第46話 R-18
久しぶりに風呂に入った。誤解のないように言うといつもはシャワーでサッと済ませているからだ。風呂って何をすればいいか分からんから暇なんだよなぁ。
まぁ俺の風呂事情はどうでもいいとして、浴槽にはたっぷりの湯が残っている。
だが量は少し減っているので、それは彼女が浴槽に入ったことを意味しており——
(いや、あれこれ考えるのはやめておこう)
俺はただ普通に入ればいいだけだ。しかしさっきのキスのこともあり、彼女のことばかり考えてしまっていた。
そして俺も部屋着になってから部屋に戻った。そこには俺のベッドにちょこんと座って本を読んでいる彼女の姿があった。
「あ、おかえりなさーい」
「ただいま」
彼女の言葉に反射的に返しただけだが、一人ではできないやり取りがなんだか心地よかった。
そして彼女の隣に座る。それはいつもより近い距離。俺が少しでも体を動かせば彼女に触れるというのに、彼女は体を離そうとはしない。
「何を読んでたの?」
「えっちな本だよ」
「そっか」
それは俺にとって、もはや普通のやり取りだ。彼女も隠す気は無いようだし。
「ねぇ階堂くん。バニーガールの衣装はどこにあるの?」
「あるわけないでしょ」
「えぇー、だってこの本に書かれてる女の子が彼氏のためにそうしてたから」
「それはある意味で作品の演出みたいなものじゃないかな。実際にするのはなかなか大変だと思うよ」
「そうなんだー」
それだけ言うと彼女は黙ってしまった。もしかして俺が夢のないような発言をしてしまったからなのかと不安になってしまう。
だがそう思ったのはほんの十秒ほどで、再び彼女の声が聞こえたからだった。
「ねぇ階堂くん。私、もうダメかも……」
そう言った彼女は落ち着きを無くしているように見える。体もほんのりと揺れており、腕を動かしているみたいなので、その先にある手を見てみる。
すると彼女は両手を自分の太ももの間に挟んでいた。
「手が伸びちゃいそうなの……。でも今日は階堂くんが居てくれるから我慢しなきゃって思うと、余計に抑えられなくなっちゃって……。どうしよう……?」
それはいつも元気な彼女の声とは違って、弱々しいものだった。
「だっていつも考えてたことが現実になるかもって思うと……」
「いつも考えてたこと?」
「実は私ね、階堂くんのことを想って一人でしたことがあるんだよ」
「そうなんだ……! 嬉しいよ」
それはもしかすると、人によってはドン引きされるようなことかもしれない。
でも俺はその言葉を聞いた時、本当に嬉しいと思ったんだ。
だってそれは好きな人が自分のことを本気で想ってくれているということなのだから。
「私、現実にしたいよ……!」
ここで彼女が俺の目をジッとみつめる。それは俺にとって決意させるには十分すぎるほどだった。
「何やってるんだろうな、俺。女の子から言わせるなんて」
「ううん、そんなことないよ。階堂くんが私を大切にしてくれてること、知ってるから。だからこれは私のわがままなんだよ」
「俺、やっぱり陽香が好きだ」
「名前で呼んでくれた……! 嬉しい……!」
まるで引き寄せられるかのように俺と彼女の顔が近づき、そのままキスをする。とても深く。
そのまま彼女の太ももにそっと手を置いた。直接触れた素肌は本当に温かくて、彼女はそれを受け入れてくれている。
次にTシャツ一枚だけの胸に触れてみる。すると彼女が少しだけ声を漏らし、体がピクッと動いた。俺の手にはとても柔らかな感触がある。
だがそれでも彼女は目を閉じて、俺に身をゆだねてくれている。その表情からは恥じらいが見えるが、嫌がる素ぶりは全く感じない。
ここで顔を離し、今度はTシャツの裾をそっとめくってみる。ヘソが見えたところで彼女が両手を上げたのでそのまま最後までめくっていく。
服の上から見るのとは全く違い、本当に大きいなというだけじゃなく、その整った形までもが分かる。
実は初めて見る女性の体だが、興奮するというよりは美しく尊いという思いのほうが強い。
直接触れてみると手のひら全体が温かな体温に包まれ、彼女の反応がさっきより強くなった。
「すごく綺麗だ」
「またそんなこと言っちゃうんだから……!」
その言葉を皮切りに彼女の中のスイッチが入ったのか、彼女が俺の手を取り自分の太ももで挟む。しかもかなり際どい位置で。
「ちょっ……!」
そんな情けないような声が漏れた。だって考えてた流れと全然違ったから。正直言って想定外だ。
でも今まで見てきた朝陽奈さんらしい。なぜなら俺はそれが彼女の魅力だとも思っているから。
「階堂くんがしてほしいこと、何でもするからね。そのために勉強だってしたんだから。それにどんな服だって着るよ」
「うん、ありがとう」
なるほど、だからバニーガールとか言ってたのか。それに勉強とは何のことなのか、聞かなくても分かる。
「今日は大丈夫な日なんだって。だからそのままこれも取ってほしいな……」
彼女が言う『これ』とはショートパンツのことだろう。さすがに俺でも分かる。
そしてそれも取り、ついに下着一枚となった。しかも俺はそれに見覚えがある。
「覚えてるかな? 階堂くんが選んでくれたものだよ」
「もちろん覚えてるよ。ありがとう、大切にしてくれて」
「フフッ、実は階堂くんと会う時にしか、はいてないんだよ」
それもきっと彼女の愛情表現の一つなのだろう。そして見事に俺に効いてるわけだ。
「階堂くんの手で取ってほしいな」
「分かった」
そしてついに彼女の全てを見た。本当に不思議なことに、やはり美しいという印象のほうが強かったんだ。
「今度は私の番だね」
そして今度は俺が彼女の手によって同じ状態になった。
それから二人でベッドに横たわる。
「私、階堂くんが初めてなんだよ」
「俺だって一緒だよ」
「フフッ、だったらお互いが初めての相手だね」
「俺、喜んでもらえるよう頑張るから」
「それは私だって同じなんだからね」
こうして俺は絶対に忘れたくない時間を過ごした。それはきっと朝陽奈 陽香という女の子とだからそう思えるに違いないのだ。




