは再度踏み込み上段から振り下ろす、避けるチェーンの胴を狙いそれをかわされると素早く下がり、すぐに飛び込んで避けるチェーンに上下左右に5連撃すると最後の一撃がチェーンの剣にあたり、試合用の剣は折れて飛んで行った。



「キャー」



 さすがのチェーンも5連撃で避けることができなくなり剣で受けたのだった。



「これ以上 試合するとなると木刀でしないといけなくなるが 続けるかい」


「お願いします」



 お互い木刀に交換してお互い剣を構えて向き合う。


 女子達はザワザワして少し不安そうだ。


 リックは先程の攻撃で少し自信を持った、チェーン師匠も慣れていない攻撃ではカウンターを打ち込めない、しかし対応されない内に一気に決めようとリックは飛び込む。


 下段から中段そして下段そして上段を連撃を叩き込む、中段は剣で防がれたが構わず上段から打ち下ろして下がるとそのままチェーンも飛び込んでくる、予期しなかった事態に慌てるリック、そしてチェーンの剣がリックの手首を捉えて1本となった。


 連撃は変則的になったが下がる動作が同じだったのでそこを読まれてしまっていたのだった。



「手首は大丈夫かい」


「はい 打たれる前になんとか身体強化でおおうことができたので大丈夫です」


「それならいい しかしリック君にいうのもなんだがクリストファー君と同じことを言わなければならないとは」


「熱くなりすぎて基本を忘れてしまいました」


「自分に欠けているものがわかったかな」


「はい チェーン師匠 剣を続ける限り上を目指します」



 お互い近づいて固い握手をした、周りのみんなも拍手していた、ペギーだけは泣き崩れ、リリーが一生懸命に慰めていたのだった。


 カミラとリーナはリックの側に駆け寄ってくる


 リックは下がるとストアに言った。



「1本取ってくれ」


「頑張ってみるよ」



 そういうとチェーンの前まで歩く。



 リックはカミラとニーナに腕の状態を見られて、念のためにとヒールを2回かけられたのだった。


 

「ありがとう カミラ ニーナ 逆に元気になりそうだよ」


「ウフフ でも私達の治療費は高いわよ」とカミラ


「私 グリーンフラワーを案内してもらいたい」とニーナ



 会話しながらもリックはストアの試合が気になっていた。



 チェーンの前に着くと森で戦った時の表情で言った。



「俺の今の全力をみてもらうよ」


「わかった ストア かかってこい」



 お互い構えると静寂に包まれるかと思うと滑るように移動してストアがチェーンの胴を狙う、すばやくかわすチェーン、ストアはチェーンと等距離を維持しながら時折攻撃を仕掛けるがチェーンは手を出してこない。


 ストアは先の戦いとは別人のように仕掛ける。


 チェーンも前へ踏み込んだり、横に移動したりするがストアは自分との距離を崩さず攻撃をしてくる。


 チェーンはストアが上段から攻撃すると剣を受けながら横胴を狙うがすでにストアはそこにはいなかった。


 ストアのアシスト身体強化の足の動きをチェーンは初見で対応できなかった。

 

 ストアはチェーンの剣をギリギリでアシスト身体強化の動きでかわし、すぐさま飛び込んだ。


 そしてストアの胴切りがチェーンに決まった。



「バーン」


「あっ」「えっ」



 周りのみんなは剣が当たったような音がしたがどちらが勝ったかわからない。


 そしてしばらくするとチェーンが笑い出した。



「はっはっは 見事だストア リック君との試合で全部見られたみたいだな それに身体強化の使い方も独自に使いこなしているな」


「避けずに剣で受けていたからね」


「スゲーぞ ポーション」と仲間達から言われ。


「ストア君 かわいい」とよくわかっていない女子達に言われた。



 ストアはチェーンの飛び込める間合いの限界やスピードの限界をリックとの試合を見て把握したのだった。


 そしてストアが取った戦術は必殺の間合いの外から攻撃をしてチェーンの攻撃を誘って隙を作った所にカウンターの剣を打ち込むというものだった。


 ストアのアシスト身体強化の特長は細かい動きができる普通はパワーにまかせた攻撃になるのだが一瞬の動きが速いので細かいステップを使った身体強化した攻撃ができたのだった。


 初めてチェーンからちゃんとした1本を取ったストア、しかしこれは本当の実力ではない、肝心な初動を完全に捉えるという課題を吹っ飛ばして安全圏で戦ったにすぎないのだから。


 今度、会うときは身体強化を使ってもチェーンの間合いで1本を取りたいストアであった。


 

 「私は大丈夫だ」



 と言ってるのだが念のためにとニーナにヒールをかけられるチェーン、カミラは横で笑っていた。


 チェーンもストアの成長を心から喜んでいた、ストアの剣など幼き頃からすべて知っていて、いくらストアが成長しようと負ける気はしなかったのだ、それが今独自の方法を自分の物として自分から1本取ったのだ、私から離れて成長するストアを想像して胸が熱くなるチェーンであった。


 こうして稽古試合は終わったのだった。

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