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化け猫ではなく猫又でなければいけない大事な理由

「とにかく、今は、アイツの力が必要。嘆願書に協力願いたい」


朱雀は、頭を深々と下げた。華菜の前に差し出された嘆願書には、数多くの神の名が記されていた。端には妖怪の名もちらほら散見できた。


「わらわでもいいのか?」


華菜は、恐る恐る訊ねた。


「もちろんだ、ええと、式神からおまいさんの名前は聞いている…。待てよ、確か…名前は」


あごを撫でながら華菜の顔をじっと朱雀は見つめる。


唸ったまま、長い時が流れる。


「月千代じゃ」


しびれをきらした華菜が自ら名乗る。朱雀は、左手の握り拳を右の手のひらで大きく弾ませた後、華菜を指差した。


「それだ!思いだした、月ちょんだ!」


「月千代じゃ」


「じゃ、早速だが月ちょん。ここに署名してくれ」


華菜は、呆れたように溜め息をつくと、もう訂正することはなかった。そして、朱雀から筆を受け取ると嘆願書に署名をした。


「ありがとう、月ちょん。これでアイツの謹慎が解けるだろう。で、もう一つついでに頼みがある」


「なんじゃ」


「アイツが人間に化けてこっちで動くときは、おじと姪ということで行動してくれ。天界に届けを出しておく。そうすれば、おまいさんもこっちで探し物をする際、都合がいいだろう」


「どういうことじゃ?」


「まだまだ、妖怪の類いは、この世にたくさんいる。天界のお墨付きがありゃ、そう簡単には手出ししてこない。閻魔に睨まれれば抹殺だからな」


「なるほど」

「あ、いかん。もう戻らないとリンたちの世話があるでな、では」


華菜は、朱雀に別れを告げ、飛ぶように駆けていく。


「あー、ええと・・・。まだ、大事なこと言おうとしたんだが。いっちまったか・・・。まあ、いいか」


朱雀は、その場に座り込むと頭をかきながら、狗神を見た。


「しかし、まいった、猫よりあっちの方が大事だったのに・・・」


朱雀は、首をうなだれた。


「でも、お頭。年端もいかないガキ一匹。すぐ、捕まえられますぜ」


「ガキ言うな、仮にも閻魔様の娘だぞ。取り逃がしといてよくいうぜ。華閻様はよりによって気配を消すこと覚えちまった。この鬼ごっこ、長くならなきゃいいけどな・・・」


朱雀の予言は的中してしまう。朱雀と華閻。100年以上長きにわたる鬼ごっこの幕開けであった。



「ただいま戻りました」


華菜が家の玄関を開けると、中は静まり返っていた。


履き物は、リンとその母親の分が確かに揃えられており、居ることが伺われた。


ーーーにしても、暗すぎる。まだ、日は暮れてはいないとはいえ、夕焼けが染みるほどに日は傾いている。


中の灯りを点けてもよさそうなものである。


それに、何やら家のなかに漂う陰湿なまでの妖気。


華菜は、慎重に履き物を脱ぐと抜き足で玄関から家の中に上がった。


研ぎ澄ました足の指先に神経を張り巡らしながら、廊下を一歩、また一歩と進んでいく。


僅かに(きし)む音が息を潜める魔物に居場所を知らせる手がかりになる。華菜は、緊張した。


華菜は、廊下がやけに長く感じた。


やがて、一つの部屋の前で華菜の足が止まった。

障子にうっすら映る人影。中からは、甲高い笑い声のようなものが聞こえる。


華菜は、慎重に障子を滑らした。


「うふふふ、あら、華菜さんおかえりなさい」


畳の上で踊るようにはしゃぐリンの母親。


ーーーと、華菜を威圧するようなもう一つの目線。どこか?華菜は、辺りを見回す。


「華菜さん、怖い顔してどうかしまして?それより、リンったら、あんなとこに登って…。おかしいったらありゃしないわ…。うふふふ」


ロウソクの灯りをリンの母親がかざす。天井に張り付く、鬼の形相のリンが浮かび上がった。


リンは、まばたき一つしない。じっと華菜を睨んでいる。真一文字に結ばれた口からは何も発しない。


ーーーただ、髪の毛だけが異様に伸び、意思を持っているかのようにうねりをあげる。


「見て見て、華菜さん。おかしいでしょ、リンったら」


リンの母親は、この世でこんな楽しいことはないと言わんばかりに笑い転げる。



「リン!降りてくるのじゃ」


「イヤダ…」


抑揚のないリンの声が返ってくる。

「何をしておるのだ。早よう、せい」


「イヤダ…。オマエヲコロシテワタシモシヌノダ」


「馬鹿なことを申すな、リン早まるでない。何が原因じゃ」


華菜は、必死でリンを説得しようと試みた。


その間もリンの母親は、「華菜さんまで面白いことをおっしゃる」と言いながら家中をはしゃぎ回る。

リンは、更に顔を強張らせた。


「オマエダ、オマエダ、オマエダ!ワタシガコウナッタノハオマエのセイダ!オマエハ、ワタシカラスベテヲウバッタ。イエモチチモザイサンモ…。ソシテ、イチバンタイセツナ兄上サエモ、オマエハ、ウバッテイッタ」


華菜は、無言で首を振る。


リン。そなたは誤解し、騙されておるのだ。仮にも義理の兄と妹。そなたの考えているような不埒な関係では決してない」


リンは、侮蔑の笑みをたたえた。


「何がおかしいのだ?」


華菜は、真面目に答えたはずなのにリンに侮蔑されたことに腹が立った。


「岩舟ノ血ヲヒイテイルト本気デオモウテオルノカ、メデタイ奴」


「違うのか…」


華菜は、身を乗りだし、リンに問いかけた。弥助に惹かれる心に嘘はつけない。


ーーーと、華菜は、不意に辺りがすっと明るくなった気がした。


気のせいだろうか?


いや、日は落ちたのに、うすぼんやり、青白く家の中が、浮き出したようにはっきり見える。


ロウソクやガス灯の灯りとは違う。


「気ニナルカ。コレガ最近ハヤリノ異空間トイウヤツダ。ドンナニアバレマワロウト外ノモノニハキヅカレナイ」


「貴様はリンではないのか?一体何者」


「リンノ憎シミヲカテニ寄生スル鬼髪トイウ妖怪」


「ならば、リンから離れよ」


「オマエヲ殺セバ、リンノ憎シミハ、消エル…。オレハ、リンカラ離レル。ソウスレバ、リンハ、精気ヲ全テウシナイ、憔悴(しょうすい)シキッテ死ヌ」


「なるほど、わらわが死ねば、どのみち、リンの命は尽きると言うのだな…」

華菜の姿が見るまに猫又の月千代に戻っていく。

青白い世界に一際映える、真っ白な柔らかい毛。一瞬、全身逆立つように震わすと、元の場所に収まるように静かに眠りにつく。


二つの頭に乗っかった耳がピッと跳ねる。


黄金の瞳は、鬼髪のとりついたリンを天井ごと睨みつける。


幾又に分かれた尾は、器用に互いの邪魔にならぬよう揺れる。


月千代は、左足を一歩引き、低い体勢で構えをとった。


リンの髪が波をうち、月千代目掛けて降り注ぐ。

毛先が針のように鋭く硬い。激しく降り注ぐ髪は、月千代の後追いをしながら、畳や床を貫いていく。


月千代は、攻撃を掻い潜りながら、リンの懐まで飛び込んだ。


妖気を纏った拳をリンの目の前につきだして、初めてリンが人間であることに気づき、ハッとして拳を引っ込める。


リンは、それを見逃さない。月千代の手足、胴、首を髪で締め上げると、体重を乗せ、膝蹴りのまま、畳の上に叩きつけた。


リンは、尚も攻撃を続ける。月千代の腹部に激しい蹴りをくわえ、月千代の抵抗と意識を奪おうとする。


月千代は、蹴るために飛び上がったリンの髪を引き、畳に寝かされた自らの頭上にリンを放り投げた。


襖を破り、リンは、隣の部屋へ転がっていく。


月千代の体にまとわりつくリンの髪が離れる。


月千代は、急いで起き上がると低く戦闘の構えをとった。


投げられたリンもそれに習うように同じく低い体勢で構える。


畳をかすらせながら、左右前後に互いの間合いを(はか)る。


ーーーと、月千代の目にリンの後ろ姿を映す姿見が飛び込んできた。


リンの長い髪が隠すうなじ辺りに妖しく光る目玉が二つ。


月千代は、それが鬼髪の正体だと直感した。


敵の正体がわかったとしても一筋縄にはいかない。あの長い髪が曲者(くせもの)だ。鬼髪を引き剥がそうと下手に月千代が近づけば、たちまちあの毛先で体を貫かれてしまう。


妙案はないものか…。月千代は、思考したため、動きが止まった。


リンは、見逃さない。燃え盛る炎の如く髪を揺らめきながら月千代の元へ伸ばす。


月千代は、目の前に迫る髪を避けきったつもりでいたが、足元から忍びよってきたリンの髪には気付かず足を捕られてしまった。



勢いよく倒された月千代は、引きずられまいと爪を畳にたて、くいしばる。


リンは、自分の髪を両手で掴み、尚も力任せに引きよせようと月千代を引く。


一直線に張りつめた髪。


低い体勢で尚もリンが力を込めた時、黒い塊が天井から降り注ぐ。


髪が切れ、月千代とリンが離れた。リンは、反動で襖を突き破り、転がると、壁にぶつかり、止まった。


「ソウダ、怨メ…。私ヲ怨メ。オマエヲ憎ム、私ヲ怨メ」


リンは立ち上がりながら、嬉しそうに月千代を見る。


「ふ…」


溜め息まじりに首を振り、月千代が一つ笑いを吐き出した。


それをみたリンは、怪訝な顔つきになる。リンを攻撃できないもどかしさでさぞ、月千代は、悔しがるだろう、鬼髪を憎がるだろうと思ったからだ。


まして、笑いなど想定外だ。


「なに、他愛もないことじゃ。自分自身のな…」


「?」


「神でもない限り、誰かを恨むという気持ちをもたないことはできまいな…。現にわらわは、鬼髪、貴様が憎い。妬み、(そし)り、人が人を憎み、恨む気持ちは確かに止められまい。わらわは、それでもいいと思う…」


「ハハハ、イサギヨイナ、化ケ猫ヨ。案外気ガアウヤモシレヌナ」


高らかにリンは、笑う。手のうちようがなくなり、月千代が途方に暮れたと思ったからだ。


「ーーー人間とは、面白いものでな、恨みや憎しみを乗り越えようとするのじゃ。それが知恵という奴じゃ。一人でダメなら二人で…。それでもダメなら三人…。それでもダメなら…と皆で知恵を搾る。時に恨みに寄り添い、時に恨みを踏み崩し、愛し、笑いに変えさえする…。そうやって、恨む気持ちを人は長い時を経て乗り越えていく」


「我ラノヨウニ相手ヲケセバスムコト。弱イイキモノヨ」


「たとえ、目の前の相手を消したところで恨みの気持ちは消えん。だから、人は乗り越えようとするのじゃ。人とは弱い者!だから、悩み、苦しみ、恨み、謗り、憎むのだ。しかし、その過ちに気づき、人間であることを取り戻そうとするのだ!!だから、人なのだ。わらわは、化け猫ではない。猫又!人の魂を宿した猫又じゃ!!」


月千代は、自分の目的をはっきり示すようにあらんかぎりの声で叫んだ。


「化ケ猫ガイッパシニ悟ッタツモリカ?」


リンの髪が稲藁を揺らすような音をたて、ざわつく。


「化け猫ではない。猫又…。それが大事なことだと今、わらわは、知った。お前に気づかされた。厚く礼を言うぞ」


月千代は、身構えながらニヤリと笑う。

「シネ!」


リンの波打つ髪が、鋭い刃物のように月千代目掛けて伸びていく。


月千代は、黒扇丸を楯に押し返していく。


「人の負の気持ち。すなわち病なり。病を増幅するモノ…。人に非ず!それ、すなわち・・・」


月千代は、リンを壁際まで追い詰める。


「ーーー妖怪なり!!」


月千代の言葉を合図に黒扇丸がリンの頭を包み込む。露になったうなじめがけ、月千代は鋭い爪を振り下ろす。



リンが両膝をつき、うつぶせに倒れる。首から下げたロザリオの鎖がちぎれ、リンの側に転がった。血しぶき。月千代の爪が捕らえたものが露払いした指から畳に転がる。


月千代の爪は、鬼髪をとらえ、仕留めたのだった。異空間が解け、本当の暗闇が広がる。


リンの首には、傷はない。


月千代は、元の華菜の姿に戻った。


月千代は、リンの側にあった銀色のロザリオを拾いあげた。リンの誕生日に兄の弥助がプレゼントしたものだった。


目が覚めたら、リンに返そう…。


月千代は、変な物音と匂いに気づき、廊下へ飛び出した。


紅蓮の炎が舞い上がり、リンの母がそれをいとおしげに見つめていた。


すでに屋敷の大半は、炎と煙にまかれている。


「あら、華菜さん。いらしたの?見て、見てこんな綺麗な灯り。眩しくて夢のよう…」


華菜を見つけたリンの母は、楽しげにはしゃぐ。


連れて逃げなければ。


月千代は、とっさに思った。しかし、リンの母は、駄々をこねる子供のように逃げ惑う。


月千代は、ようやくリンの母を捕まえると、鳩尾(みぞおち)を「ごめん」と一言断り、軽く突き、黙らせた。リンの母を肩に乗せると、月千代は、中で気を失っているリンを助けに向かった。


ーーが、倒れているはずの場所にリンはいない。

崩れてくる木材を掻き分け、煙に咳き込みながら、リンの名を呼び続ける。


目が涙ににじみ、体が熱さを増す。限界。これ以上ここに留まれば、リンの母も危ない。


もう一度、中庭に降り立った時だった。一つ隣の部屋に人影を見る。


とりあえず、中庭にリンの母を寝かせ、月千代は、人影を見た部屋に乗り込む。


リンがいた。月千代は、リンの腕を掴み、外へ連れ出そうとした。


「イヤ!邪魔をしないで。華菜さん、私はもう生きていたくなどないの。兄のいないこの世界など…」

リンは、華菜の手を振りほどく。


「生きるのだ。辛くても生きねばならぬ」


月千代は、リンに近づこうとした。


「来ないで!!」


リンは、ハサミを月千代に向ける。


「馬鹿な真似はよすのだ、リン」


月千代は、リンににじりよる。その間も屋敷は、炎に呑まれながら、原形を崩していく。


「リン!こんなところにいたの、探していたのよ。見せたいものがあるの、綺麗な灯り…」


意識を取り戻した母までが部屋になだれ込んで来てしまった。月千代は、母に注意を逸らしてしまった。


ーーーリンは、母に突進する。月千代は、出遅れる。


「お母さま、私と死んで!」


炎の鳴り響く中で、リンの声がはっきりと月千代の耳に届く。


に合わない。


月千代は、咄嗟に二人の間に入った。


月千代は、時が止まったように感じた。家中を舐め尽くす業火の音も風のうなり声も、リンや母の声も…。全く入ってこない。


月千代は、前に倒れる。意識が遠いところへ飛んでいく。色のない真っ白な世界。あとからくる洪水のような暗い闇。


華菜の体から月千代が浮かび上がる。その体は、全く自分の意思では動かせない。


リンの母が崩れ、重なるようにリンも沈んでいく。


救わねば…。


月千代がそう思った時、自分の御霊が足から消えていくことに気付く。

御霊が消えてしまえば転生はあり得ない。それはすなわち、二度と田助と巡り会えないことを意味する。


しまった…。


なすがまま、体が胸より上だけになる。


ーーと、触ることのできない月千代の御霊に誰かが後ろから抱きついた。


「やれやれ、間に合った」


そう男の声がすると、月千代は、空高くまで舞い上がり、抱きつかれたまま、あの山の丘まで連れていかれた。


月千代の御霊は、見る間に元通りの姿に戻った。


男は、朱雀であった。


「危ないから戻るなって言おうとしたんだが…」


「知っておったら、なぜもっと早く止めないのだ」


月千代は、呆れたように朱雀の顔を見た。


「すぐ追いかけたんだが、途中で急に腹の具合が悪くなって。まあ、おまいさんに死相は出てないから用事が済んでからでも間に合うだろうと踏んだのさ」


朱雀は、のんびり欠伸をしながら答えた。


「しかし、リンたちが…」

月千代は、目線を落とす。朱雀がしっかりしていればリンたちも助かったかもしれない、そう思ったからだ。


「猫ちゃんや、それは断じてねえ。俺達、神は運命までは変えられねえ。助かる命は助かるなりの運命をもっている」


朱雀は、月千代の心を読んで、答えた。


「しかし…」


「御霊までは死んじゃいねえ。おまいさんはよくやった」


朱雀は、月千代の肩に手をやった。月千代の肉体が戻る。


土の匂い。草の匂い。揺れる木々の音。体を駆け抜ける風。全てを感じ取れる。


「運命とはかように変えられぬものなのか?」


月千代は、肩を震わせ、朱雀に問いかけた。


「…」


朱雀は、ただ黙ったまま腕組みをして目を閉じた。長すぎる沈黙が時だけを(いたずら)に進める。


「おーい、お頭」


ーーそこへ、場違いな調子で狗神が木々の枝を飛び飛びやってきた。


「何だ、猫も一緒か…。どうした神妙な顔つきで」


狗神は、月千代の心など気遣う素振りも見せず、月千代の顔をのぞきこんだ。


「人の気も知らないで…。向こうへいっておれ」


月千代は、狗神を睨みつけた。


「おー怖い。さては、お頭に振られたな…。無理もない。神の中でも特に位の高いお方だからな」


「黙っておれ!わらわの愛すべき者、それは田助ただ一人。」


この時、月千代は、恋心を抱かれない神通力を発するようになった。ただ、神には通じる力まではないようだ。


「田助。人間か?」


「そうじゃ。何が悪い」


狗神の意外そうな口ぶりに月千代が反論する。


「ちょっと待て…。田助と今、言ったな…」


朱雀が二人の間に割って入る。


「そうじゃ、何か?」


「その御霊…。たしか、おまいさんのいた屋敷の息子。弥助ではないのか」


「なんと…」


月千代は、愕然とした。近くにいてわからなかったとは。愚かすぎる、こんなことならしっかり、サトリと修行をしておくべきだった。


月千代は、呆然と天を仰いだ。


「人間なんて、転生しちまえば、前の記憶なんてないものさ。悪いことは言わねえ。お前いい女だぜ、なあ、俺と付き合おう」

狗神が尻尾を振るかのように立ち尽くす月千代の周りを走り回る。


「なぜ、お前と付き合わねばならぬのじゃ、そうそうにわらわの前から立ち去らぬか、無礼者!!」


「そんな堅いこと言うなよ、俺と華菜ちゃんの中じゃないの」


狗神は、鼻を鳴らしながら月千代にじゃれつく。


「ええい、汚らわしい」


月千代が狗神を投げ飛ばす。気がつくと夜が明けていた。月千代は、何を悩んでいたのか忘れるほどまとわりついてくる狗神を投げ飛ばし続けた。














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