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62話 チェーン みんなに稽古をつける(中編) 冒険者養成所 60日目

 リックとストアはチェーンの試合稽古が始まるとアップを始めていた、説明ばかりしていてアップする時間がなかったのだ。


 アップが終わり、ストアに語り掛けるリック。


「先に行かせてもらうよ」


「最後は嫌だな」とストア


「私がいるじゃない」とリタ


「エッ 試合するつもり」


「当たり前じゃないか」


「それじゃ 最後はリタ 頼んだよ」とリック


「任せといて 全力出すから」



 順番が決まってリックはチェーンのいる前に立つ、女性の歓声が最高潮になる。



「リック君 頑張って」の声が何度も聞こえた。


「よろしくお願いします」


「実力を試させてもらうよ」



 そう言ってお互い構えるとチェーンがいきなり飛び込み連撃をリックに仕掛ける、連撃が止まるとリックが連撃を繰り出す。


 どちらも一歩も引かず激しい音と共にお互いの攻防が繰り返される。


 これぞまさに絵に描いたような戦いだと周りの女子はリックをうっとりと眺める。


 男達もまさにザ・バトルの戦いに痺れていた。


 リックはマテウス師匠との稽古の日々を思い出していた。


 チェーンは攻撃を防がれると違う連撃を繰り出してくる、それを防ぐリックそしてリックもまた違う連撃を繰り出しては防がれるというお互いの技量を確かめ合うように戦うのだった。


 そしてカードを出し切ったリックの連撃が終わるとカウンターの剣が下から上に伸びてリックの手首に決まり、1本を取られた。



「おおおおお」


「きゃーーー」 



 チェーンはリックに微笑んで語り掛けた。



「ここまで技をモノにしているとは驚いたよ」


「やはりチェーン師匠は凄い 同じ攻撃は許してくれませんでした」


「わっはっは 私もそろそろネタ切れしそうだったんだよ」


「御冗談を できればもう1試合していただけませんか? いつもの戦い方でお願いしたいです」


「ふむ 君にはこちらの方がよかったと思ったんだが」


「ストアが勝てない 真の力を見たいのです」


「わかった もう1試合やろう」


「お願いします」



 そういうとお互い向かい合い剣を構えるがどちらも動かない。


 辺りは急に静けさに包まれる。


 リックは先読みスキルを発動して魔力を目に集めて初動を捉えようとチェーンを伺う、チェーンはまったく動かないように見えるが初動を見逃せばイキナリ打ち込んでくる、ストアの時もそうだった。


 チェーンは今までの攻撃が嘘のように滑るような攻撃を繰り出してきた、油を挿して音のしなくなった機械のように、そして正確無比な攻撃がリックの手首を襲う。


 リックは初動を捉え、見事にかわすがいつの間にかにリックの横に移動していたチェーンの剣が下から胴を狙ってくる、慌てて剣を下げて対応しようとすると胴を切る直前で剣を上にあげると袈裟懸けにリックの肩に叩きつけた。


 チェーンは手首に打ち込みを開始した時点で体の向きはそのままに踏み込んでリックに近づいていて、かわされたと同時に胴を狙いスライドさせて上に剣を持ち上げて叩きつけたのだ、その間ほとんど音がしなかった。


 リックは剣の動きだけを注意してチェーンの動きまでは捉える余裕がなかったのだった、それ故に手首狙いから胴狙いの意外性に惑わされて対応が後手になってしまい対応できずに1本を取られてしまった。


 流石はチェーン、先読みの先読みをして見事に1本を取ってしまった,こんな対応をされたら、ストアも勝てないはずだとリックは思った。



「もう少し対応できると思ったのですが」


「いや いい反応だったよ ただ目だけに頼りすぎてる」


「どうすれば上達できますか?」


「簡単にいえば目を閉じて稽古すればいいんだよ そうすれば違う風景が見えてくるはずだよ」


「わかりました ありがとうございました」



 しばらくの静寂の後に放心状態の観客から拍手が沸き起こった。



「リック君 カッコいい」


 

 男達は負けてもカッコいいのかよというような不機嫌顔をしたのだった。 



 次に出てきたのはストアだが少し恥ずかしそうだ。



「ストア 2か月ぶりだな 腕は上がったか?」


「最近 魔法の事ばかり考えていて 腕がなまってるかも」


「おいおい しっかりしないとリック君に負けてしまうぞ」


「わかったよ はやく試合しよう」


「いつでもいいぞ」


「お願いします」


「ストア君も頑張って」と一応女子の応援もあった。



 親子はお互い向き合い構え合う。


 バットを立てたように構えるチェーン、これはいつもストアがする構えだ、ストアはバットを寝かしたように構えている、しかしお互いの足幅は小さく、回れ右をするような感じになっていた。


 またしても静寂が訪れる、ストアはチェーンに一撃を与えた時の事を思い出していた。


 次の一撃を読ませない自然さ、今のチェーンの死角を見切る事はできないがあの時に見えていた死角のイメージを魔法を唱える時のようにイメージしながら、そこに剣を沈み込ませて斬る。


 チェーンはすっと前に出てそのまま打ち下ろす、すっと右に移動するストア、打ち下ろしたはずの剣がストアに

吸い込まれるように右に流れ胴を狙う、それを後ろに半歩下がりギリギリでかわすと同時に半歩踏み込み下から上へストアの剣がチェーンを襲うがチェーンは流れのままに半歩横に移動ながら反転してストアに向き合った。


 簡単に言うと歩いていると向き合っていた二人がぶつかる直前にお互いが横に避けて歩いて行った状態になったのだった。


 ここまでお互いの剣がぶつかり合わず、ほとんど音もしていない、つばを飲み込む音でさえ試合の邪魔をするような雰囲気に包まれる。


 死角を突いたつもりだったストアは自分はまだまだ甘いと感じた。


 チェーンは今度は打ち込まずにスッスッと間合いを詰め始めた、ストアはチェーンの間合いで戦うのを嫌いスッスッと移動して間合いから逃れようとすると更に踏み込みそのまま打ち込むチェーン、ストアはスッと右に避け下段から中段の胴切りを狙うが空振りさせられるストア、そしてその隙を突き左胴を決めたチェーン。


「バシーン」


 チェーンは踏み込んで打ったと見せかけて実は下っていたのだった、そして空振りしたストアの隙をついて胴切りを決めたのだった。


 ストアが反撃する時を読み切っていたチェーンの勝ちは揺るがなかった。


 そして結局、決まった時だけ音がした戦いとなった。


 女子達にはストアの強さは伝わらず二回空振りしただけと思われていた、この試合の内容を知り得たのはリックただ一人のみ。



「う~ん 結局は見切れなかった」


「結構いい線まで来てるぞ」


「当たらないと慰めにもならないよ」


「いつでも家に戻って稽古をすればいい」


「ありがとうございました」と話を終わらせるストア。


「パチパチパチ」と暖かい握手に包まれる親子であった。


「んっ これで全員かな?」


「リタが試合したいってさ」


「元気な女の子の名前だったな」



 ストアはリックとリタのいる場所まで行き。



「リタの番だよ」


「応援してくれよな」


「頑張って リタ」


「行ってくる」



 リタは元気いっぱいでチェーンの前に立つのだった。



「最後は君かな?」


「はい師匠 私は身体強化を使って戦うつもりです」


「身体強化ありの戦いは本当はフルプレートで戦わないと危険なのだがこの剣なら大丈夫だろう」


「それなら よろしくお願いします」


「いつでも かかってきなさい」



 チェーンとリタはお互い剣を構え向き合う。


 間合いは少し広めだがリタが後ろ足で蹴ると間合いに入り今までの中で一番速い打ち込みがチェーンを襲う。


「ブン」と音も強烈だ。



 周りにいる仲間もビックリだ。


 しかしチェーンも経験があるのでこれぐらいでは驚かず、冷静にかわした。


 リタも冷静にチェーンの間合いから素早く離れる。


 そしてまた飛び込むリタ、リタ得意の連撃をチェーンに当てようとするがやはり当たらない。



「速くてもダメなのか」とつぶやくリタ。


 リタは更に気合いを入れてチェーンに飛び込みすさまじいスピードの連撃をチェーンを追いかけまわすように続けた・


「ブブブンブン ブブブンブン ブンブブン ブブブンブン ブブブンブン ブンブブン」


それでもチェーンがかわし続けるとパタりと動きが止まるリタ、チェーンは軽く頭を叩いて1本となった。



「すげー リタ」「凄い リタ」の大合唱が起こり、しばらくすると大拍手が起こった。



 リタの株は急上昇になり凄い剣使いと思われるようになった。



「ありがとうございました」というとトボトボ歩きみんなの場所まで行くと倒れこんだ。


「リタ 大丈夫」


「大丈夫 でも 今すぐ眠りたい」



 ストアはブロッサムに声を掛けた。



「ブロッサム ちょっとこっちに来てくれ」



 ブロッサムとダコタがリタの前まで来るとストアはブロッサムにお願いした。



「ブロッサムのピュアヒールオールをかけてやってくれないか?」



 胸を叩き任せてのポーズをするブロッサム、そしてブロッサムはピュアヒールオールをかけた。


 全身を包み込まれたリタは気持ちよさそうだ。


 そしてリタはブロッサムを見て。


「ありがとう ブロッサム」と微笑んだ。


「用心のためにもう一度 かけてくれる」とお願いするストア。



 今度はゴリラの威嚇のポーズをするブロッサム、OKのようだ。


 そして再度、魔法は全身を包み込んだ、これで体力的には大丈夫だろうとストアは思った、ただし明日の筋肉痛までは責任を負えないと思ったのだった。

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