第48話 百合の花が咲いた。姉妹で話してただけなのに。
お泊まり二日目は、本当にほぼベッドの中で過ごしたと言っていい。
だがどれだけ楽しくても終わりはやってくるわけで、もう夕方なのでさすがに帰らないといけない。
そして今は彼女の家の前だ。
「階堂くん、すっごく楽しかったよ。いろいろありがとう!」
「こちらこそ。俺も楽しかったよ」
「もうすぐ夏休みが終わっちゃうから、次に会えるのは学校が始まってからになるね」
「そうなるか。二学期の最初の休みにまた一緒に過ごそう」
「うん、そうだね」
彼女はそう言うと俺に近づき、耳元でささやく。
「またしようね」
こんな最高なASMRがあるだろうか? 彼女はそれだけ言うと俺に返事する暇すら与えず、「またね」と言って中に入って行った。
もうすぐ夏休みが終わるというのに寂しい気持ちにならなかったのは、初めてのことだ。
【その直後、朝陽奈 陽香の自宅にて】
帰って来た陽香は「ただいま」と口に出して二階へ上がった。
そしてまずは自室に入りテーブルの上にバッグを置くとすぐに部屋から出て、隣の部屋のドアをノックする。
「お姉ちゃん、ただいまー。入っていい?」
すると中から「いいよー」という声が聞こえたので、中に入った陽香は姉の詩恩に抱きついた。
「ちょっとどうしたの陽香!? もしかして階堂君と何かあったの?」
「私ね、今とっても幸せな気分なんだ。だからついお姉ちゃんにも抱きつきたくなっちゃった」
「そうなのね。その様子だと無事、何かあったみたいね!」
「うん。階堂くんとしちゃった」
「よかったじゃない!」
それから二人は中には入らないものの詩恩のベッドの上に横たわり、お互いの顔を見ながら話す。
二人ともがTシャツ一枚にショートパンツ姿なので、そこはかとなく百合っぽいが、これがこの姉妹のスタイルなのだろう。
「やっぱりお姉ちゃんとこうしてると落ち着くなぁ」
「私も陽香とこうするの好きよ」
「実はね、階堂くんともこうしていたんだよ」
「そうなのね」
「うん。いつもお姉ちゃんとしてたから、やっぱり私もこうするのが好きなんだと思う。二日目の今日なんてホントにもうずっとこうしてたもん」
「詳しく」
「えっとね、昨夜だけじゃなくて今朝から帰るまでの間もほとんど一緒にベッドの中で過ごしたんだ」
「つまり一日中……」
「うん。でもずっとえっちなことばかりしてたわけじゃないよ。ちゃんと服を着てたから。一緒に配信動画とかサブスクを観てたりもしたよ」
「すっごく楽しそうじゃないの。どうして今まで気がつかなかったのかしら。これからはお姉ちゃんとも一緒にしようね。えっちなことはできないけど」
「うん! それでね、最初のうちはそうしてたんだけど、そのうち私が我慢できなくなって、ついえっちなことをしちゃったんだ」
「詳しく」
「まず私が自分の足を階堂くんの足の上に乗せたんだ」
「こうかしら?」
陽香の話を聞いた詩恩はそれを再現しようとしたのか、自分の足を陽香の足の上に乗せた。二人ともショートパンツ姿のため、白くてしなやかな素足と素足が触れ合っている。
「うん、こんな感じ。そうしたら階堂くんも同じようにしてきたから、お互いの足を絡めた感じになったの」
「陽香も同じようにしてみてくれる?」
その言葉に素直に従った陽香は、同じように詩恩と足を絡めた。
「これは……なかなか攻めてるわね」
「そうすると今度はもう抱きつきたくなっちゃって、めいっぱい抱きついたんだ」
「こうかしら?」
詩恩はそう言うと足はそのままで陽香に抱きついた。
「そうしたら階堂くんも私に同じようにしてきたんだよ。こんなふうに」
それから陽香も同じく詩恩に抱きついたため、露出の多い姉妹がベッドの上で抱き合うという尊い光景がここに完成したのである。
「陽香の胸が私の胸に当たってて、柔らかいとはいえちょっと遠く感じるわね……。階堂君との時は大丈夫だったのかしら?」
「大丈夫だったよ。だって階堂くん胸無いもん」
「そ、そうよね……。私としたことが」
まるでそのままキスをするのかと思わせるような、超至近距離で向かい合ったまま話す二人。
「そ、それで陽香……。ここからどうしたの?」
「きっとお姉ちゃんもわかると思うけど、どうにも我慢できなくて落ち着かなくなっちゃって。だから階堂くんを脱がせて私も脱がされて、そのままギュッとしたよ」
「さ、さすがにそこまでするわけにはいかないわね……。でも陽香、ちょっとだけ胸を触っていい?」
「うん、いいよ」
あっさりすぎる陽香の返事を聞いた詩恩は両手でつかんだ。
「お姉ちゃん、服どうする? 脱ごうか?」
「ううん、脱がなくていいわよ。その代わりめくっていいかしら?」
「いいよー」
こうして姉妹の戯れ(ほぼ姉から)はしばらく続き、それが終わると今度はベッドの上に座って話を続けることにしたようだ。
「階堂くんとカフェに行ったんだけど、亜希さんが働いててビックリしちゃった」
「それはすごい偶然ね。カフェで働いてるのは知ってたけど、それがどこなのかは知らないものね」
「うん。亜希さんも私を見てビックリしてたみたいだったよ。でもなんだか人差し指でシーッてしたように見えたから、声をかけるのはやめたんだ」
「それはきっと二人のデートを邪魔したくなかったからじゃないかしら。せっかくのデートなのに関係ない自分の話になるのを避けようとしていたんだと思うわよ。亜希って明るくて気づかいができるいい子だよね」
「そういうことだったんだー。さすがお姉ちゃん」
「フフッ、ありがとう」
「それじゃあ私、お風呂に入ってくるね。それともお姉ちゃん先に入る?」
「え? あ、私はもう少しあとにするわ。ちょっとやることができたかも……?」
「そうなの?」
「陽香の話を聞いていたら、どうにも落ち着かなくなってしまって……。陽香は平気なの?」
「あっ……!」
陽香はまるで何かを察したかのような表情になった。
「私なら大丈夫だよ。だって階堂くんとたくさんギュッてしたから」
「そ、そうよね。ついさっきのことだものね」
「それじゃあ私、お風呂に入ってくるね」
そう告げた陽香は部屋から出た。詩恩はというと、それからしばらくは部屋から出なかったようだ。いったいナニをしていたのかは全く分からないが。
そして夏休みが終わり、ついに二学期が始まったのである。




