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第6話 再会、満開、忍びの魂咲いて…

※カクヨム版から一部修正してます

 

 ――2025年5月25日。とある路地にて――


 この日は、雨脚が酷く、服を濡らさざるを得ないくらいだった。


 外での案件を済ませ、駅に向かおうとした時だ。突然雨が降り出した。


 ゲリラ豪雨。この頃あまり聞くことは無かった単語だ。


 偶然通りかかった花屋で雨宿りをした。

 ふと襟元を見つめる。雨に濡れた弁護士バッチが光っていた。


「いらっしゃいませ〜」

 

 突然声をかけられた。えらいべっぴんさんだった。

 一目見ただけで、心を突き動かされる。そんなオーラを纏っていた。

 彼女を一言で表すなら、魔性の女だ。

 

 

「ああ、すいません。雨宿りにと思って来ただけで……」


「構いませんよ。今日の雨は、恵みというには多すぎますし」


 店内には私と彼女しか居なかった。置かれている花はどれも色とりどりで綺麗な物だった。一輪一輪が丁寧に手入れされているのだろう。 

 

 もし事務所を立ち上げるなら、どんなのを置こうかなどと考えてしまう。

「もしかして、弁護士さんですか?」


「はい……とは言ってもまだまだひよっこですけどね……ようやっと夢を叶えられたので」


 苦節4年。なんとか受かった司法試験の先に研修等もあり、大変な日々を過ごしている。


「確か、弁護士バッチってひまわりの花の形をしてるんですよね」


「そう……ですね」


 花屋だからかそういうのには詳しいんだろう。


 にしても、彼女を見ているだけで、高揚感があった。これが……恋?あまり味わったことの無い感覚だった。でも、表現するのが難しい。




「ひまわりの花言葉を、知ってますか?」


「え?」

 この後言われた言葉は、私の気持ちを代弁していた。

「って言っても、色々あって複雑なんですよ。私も覚えきれないですし。確か、一輪だと……


        “一目惚れ”    


で、私が一番好きなのは……


      “あなただけを見つめる”


ですね。まあ、本数によっても変わりますし……って、あの〜聞こえてます〜?」


 一目惚れ、そして、あなただけを見つめる。その言葉が今の私を表すのにピッタリだった。


 私は彼女に恋をした。


「ああ! すいません。ついぼーっとしてて……疲れてるのかな……そういえば、お名前聞いてもよろしいですか?」


「はい。天海花(あまみはな)です。貴方は?」


村雨誠也(むらさめせいや)です」


「素敵なお名前ですね」


「いやいや、あなたも十分――」


 その時、太陽の一筋の光が私を照らした。

 眩しくて、ふと手で目の辺りを隠す。


「止んだみたいですね」


「それじゃあ、またお会いしてもよろしいですか?」


「はい、またお越しくださいませ。なんて……」


 その時のニコッとした表情は今でも忘れられない。


 その後、信じられない再会を果たすのだが、それはまた別のお話……。






――2026年3月25日午前六時半頃。マンションの一室にて――


 私はリビングで正座して、向かいに彼を座らせた。彼の座り方はダビデ像みたいだった。


「貴方は、何者なの?」


「名乗る程じゃない。というか、俺にはちゃんとした名は無い」


「どういうこと?」


「俺は、シャイニングヒーローを倒すためだけに生まれた存在。言うなれば、シャイニングキラーだ。他のやつもそう呼んでいた」


「そうなんだ……じゃあ、あのカゲムシャー? の同族ってこと? いやでも見た目は人間だし――」

 確かに彼は人間っぽい。化け物じみた他の者とは大違いだ。しかも、ちょっとカッコいい……。


「本来のカゲムシャーは人間を乗っ取り、新たな姿を手に入れる。が、俺はそうじゃない。それに、この姿は……あの、風花とかいう女にしか見せたことがない」


「そう……ところで、なんて呼べばいい?」


「好きにしろ」


 すると影月が

「じゃあ名前をつけてあげましょうよ!」

 と提案した。

「ええっ!?」


「俺をペット扱いするな」


 まあ名付けるなら真剣に考えてみようと思ったので、腕を組みながら、頭を悩ませた。


 彼は、口調からして、ガラは悪いかもしれないけど、目を見てると心の奥底には優しさもあると思った。


 そう思ってなのかは分からなかったが、咄嗟に名案が浮かんだ。


樹心良司(じゅしんりょうじ)ってのはどう?」


「いいですね! ところで、由来とかあるんですか?」


「なんとなく、かな。なんか頭に浮かんできたんだよね……」


「はぁ……勝手にしろ……。あと、俺も聞きたいことがある。 クナイ野郎、そもそもお前は何者だ?」

 目線が影月の方に向かった。


「クナイ野郎じゃなくて影月です!」


「確かに言われればちゃんと聞いてなかったなぁ〜」


「僕、記憶がバラバラなんです。だから、覚えてることはあまり無くて……ああでも、一つだけ覚えてることがあって……」


「なんだ」

万代異聞録(よろずいぶんろく)です!」

「なんか言ってたねそれ。よく分からないけど」

 話している最中周りをぐるぐるしていた。


「簡単にいえば、色んな世界が記された書物です。僕はそれで色々な世界を見てきました。平和で楽しそうな世界もあれば、争いの絶えない殺伐としたものもありました。でも、全ての世界が輝いていました! だから、そんな世界を直接見てみたい! そう思って、僕は世界を飛ぼうとして……気づいたらこの世界にいました。話せるのはこれくらいです。」


「他には、なんかあるの?」

「これを編纂してるのは、すご〜くものすご〜く偉い人達で、選ばれる世界も限られてて、毎年どんな世界が見られるかを考えたらもうずっとテンション上がりっぱなしで――」

 すると良司くんは声を荒げ、立ち上がって、

「そんなのはどうでもいい。もう出ていく」

 と言って玄関に向かった。

 が、ここで私は言っていた。

 

「ねぇ、ここに住みなよ」

 何故か口が滑っていた。

「は?」


「あ、いや……その――」




 その後、私はなんやかんやあって、退職し、フリーで頑張ることにして、良司くんと影月くんとの新生活が始まった。



 ――2026年4月5日午前8時 とあるリビングにて――


 私、黒崎真白は最近、イライラしている。

「おいクナイ野郎。邪魔だ」


「そういう貴方こそ邪魔です」

 二人は口を開くと、すぐに喧嘩をする。


「いいか、お邪魔虫はどう考えてもお前だ。お前の水やりは適当すぎる」


「そういう良司さんはどうなんですか! ろくに家事できないし、してないじゃないですか! 寄生虫じゃないですか!」


「虫みたいにうろついてるお前に言われたくはない」

 もう限界に達していた。私は咄嗟に大声を出してしまった。

「喧嘩しないでよ! 毎日毎日愚痴聞かされるこっちの身にもなってよ!」


「すいません」

 謝ったのは影月だけだった。


「もういい、出ていく」

 良司は直様玄関を出た。


「ちょ、ちょっと! どこ行くんですか!?」


「どこでもいいだろ。こんなところとおさらばできて清々する」


「良司さ――」


「ほっといていいんだよ。ああ言う人は」


 今日は用事があった。久々に恩師に会うのだ。

 とても楽しみだ。だけど、心の中では少しやるせない気持ちになっていた。


 ――同日午前10時頃。とある公園前にて――


 家を出たは良いものの、これからどこへ向かおうか。そう思って歩いていたら、結局あの公園に辿り着いた。



 休日とはいえ、まだ人は少ない。昼頃には多少人も増えるだろう。


 ベンチに座り、空を見る。ふと目が合う。あの時の老人だ。


「君、今日も散歩?」


「あんたもか? ずいぶん暇なんだな」


「いや、今日は用事があって、人を待ってるんだ。もうそろそろだと思うけど」


 ふと、真白の事を思い返す。あいつは今頃腹を立てているとは思うが、そんなことはどうでもいい……はずだ。

 


 数分間の沈黙の後、彼の待ち人の女性が現れた。その人は、見覚えのある容姿をしていた。


「「あっ……」」


 真白だった。



「なんでいるんだよ」


「それはこっちの台詞よ!」

 声からはまだ根に持ってるような気がした。


「待ち合わせはどうした?」


「その人が待ち人なのよ!」

 まじか……。


 

 ――同日午前10時半頃。とあるカフェにて――


 私達はテーブル席に案内された。私と良司くんが一緒に座り、忍先生が向かいに座っている。

 場所は窓側に位置しており、良司くんはずっと景色を見ている。


「君達、知り合いだったんだねぇ」

 先生はニコニコと愛想良く振る舞う。相変わらず、笑顔が素敵の人だ。


「はじめまして……じゃないけど、僕は前野忍(まえのしのぶ)。彼女は僕の教え子でね。二人は今喧嘩してるの?」


「彼は居候なんです。それで、色々あって……」


「これも何かの縁だ。ここで仲直りでも――」


「仲直りするほど仲良くない」

 良司くんは何を考えてるのか分からないし、話を聞いてないように思っていたけど、そうではないよう……だった。


「そういえば、この前あげた本あるじゃない? 読んでくれた?」

 (本なんて貰ってたんだ)

「読んでない」


「なら返したらいいじゃん」

 正直呆れてる。

「まあまあ……僕もたまに、買ってる本に手を付けないなんてこと、ざらだから」

 先生はなんとかこの場をなだめようとしていた。本当に申し訳ない。


 先生はメニューを見ながら、

「何か食べるかい? 奢るよ」と優しく呟く。

「俺はいい」

「遠慮しなくてもいいのに」

「じゃあ私は……サンドイッチで」


 数分後、注文の品が届いた。サンドイッチにかぶりついていた時、良司くんはまじまじとこちらを見てきた。


「食べたいの? それか、なんかついてる?」


「いや……少し考え事をしていただけだ」

 何を考えてるのか小一時間問い詰めてみたい気もするが、今は恩師との再会を喜ぶべきだろう。


「最近変わりない?」


「実は、会社を辞めて、フリーなんです。今」


 私はフリーライターでありながら、Web漫画家とかいう二足の草鞋を履くような存在になった。


 ただ、どちらの収入よりも、投資で得た金の方が多い。


「そうなんだ。大変でしょ」


「まあ……」


「でも、真白さんなら大丈夫だよ。昔からしっかりものだったし」


「そうですかね……そうだといいんですけど」

 自分に自信がないからか、苦笑するしか無かった。


  ――謎の場所にて――


 研究室に四人は呼び出された。

「どうしたの〜こんな所に呼び出して〜」

 魔法使いのような服装にエプロンをつけている、胸の大きいお姉さんと言って差し支えない女性が甘い口調で問う。


「エンジェルお姉様。私オーディションの準備があるんですけど」

 少し小柄なメイドのような服装の少女も答える。


「相変わらず人使いの荒い方だなぁ」

 上裸で高身長な男は少しため息をついていた。


「……」

 アルセーヌは黙っていた。


「集まってもらったのは他でもないわ。新しいデバイスができたから、渡そうと思って」

 

 そう言うと、三つのブレスレットがあった。少し前にアルセーヌが貰って、壊された物と同じ物だ。


「なあに?それ〜」


「カラトチェンジャー。これには、従来の変身機能だけじゃなく、使役した者の能力を向上させることもできる。生贄集めには最適でしょ」


「なるほど〜じゃあせっかくだし、早速使ってみようかな〜」

 そう言うとお姉さんは楽しげに受け取った。

「なら私も行きます。()()()


「その名前で呼ばないでよ〜今の私は、シルクだ・か・ら」


「てかこれ三つしかないじゃん。」


「ああ、アルセーヌくんにはもう渡してあるんだ」

「……」

 ずっと黙り込んだままだった。

「何か言いたそうな顔だね。どうかした?」


「あ、あの……。弓愛衣(きゅうめい)さんいや、エンジェル様………………ほん、とうっーーーーに申し訳ございませんでしたーーー!!」


 彼は土下座していた。それほど彼女に何されるのかが怖かったのだろう。


「土下座なんかしちゃってぇなんかあったん?」

 小柄な少女が軽口を叩く。


「まさか、壊した?」


「……………はい」


「そうだろうと思ってた。これ使っていいから」


「ああ神様天使様……」

 特にお咎めもないようで、安堵していた。

「やれやれ……」



 ――2026年4月5日午後0時頃 とあるカフェにて――


「今日はありがとうございました」


「いやいや、なんだか懐かしくなっちゃったなあ〜」


「私もです」


 忍先生はそれじゃと一言言ってその場を後にした。


「何故あいつは俺に構おうとするんだろうな。迷惑にも程がある」


「きっと、ほっとけなかったんだよ。あの子みたいに」


 忍先生には息子さんがいた。いたという言葉の通り、もうこの世には居ない。私が高校二年生の頃、事故で亡くしたのだ。

 それからの先生は何処か寂しそうにしていた。表情は明るいようだが、所々にそれが隠れていた。


 その事を彼に言うと「自分勝手で迷惑な奴だ」

なんて言うもんだから、流石にキレた。


「あのね!――」

 その時だった。影月がどこからともなくやってきた。


「良司さん! あなたって人は最低なんですね! 人の気持ちも何も分からないんですか!」


「ああ、俺は人じゃないからな」


「そんなのはどうでもいい! あんたに期待した僕がバカみたいだ……」


「勝手に期待したのがおかしいだろ」


 二人をなんとか止めようとすると、


「あら、貴方が噂の……」

「随分と血の気の多いやつなんだな」


 男女二人組がやってきた。女性の方は魔法使いみたいな帽子を被っていて、男性の方はスーツを着ていた。襟元には弁護士バッチが付いていた。


「お前等は……確か、ウィザードシルクとジャッジメントガベルか」


「ちゃんと覚えてくださってたのね。でも、今はキラーシルクですの」


「俺も今はキラーガベルだがな」


 次の瞬間、二人は付けている腕輪に丸いディスクのような物を入れ、変身した。

 その姿はヒーローのようで怪人のような、不思議な姿だった。


 二人は私達を目掛けて攻撃してきた。




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