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ギャルゲーのモブに転生したけどまだ発売されてないR-18バージョンだった  作者: 猫野 ジム


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第43話 何人もの彼女

 夏休みもこれから終盤へと向かっていく。俺にはあと一回来年にも夏休みがめぐってくる。でも高二の夏休みは今だけだ。


 前世でもそうだったが、高三ともなるとさすがに遊んでばかりもいられない。きっとデートの回数だって減ってしまうことだろう。

 だからできる限り会える時に会うようにしたいなと思ってるんだ。


 というわけで今日は俺から彼女を誘った。待ち合わせの時刻は正午。場所はいつもの駅前広場にあるよく分からんオブジェの前。


 俺に芸術は分からないが、目印としては分かりやすくて本当にいい待ち合わせスポットだ。あの忠犬の銅像がなぜかそうなってる理由がなんとなく分かる気がするなぁ。それにあっちはきっとかわいいだろうな。


 今日も平日なのでスーツ姿の人がチラホラと確認できる。前世では土日が休みだったから、平日の休みというものに憧れていたっけ。


 まだ約束の三十分前なので大丈夫だろうと待ち合わせ場所に行くと、すでに彼女の姿があった。薄い青のロゴ入りTシャツに黒いプリーツミニスカート姿。

 いつものように胸元が大きく膨らみ、太ももの半分ほどが見えている状態。露出多めの服が好きなのだろうか。


「ごめん。早く来たつもりだったけど今日も待たせてしまったみたいだね」


「べっ、べつに今日が楽しみすぎてつい早く来ちゃったわけじゃないんだからねっ……!」


(ん……?)


「今日の服装も似合ってて可愛い」


「そ、そう……? ちょっとはわかってるじゃない……!」


(んん……?)


 彼女のキャラが全然違う件。なんだろうこの案件は。いったい俺はどうするべきなんだ……!


「えっと……、とりあえず行こうか」


 俺がそう言うと彼女は、前と同じようにバッグを肩にかけ両手で腕組みをしてきた。そしてもちろん当たってる。

 正直に言うと嬉しい。嬉しいのだが! 俺は今日もまたいろいろと抑えながらデートをすることになるのか?


「腕組みはいいけどちゃんと前を見て歩こうね、危ないから」


「心配ないよー? だってこんなにガッチリ捕まえてるんだから。ね? だからどんなことがあっても私たちずっと一緒だよ? ね? そうだよねぇ……?」


 そんなセリフとともに、彼女の柔らかな胸がさらに強く当たる。表情を見てみると少しだけ口角を上げているが、それは笑顔じゃなくて不敵な笑みだ……!


(マジでどうすればいいか分からん……!)


 とりあえず様子がおかしいことは間違いない。だがそれに触れていいものか? もし何らかの理由があるとすれば、()めないほうがいいような気がする。


「ねぇ、どこ見てるの? 私はここにいるよ? ねぇ? 私を見て?」


 こんな感じで目的地まで歩いて行ったわけだが、その途中での雑談は普通に楽しんでもらえたようだ。


 そして到着したのはアミューズメント施設。俺が提案した。そこまでお金を使うわけでもなく、高校生にはちょうどいいのではないのだろうか。

 でも一番大事なのはやっぱり誰と来るかということだろう。俺は彼女とならどこだって楽しめる自信がある。


「ボク、お姉ちゃん以外の人と来るのは初めてだよ」


(ボク……?)


 今度はボクっ娘なのか? なんだろう、ラブコメで観る分にはいいけど、実際に聞いてみるとそこまで萌えないかもしれない。……いやいや、そうじゃないだろ。


「そうなんだ。初めての相手が俺で嬉しいよ」


「初めての相手……!」


(あれ? なんだか元の朝陽奈さんに戻ったような気が……?)


 予定よりも早く到着したので、昼食の前に施設内のゲーセンでクレーンゲームをすることに。さすが大型施設なだけあって種類は様々。これは意外とお金を使うかもしれない。


「私……ボク、あれが欲しいなー」


(ボクって言い直した……?)


 彼女が指差した先には猫のぬいぐるみがあった。手のひらサイズで俺が見てもかわいいと思う。


 まずは彼女が挑戦したが、一回目は失敗。そして二回目も失敗した。


「ちょっと俺がやってみるよ」


 100円玉を投入して、左右と奥行きが最もベストであろう位置へアームを持っていく。

 そしてゆっくりと降りたアームはぬいぐるみをつかみ、フラフラとしながらも穴の中に落とす。


「はい、取れたよ」


 そう言って戦利品を渡した。


「すごーい! 一回で取れちゃった」


「運がよかっただけだよ。それに俺の前にしてくれたから、そのおかげで取りやすい位置になったんだと思うよ」


「それでもだよー」


(よかった、いつもの朝陽奈さんだ)


「……そう。だったら私のおかげでもあるわけね」


 そう思っていたが、朝陽奈さんはまるで何かを思い出したかのように雰囲気が変わった。


(もう口調も違うじゃないか……)


 もしかして俺は今、擬似ハーレムを体験しているのだろうか? なんだか何人もの彼女がいるような感覚だ。


 それからもゲーセンで過ごした後、施設内にあるカフェに行くことに。昼時を少し避けているので人は多いものの、すぐに座ることができた。


 カフェではあるが、どうやら注文は席についたまま店員を呼ぶスタイルのようだ。


 そしてやって来た店員はギャルっぽい人だった。金髪ハーフアップというのだろうか。感覚的なものだがなんというか、ギャル! って感じ。でも顔立ちは整っており、美人だなとは思う。


「お待たせしました。それではご注文をお伺いしま——」


 そこで店員さんの言葉が止まった。なんだか朝陽奈さんのほうを見て驚いてたような気もするが、知り合いだろうか?


「店員さんどうしました?」


 俺がそう言うと店員さんは、伸ばした人差し指を縦にして唇に真っ直ぐ当てた。まるで「シーッ」とでも言っているかのように。


「あーいえいえ、なんでもないですよ。ご注文をお聞きしますね」


 そして二人分の注文を伝えた。

 

「ご注文は以上ですね。それではしばらくお待ちください」


 店員さんが遠ざかる。思ったより真面目だったな。てっきり「らっしゃーせー」みたいにダルそうな感じだと思ってたんだけど。いくらなんでもそれはギャルに失礼か。


 朝陽奈さんのほうを見ると、なんだか不思議そうにしている。てっきり彼女の知り合いなのかと思ったが、おそらく気のせいだろうから聞かなくていいか。

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