第49話 私、どんなことでも受け入れるから
いよいよ今日から二学期が始まるが、俺をとりまく環境は一学期とはまるで違うものになっている。
もう少し詳しく言うと、二人のクラスメイトとの関係性がガラッと変わった。
まずは言うまでもないが、朝陽奈さんとの関係だ。恋人同士になって夏休みの間に初体験を済ませるという、夢のようなことが起きた。
もし彼女が性に対して前向きじゃなかったら、ここまで上手くはいってなかったかもしれないな。
そしてもう一人、原作主人公である江並だ。友達だったことは確かだが、今は絶交状態になっている。俺ですら距離を置きたいと思った。
だがあいつの席は俺の一つ前。さすがに気まずくはあるが、それも今日までだ。
なぜならこの後に席替えがあるから。くじ引きで決まるらしいが、また江並が近くになるなんてことはそう簡単には起こらないはずだ。
そして結果はというと……。俺の席はまたもや窓際の一番後ろの通称『主人公席』で、全く変わらなかった。
先生が気を利かせてくれて場所変更を提案してくれたが、俺は「視力がいいので後ろで大丈夫です」と丁重にお断りした。嘘はついてない。
江並はというと入り口側の一番前で、俺の位置とは対角線の端と端になる。
根拠は無いがなんというか、今の俺の状態で江並の近くになるわけがないという自信があった。
謎の無敵感とでもいうのか、とにかく今なら全てのことが上手くいくような気がしている。前世を含めて、今が俺史上で一番楽しい時期であることは間違いない。
「階堂くん、これからまたよろしくね!」
「こちらこそ!」
彼女の席は俺の隣になった。もしかすると運のパラメーターがMAXなのかもしれない。
そして翌日の昼休み。
「よかったら俺と一緒に学食行く?」
「ごめんっ! お昼は毎日友達と食べるって約束してるの」
「そうなんだ。友達も大切にするべきだから俺のことは気にしないで」
「うん、ありがとう。……あっ、友達ってのはみんな女の子だからね!」
こうして彼女は小さく手を振ると、一人で学食に向かった。
(べっ、べつに寂しくなんてないんだから!)
俺がそんなセリフを言ってるところを想像してみたが、我ながらキモすぎたのでもう二度と考えないと固く誓ってから、さっさと一人でパンを食べることにする。
すると銀髪美少女が当たり前のようにこっちにやって来て、空いてる前の席に座った。文月さんは相変わらずみたいだな。
「あれぇー? 階堂さんぼっちじゃないですか。もう陽香さんにフラれたんですか?」
「一緒に昼休みを過ごしてないだけでフラれた認定はやめるように」
俺と朝陽奈さんが付き合ってることは文月さんも知っている。なんかいつの間にか仲良くなってたようだ。
「やだなぁー、ちょっとした冗談じゃないですかー。私としては陽香さんを応援したいと思ってますから。私が昼休みにここに来ることも話してます。それで階堂さん、陽香さんのどういうところが好きなんですか?」
「よく平気でそんな質問できるよな。やっぱり明るくて素直なところが一番好きだと思ってるよ」
「それでもしっかり答えてくれるところが階堂さんらしいですよね。もう一つ質問。階堂さんは陽香さんからどんなことをされたら喜びますか?」
「質問の意味が分からない」
「どんなエロいことをされたいかってことです」
「知らん」
「照れなくてもいいじゃないですかー。だったら質問を変えましょう。階堂さんは陽香さんにどんなことをしてみたいですか?」
「知らん」
「答えてくださいよー」
「仮に答えたとしてどうするつもりなんだ?」
「もちろん陽香さんに教えるんですよ」
「文月さんには関係ないことじゃないか」
「関係ありますよ。だって私は陽香さんの相談役ですから。エロ専門の」
「そんなことしなくても朝陽奈さんはもう十分に——」
「もう十分にエロいから」と言いかけて言葉を飲んだ。まさか初めてのお泊まりで一日中することになるとは思わなかったな……。
だからそれは他の人に言うようなことじゃない。
「まぁ私としては? 階堂さんの癖を全部喋らそうとすること自体が楽しいので。階堂さんを見てると何故かそう思うんですよねぇ……!」
(相変わらずやべぇな、この子は……!)
「そういえば知ってます? あの江並って人、変に噂になってますよ」
「変な噂って?」
「三年生の先輩と休みの日に一緒にいるところを見たとか、他のクラスの二年生の先輩と休みの日に一緒にいるところを見たとか、私以外の一年の子にも手を出したとか。あと本当かどうかは分かりませんが保険室の綺麗な先生を口説こうとしてたとか」
実際に見たわけじゃないから断言はできないが、原作に出てくるヒロインのことかもしれない。
攻略対象となるヒロインが、いくらなんでも朝陽奈さんと文月さんの二人だけというのは少ない。当然他にも攻略対象となるヒロインはいる。
そういえば俺はまだ出会ってないが、さすがに全員とがっつり絡むようになるなんてことは無いようだな。江並はそうじゃないようだが。さすが主人公。
それにしても、いくらなんでも保険の先生なんて出てこなかったぞ。もしかしてR-18バージョンだけの追加ヒロインなのか? つまり先生と生徒という禁断の関係を楽しめと。
「あいつも普通に女の子と少しずつ仲良くなっていけば、悪い結果にはならないと思うけどな」
「は? そんなことあの人には無理に決まってるじゃないですか」
なんという冷たい声と凍てつく表情なんだ……! めちゃくちゃ嫌ってるじゃないか。まぁ当然か。
江並がどんなエンディングを迎えようが、俺には関係ないことだ。不幸になれとまでは思わないが、興味はないかな。
少し時は経ち、二学期が始まって最初の土曜日の夜。今日は彼女が泊まりに来ている。
「ねぇねぇ見て! バニーガールだよー!」
「そんなものどこで買ったんだ……!」
目の前には今、コスプレした彼女がいる。
「俺、バニーガールが好きだなんて一言も言ったことないんだけど」
「もしかして嫌いだったかな……? ごめんね、だって喜んでほしくって……」
本気で落ち込んでいる。わざわざ俺のために……! 俺はやっぱり彼女が好きだ。
「そういえば俺、一度バニーガールを見てみたいって思ってたんだよなぁー」
「ホント!? もうじっくりと見ちゃってね。どんなポーズでもするからね。あと着けてないからいつ脱いでもいいし、ビリビリに破いてくれてもいいよ」
ウサ耳彼女が言う。着けてないのも見れば分かる。
「もう好きなようにしてもらっていいからね。私、どんなことでも受け入れるから」
「そうさせてもらおうかな」
俺はそう言って本当に好きなようにした。それに彼女も本気で喜んでくれて、俺を求めてくれているのが伝わってくる。
それから俺は彼女にベッドまで連れて行かれ、そのまま朝まで一緒に過ごした。
そしてまたその日も夏休み最後の時と同じように、夕方になるまで彼女の有り余る体力に付き合った。俺もイヤじゃないし。
普通のデートもするが、それからも時々は同じようにして過ごすことが増えた。違うことといえばコスプレの衣装が違うくらいか。
基本的に彼女はされるほうが好きらしいが、誘ってくるのは彼女からのほうが多い。
それに頑張って俺を喜ばせようともしてくれる。その姿がまた可愛いのだから反則だ。
こんな表情もするんだとか、こんな声を出すんだとか、ここが弱いんだとか、とにかく彼女といろんな楽しみ方をするようになった。
でもそれは決して彼女の体が目的ということじゃなくて、恋人同士なら自然なことだ。
だからこそとても尊いものであり、そこには確かに絆があるのだと俺は思う。
もうそんな恥ずかしいセリフだって言ってしまおう。
俺の彼女がエロすぎる件。最高じゃないか!




