第39話 妄想姉妹と妄想姉妹
朝陽奈 陽香と詩恩の姉妹は、とある家の前へとやって来た。
もう八月なので、二人とも半袖シャツにミニスカートという露出の多い服装だ。
その家は洋風の外観をしている二階建てでモダンなデザインの、まるで外国にあるような家。
そして二人はドアの前に立ち、インターホンを鳴らした。
それからしばらくするとドアが開かれ、銀髪ショートボブの少女が姿を見せた。文月 流菜。高校一年生で、陽香の一つ下にあたる後輩だ。
部屋着なのか流菜もまた、半袖シャツにショートパンツという格好をしている。
「待ってました、陽香さん!」
「流菜ちゃん、今日はお招きありがとうー!」
「いえいえ、私が陽香さんと話したかったですから。あ、もしかして隣にいるのがお姉さんですか!?」
「姉の詩恩です。いつも妹がお世話になってるみたいね。どうもありがとう」
「いえいえ、私のほうがお世話になってますから。それにしてもお姉さんも綺麗ですね! まさに美人姉妹って感じです」
そして三人とも中に入り、流菜の案内で二階にある一室のドアの前までやって来た。
「ここが私の部屋です。もうすでにお姉ちゃんには待ってもらってます」
流菜はそう言ってドアを開けた。広さは12畳くらいで広々としており、フローリングの床にはベッド・ローテーブル・ローソファー・ラック・シェルフなどが置かれている。
その中でも一際目立つのは本棚で、そこにはびっしりと本が並べられており、まるで流菜が読書家であることが垣間見えるかのようだ。
そしてローソファーにはすでに金髪ハーフアップのギャルが座っている。文月 亜希。流菜の姉であり、21歳のカフェ店員。朝陽奈 詩恩と同い年だ。
亜希もまた半袖シャツにショートパンツ姿であることから、四人全員が露出多めということになるが、ここに男はいないため変な視線を向けられることはないだろう。
「流菜、その子が朝陽奈さん?」
「うん、そうだよ。陽香さんっていうんだ。そして隣にいる人がお姉さんの詩恩さんで、会うのは私も今日が初めてなんだよ」
「二人ともめっちゃ美人じゃん! まぁとにかく座って座って!」
亜希の言葉を皮切りに、四人で四角いローテーブルを囲むようにして座る。陽香と流菜、詩恩と亜希が対面する形になった。
それから改めて全員が簡単な自己紹介をした後、最初に口を開いたのは亜希だ。
「実はさ、今日来てもらったのは流菜から陽香ちゃんもこういう本が好きだって聞いたからなんだよね」
テーブルには一冊の本が置かれており、その表紙には下着姿の女の子のイラストが描かれている。
「はい。ちょっと前に流菜ちゃんからこういうのがあるよって教えてもらったんです。それからもうハマっちゃって。だから時々お姉ちゃんにお願いして買ってもらってるんです」
「へぇー、詩恩も好きなんだー。あ、勝手に下の名前で呼んでるけど大丈夫? 同い年なんだし私のことも亜希って呼んでくれていいからさ」
「大丈夫よ。それなら私も亜希って呼ばせてもらうわね」
「全然おっけー。それじゃあ流菜、そろそろ始めちゃおうか」
「うん。陽香さんと詩恩さん、ちょっと待っててくださいねー」
流菜はそう言って立ち上がり、本棚の前に立つ。そしてそこから何冊かの本を取り出してテーブルの上へ運んだ。
それを何度か繰り返し、テーブルの上は本で満たされる。
「うわぁー、すごい。流菜ちゃん、これ全部読んだの?」
「買ったのは全部お姉ちゃんですけどね」
並べられている本の表紙は、どれもマンガ寄りのイラストで描かれた女の子ばかりで、まるでラノベのようだ。
だがその服装はパッと見ただけでも、制服・水着・下着・ほぼ意味を成してない鎧・ビリビリに破れた制服・スカートめくれてる・出てる・など実に様々。
さらに言うと女の子の表情や、両手を拘束されてるなどのシチュエーションも、いろいろと用意されている様子。
タイトルも特徴的だが、先輩・後輩・同級生・義妹・ギャル・OL・などの文字が目立つ。中には女騎士や聖女なんてものも。
「電子書籍もありますよー。陽香さん、詩恩さん、もし興味があればお姉ちゃんに言ってくださいね」
「そうそう。遠慮なく言っちゃって。私のスマホ、めっちゃエロいから」
「ありがとう、亜希。それじゃあ次は私達の番ね」
詩恩はそう言ってバッグから本を取り出し、一冊ずつテーブルの上に置いていく。
それによりテーブルの上は際どい女の子のイラストでぎっしりで、もうカオス状態である。
「とりあえず私が持っているものは全部持って来たわよ」
「おぉー、詩恩もなかなかやるねぇー。それじゃみんなそれぞれ好きなのを読んでみよっかー」
それから全員が一冊ずつ本を手にして読み始めた。その直後は「うわ、これすごい」などの独り言が漏れていたが、数分が経った頃には全員が無言になり、本に目線を落として集中しているようだ。
さらに三十分ほど経つと、全員の様子が少しおかしくなる。
どこか落ち着かないのか、座ったまま足の付け根あたりをモゾモゾと動かしているのだ。それはまるで何かを我慢しているかのよう。
全員が短いボトムスであるため、とても手を伸ばしやすい状態であるといえる。
さらに一時間ほどが経ち、ここでようやく全員が本を置いた。
「ふぅー、詩恩が持って来た作品、ヤバい……。少しずつ読んだだけでもめっちゃよかったんだけど。妄想がはかどるわー」
「亜希が選んだ作品もすごかったわよ……!」
こうしてそれぞれが感想を言い合い、ひと段落したところで流菜が陽香に問う。
「陽香さんも私に用事があるんですよね?」
「うん。流菜ちゃんには伝えておこうかなって」
そして陽香は夏祭りの時にあった出来事や、階堂と付き合い始めたことなどを打ち明けた。
「その江並って人、BSSされてるじゃないですかー! ダッッサい! よかったですね、陽香さん!」
「うん! ありがとうー! でも心配なこともあってね……」
陽香が次に話したのは、階堂が自分に全く手を出してこようとしないので、逆にそれが不安であるということだ。
「やれやれ。階堂さん、本当に仕方のない人ですねぇ……」
「なるほどねぇ。だったらもう陽香ちゃんから仕向けたらいいんじゃない?」
「私から仕向ける、ですか?」
「そーそー。つまり陽香ちゃんがめっちゃエロくなればいいんじゃないかってこと」




