28話 アレクシスとリタ 冒険者養成所 31日目
ストアが水魔法に四苦八苦している頃、アレクシスとリタは身体強化の教室にいた、そこに憂鬱な顔をしたリックが来た。
人ごみの後ろから教官の顔を眺めるリック、目線を下ろすと自分の目の前にはリタがいた。
リックとしたことがやっと女性の存在に気付いたのだ。
女豹のような美しさがあるリタに声を掛けた
「やぁ リタ」
「リックじゃないか あんたも身体強化なのか?」
「まぁね 先週からだよ」
「みんな 聞いてくれ」と教官の説明が始まった
「相手がいないなら教室の外で待ってる」とリック
「よろしくな リック」
そういうとリックは外で待っていた、しばらくするとリタが出てきた。
「おまたせ リック」
その後ろにはアレクシスがいた。
「おーい アレクシス」
「おお リック ここにいたのか」
「この子は芝居の時とストアと勝負してた」
「リタだよ よろしく」
「おお 元気だな 俺はアレクシスだ」
「お互い頑張ろうな」
お互いのこぶしをぶつけ合う二人、もしかしたら気が合うのかもしれない。
「リックはどこまでできるようになったのさ」
「教官が見せた技は全部できてるよ」
「ふえ~ あの木刀殴りもか」驚くリタ
「ああ ストアはさっさと試験を受けて、次に行ったよ」
「ジャンプもすごいぜ」
「適切な場所に魔力を集中できれば簡単さ」
「そんなもんか とりあえず外に出るか」
三人は外に出て行ったそして木陰にたどり着くとリックが説明した。
「まずは魔力をまとっているかを確認する金づち検査だよ ちゃんとみていてくれ」
リックは金づちを貸してもらい、腕を叩き始めた、そしてだんだん強くしていく。
「痛い 今のがまとってない状態だ」
リックは少し気合いを入れて、同じように腕を金づちで叩いていく、痛そうに思えるぐらい叩いても何も言わないリック。
「こんな風に違いがわかれば、まとっていると確認できるよ」
そういって金づちを返すリック、アレクシスとリタは金づちで叩き始める。
「痛い」「いてっ」それぞれ痛くなる力加減を確認する.
「今度は魔力をまとったかんじをイメージしてから叩いてくれ」
真剣な顔になり腕を叩き始める二人
「タンタンタン 痛い」
リタはすぐに叩くのをやめた、アレクシスは平気みたいだまた叩いてる
「もういいよ アレクシス」
「おっ そうか 全然痛くねえ」
「リタはうまくまとってないな」
「そうなのか・・・」
「アレクシスはできてるみたいだ」
「おう これでいいのか?」
リックは少し悩んだ、自分たちはライトの魔法で経験を積んでいたけど、二人は何もかも初めてだ。
「リタは同じようにして確認していてくれ アレクシスは俺が叩くから魔力でその部分をまとってくれ」
「わかった」二人同時に言った
アレクシスの前に立つリック。
「胸・腹・右モモ・左モモの順番で殴るから」
「おう いつでも こいや」
胸を普通に殴るリック、続いて腹・右モモ・左モモと叩いた。
「全然 平気だぜ」
「もう一度行くよ」と言って殴り続けるリック
「平気 平気」
「もう一度行くよ」と言って更に殴り続けるとアレクシスがふらつき始めた。
「どうした アレクシス」
「いや なんか ふらついてきて」
「痛くはないんだな」
「ああ 痛くはなかった」
「これは魔力切れだな」
「魔力切れ 俺がか」
「魔力は多いのか?」
「放出系ができれば最高の魔法使いになれると言われたぜ」
「ということは無駄遣いだな」
「無駄遣い?」
「僕とストアが練習で叩き合ってるだろ」
「あれか防御しない叩き合い」
「あれは叩く場所を身体強化でその部分だけまとわせる防御の訓練だったんだよ」
「そうなのか」
「アレクシスは部分ではなく全体を覆って、更に必要以上の魔力を使っているのかもしれない 今のままでも魔力があるから合格はできるよ」
「合格できてもなぁ 短い時間しか使えないのは困るなぁ」
「それから アレクシスは今日はもう訓練しない方がいいよ」
「わかった」
リタも最初の訓練をしているがまとうイメージができてないみたいだった。
「う~ん」と悩むリック
教えてもいいのだが、光の剣ごっこがばれるのが恥ずかしかったのだ。
「う~ん」と更に悩むリック
そうだ、ドラッグ家の秘伝の練習法だと言って誤魔化そう、他言無用にすればなおいい。
考えがまとまるとリックは二人に言ったのだった。
「食後に落ち着いたら、僕の部屋に来てくれ、身体強化の内密の話があるから」
変な顔をする二人、それでも参考になるのならと同意した二人だった。
それからは身体強化の可能性について語りあったのだった。
特にリタは目を輝かせていた、それは正に狩人にとっての理想を具現化したものだったからだ。
夕食後に二人は部屋を訪ねてきた。
ストアには理由を話して納得してもらっていた。
アレクシスが最初に来てしばらくするとリタがリックの部屋に来た。
「これから言うことはストア家に伝わる身体強化の練習方法だ 君達はストアと仲がいいので特別に教えることを許可してくれたんだよ」
真剣に話を聞くアレクシスとリタ。
「ストア 例の練習方法を見せてくれないか」
うなづくとストアはライトの魔法を使った、そして剣を持つと剣が光った。
「おお」二人はビックリした。
ビックリしているうちに光る部分が腕に映り右足左足と次々光る場所が変わっていく
「なんだ これ」
「色んな場所が光ってる」
「これがストア家に伝わるライト身体強化訓練法だよ 光ることで魔力を使っている場所がわかるんだよ」
「うんうん」 見事に首を縦に振る二人
「今度は剣での練習法だ ストア いつもの頼むよ」
うなづくとリックに対面するストア
「じゃ 行くよ」
「いつでも いいよ」
そうするとスピード重視でストアの腕を剣であてるリック、ストアはあたる前にその部分を光らせる、リックとストアはお互いあてながら、あてようとする部分を光らせる。
「え~~~~~~」
「すげえ」
リックは剣を下ろすと言った。
「最終的にはこういう感じになると」
放心したみたいな二人
「昼は身体強化で同じことをして夜はライトの魔法でスピード重視の訓練を繰り返していたんだよ」
「なるほど」
「さすがにストア家の訓練法だ」
複雑な顔をするストア。
リックは真剣な顔をして、
「ストア家の秘伝だから絶対秘密だよ」
うなづく二人。
ストアは眉間にしわをよせた。
「まずは光の剣の練習をしてまとわせる感覚をつかもう」
アレクシスとリタの二人はライトの魔法を光の剣にしようと練習した。
リタは光の剣にならない、アレクシスは時々光人間になった。
二人はお互いの欠点がまるわかりになった。
「こういうことだったんだ」
「俺 無駄づかいしまくりだ」
「僕でも光の剣は3日ぐらいかかったよ でも できるようになると部分を光らせられるようになるよ」
うなづく二人。
それからは二人は暗い場所を探して光の剣の訓練を始めて、しばらくするとできるようになった。
ストアはみんなが真面目に取り組む姿を見て、もしかするとこれはドラッグ家の秘伝だったのかもしれないと逆に思ってしまう、本当に素直なストアだった。
この時から光の剣ごっこはドラッグ家の秘伝となったのであった。
誰も気付いてはいないのだが、この日からアレクシスは過剰に目を血走ることはなくなっていた。
どうやら過剰魔力のせいだったようである。
そしてしばらくするとモテ期が到来するのであった。




