表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/170

40話 ハートビートの森(後編)  冒険者養成所 50日目

 リックは足留めをしながら後退していったのだが、ストア達が逃げたので何重にも囲まれていた、しかもストア達が逃げた方向が一番分厚くなっていた。


 戦ってみればブラックゴブリンは腕力はあるがそれほど強くはない、囲まれても毎日稽古している子分達の連携した攻撃の方がタチが悪かった、多分、隠れて襲うタイプの魔物なのでいるとわかれば強さは半減するのだろう。


 問題は時間が経つほど闇が深まっていき視界がふさがれていくこと、そして斬撃のような見えない攻撃だ、致命傷にはならなくても徐々に体力を奪っていく、かばえば魔力が減っていく、しかもさっきまで影すら見えなかったブラックゴブリンが大量に湧いてくる。


 リックはブラックゴブリンを倒しまくったが40匹以上倒してもブラックゴブリン達の戦意は落ちない。


 もう、リックの体は肌をさらしてる部分は細かい傷だらけで自分の血とゴブリンの血で髪の毛でさえ染まっていた。



「ハァハァ しつこいな君達 女性に嫌われるぞ」



 ゴブリンには通じない言葉で語りかけるリック。


 問答無用で襲い掛かるブラックゴブリン、弧軍奮闘する事、半時近く、そろそろ限界かと思った時にココとは違う場所が騒がしくなった。


(ストアだ やっと来てくれた 来てくれたんだ) 


 リックはうれしかった 来るとはわかっていたがうれしかった。


 ストアは包囲網に穴をあけようと戦う、リックもストアが来たので気力を振り絞って守勢から攻勢に転じてストアとの合流を目指した。


 ストアは戻る途中に心の中で大丈夫、大丈夫、大丈夫と唱え続けていた。


 もしリックが殺されていたら、俺が見殺しにしたことになる。


 ストアはリックを信じていた、リックもまたストアを信じていたのだ。


 瞬く間に20匹近いブラックゴブリンを倒すストアとリック、こうして二人は合流してお互いの背を預け合う。



「リック 先に行っててくれ 見えなくなったら 俺も逃げるよ」


「わかった 僕はもうゴブリンにはモテたくないよ 囲まれるなら美女がいい」


「愛の女神を疑った罰かもね」


「ハッハッハ」二人同時に笑った



 ストアはリックにポーションを渡す。



「じゃ 行くよ」


「あとで」



 そういうとリックは前の敵を斬っていく、ストアはリックを守るように戦い続けた。


 リックがブラックゴブリンの群れを抜けると足に身体強化の魔法をかけて走り出す。


 走りながらポーションを体中に塗っていく、そして半分はゴクゴクと飲み干した、傷が癒えていく、のどの渇きも癒えていった。


 あとはストアを信じて街の前で待つだけだ。




 ストアはリックが見えなくなると逃げるタイミングを計っていた。


 ブラックゴブリンの攻撃を見切り、ストアは見えない斬撃さえもらわなかった。


 しかも斬撃があるので同時攻撃を嫌がっているのがわかった。


 ブラックゴブリンは気配を消すから怖い敵なのであって、殺意や戦意をむき出しにすると怖さもなかった、暗さも森で過ごす事が多かったストアには苦にならなかった。


 ストアはいつものように同時攻撃をさせないように急に突進したり飛び込んでくるブラックゴブリンにカウンター攻撃で倒したりしてゴブリン達に主導権を渡さない、それはもう舞っているかのよう。


 次々に一方的に倒される仲間を見て、さすがのブラックゴブリンも攻撃するのをためらうようになった。


 そろそろ逃げるタイミングかとストアが考えたその時、足を急に穴の中に隠れていたブラックゴブリンの手につかまれた、その時に木の陰に隠れていた大きなブラックゴブリン?が現れストアに剣が襲う、ストアは足の身体強化を最大にしたが見えない斬撃をよけきれず、左腕の部分がパカッと開き骨がむき出しになり左腕から血が噴き出した、足をつかんでいたブラックゴブリンも巻き添えをくらい斬られて死んだ。


(穴から敵が出てくるなんて チッ 油断した)


 噴き出す血で集中力が切れたストアに後ろからも大きなブラックゴブリンがストアを襲う、なんとか見えない斬撃もかわすともう1匹の大きなブラックゴブリンが現れて、ストアに剣を叩きつける、なんとかかわしたが見えない斬撃はよけきれず、今度は足から血が噴き出した。


 大きなブラックゴブリンはストアと同じか少し大きいくらいだがやはり上半身特に腕だけが異様に大きい、普通のブラックゴブリンと同様にバランスの悪い体をしていた。


 ブラックゴブリンが戦うのをやめなかった理由は大きなブラックゴブリンに命令されていたからだった。


 しかし一向に倒せないブラックゴブリンに苛立ちを覚え、大きなブラックゴブリン達は自分たちで倒そうと飛び出してきたのだった。


 血が噴き出し立ち尽くすストア。


 恐怖のあまり茫然自失しているように見える。


 ブラックゴブリン達が人を襲った時に人が見せる姿そのものだった。


「グギャ グギャ ギャ ギャー 」


 周りのブラックゴブリンの歓声がこだまする


 3匹の大きなブラックゴブリンがウギャウギャと陽気に騒ぎながらストアを囲む、距離があるのはやはりお互いの斬撃のせいだろう。


 ストアはここで死んでしまうのか、助けが来るとしても、今の窮地を救えるはずもない。


 ストアは目をカッと開く。


 ストアはここで自分のスキル、リセットを使った、するとあれほど噴き出している血がピタッと止まった。


 ストアのスキルのリセットは異常な状態を元に戻すのだ、ストアはウルルの山林での色んな出来事で自分にはカラダが元に戻そうとする力があることを知った、どこまで異常な状態が回復するのかそれはストアにもわからない、しかし使った後、しばらくの間はいつもより元気がなくなっているのは確かなことだった。


 笑顔が驚いた顔になり憤怒の形相に変わると3匹は同時にストアに剣を振るおうとする、その時、ストアは呪文を唱えていた。



「水よ燃えよ 熱く熱く ホットウォーター」



 そう言いながら回転する、熱湯が大きいブラックゴブリンに降りかかり、悲鳴を上げる大きいブラックゴブリン達、バランスを崩した大きいブラックゴブリン達の隙をストアは見逃さなかった。


 ストアは足に身体強化の魔法をアシストの様に使い前に飛び出し加速して大きなブラックゴブリンの横っ腹を叩き斬るとそのまま後ろに回り込んでもう一度背中を斬る、最低限の魔力で最大限のチカラを引き出す。


 怒り心頭の大きなブラックゴブリン2匹がストアに剣を叩きつけようとする、しかし怒れば怒るほどストアには攻撃が通じなくなる、すべてを避けきりまた横っ腹を叩き斬り後ろに回り込んで斬る、瞬く間に大きなブラックゴブリン2匹を倒すと周りにいたブラックゴブリン達が逃げだした。


「グガー」と大きな奇声を上げて残った大きなブラックゴブリンがストアを襲う、しかし足捌きで華麗に攻撃をかわすと大きなブラックゴブリンを身体強化アシストした脚力と腕力でストアに真っ二つに斬られ血が噴き出して息絶えた。


 シーンとする森、辺りはブラックゴブリンの死体であふれている。


 辺りにはなんの気配もしない。


 しばらくしてストアの目に生気が戻ると、



「ふう あっそういえば ゴブリンの耳と魔石を持って帰らなくちゃ」



とゴブリンの討伐部位と魔石を集めるストア、結局集めるのに半時はかかってしまった。


 そして意気揚々とストアは街へ帰ったのだった。


 帰る途中に水魔法で水を張り付けてゴシゴシこすって血を落としていった、街に着くころにはきれいな顔になるストア。


 街の前ではリックとリタが祈るような気持ちでストアが帰って来るのを待っていた。


 リックが街に戻って一時が過ぎようとしていた頃、ストアは戻ってきた。


 しかも綺麗な顔をして、リックは血まみれなのに・・・



「やっと帰って来れた」



 リックとリタがストアを抱きしめる。



「時間かかりすぎだ」


「そうだよ」


「ごめんね 討伐部位と魔石を集めるのに手間取っちゃった」



 放心状態になるリックとリタ。



「だって 今日の俺は獲物なしだったからちょうどいいと思って」


「ストア 何考えてるんだよ」


「囲まれてたんだろ」


「あれから大きなブラックゴブリンが3匹出てきて倒したら みんな逃げちゃった」



 目が点になるリックとリタ。



「最初 ヤバかったんだけど なんとか倒せたよ」


「もういい 無事ならそれでよかったよ」


「そうそう」


「オリアンティは大丈夫?」


「ああ 処置が適切だったって しばらく安静にしてればいいらしい」


「そう よかった よかった」



 そのあとストアだけは冒険者ギルドに行き、換金しようとしたら、大騒ぎになった。


 ギルド員はギルドマスターを呼びに行った。



「なんだこれは」



 黒い耳が山の様に積まれている、大きい物もあった。



「北の森で狩りをしてたら黒いゴブリンが襲ってきたので討伐しました」


「君はどこに住んでいる?」


「冒険者養成所にいます」


「名前は」


「ストア・ドラッグです」


「名字持ちか」


「はい それが何か?」


「いや いい 戦った詳しい場所を教えてくれ 今日はもう遅いから明日もう1度ここに来てくれ」


「わかりました」ストアは森のちょうど真ん中ぐらいだと教えた。



 他のギルド員が小声でギルドマスターの耳元でささやく。



「それは本当か?」


「君はハンデル家のご子息と友達なのか?」


「ハンデル? リックとは今日一緒に狩りに行きました 討伐部位はリックの分も入ってます」


「そう そうでしたか こちらから連絡しますので時間が空いたら、お知らせください」



 急に態度が変わって不思議に思うストア。



「わかりました 冒険者養成所で連絡を待っています」



 こうして冒険者ギルドをあとにしたストアは冒険者養成所に帰ったのだった。


 色々あった大変な休日は過ぎたのであった。


 次の日の朝、確認に行ったギルド職員の目には黒いゴブリン達の死屍累々の光景が目に入ったのだった。



「なんだこの黒いゴブリンは これが養成所で訓練している子供達がやったことなのか・・・」



 騒動が騒動を呼ぶのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
投票お願いします 小説家になろう 勝手にランキング  
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ