第38話 とてもいい友達になれそう
江並を一人残して俺達は夏祭り会場をあとにした。
「階堂くんはあれでよかったの? もう蓮二とは友達じゃなくなったってことだよね……?」
「俺なら大丈夫。自分の人生において交流をもちたいなと思う人は選ぶべきだと思うから。だから俺もたくさんの人から選んでもらえるよう頑張るよ」
「それなら私は蓮二じゃなくて階堂くんを選んだってことになるね!」
「ありがとう。でも朝陽奈さんこそ大丈夫? これで江並とは疎遠になると思うけど」
「うん、大丈夫だよ。後悔はしてないから」
そして俺と彼女はどちらからともなく手を繋いだ。俺は友達を、彼女は幼馴染を自ら手放した。だがこうして新たにできた関係もある。
俺はこの関係をいつまでも大切にしようと深く決意した。
そしてついに夏休みが始まった。前世では一年にも満たなかったが、俺にも一応は社会人の経験がある。
だから改めて思う。40日近くも連休だなんで、まるで夢のようだ。これでお金があれば完璧だが、高校生だとそうもいかない。逆に社会人だとお金はあるが時間はない。果たしてどっちがいいんだろうな。
夏休み中も彼女とは順調にデートを重ねている。本音を言うともう少し踏み込んだ関係になりたいとは思うけど、ここで急ぎすぎるのはよくない。それなら江並と大差ないじゃないか。俺なりに焦らず、ゆっくりと仲を深めていこう。
そんなある日のデートの別れ際。彼女を家まで送り、今日はここでお別れだ。
「朝陽奈さん、今日もありがとう。楽しんでもらえたかな?」
「うん……」
俺はそう聞いたが彼女はまるで何かを考えているかのようで、どこか浮かない顔をしている。
「朝陽奈さん? もしかしてあまり満足してもらえなかった……?」
「……えっ? ご、ごめん。全然そんなことないよ?」
「そう? それならいいんだけど。俺に何か足りないことがあれば遠慮なく言ってくれていいからさ」
「えっ……と、うん、ありがとう。もし何かあればそうするね……。また連絡するね」
「うん。俺からもまた連絡するよ」
そして彼女が家の中へ入ったのを見届けてから、俺も帰路につく。
(朝陽奈さん、なんだか曇ってる? もしかして俺、何か失敗したかな……?)
もしそうだとしても、改善しようにも全く心当たりがない。
(嫌だ、彼女を失いたくない。一人で悩んでも仕方ないから次会った時に聞いてみよう)
そんなことが頭の中から離れず、この日は眠りにつくまでいつもより時間がかかってしまった。
【同日、階堂と別れた直後】
朝陽奈 陽香は自宅に入ると、真っ先に姉である詩恩の部屋のドアをノックした。
中から詩恩の「どうぞ」という声が聞こえるや否や、すぐさま姉に抱きついた。
「ちょっと陽香どうしたの!? そんな悲しそうな顔をして」
「お姉ちゃ〜ん! だって階堂くんが……」
「階堂君? めでたく付き合い始めたんじゃないの?」
「うん、お付き合いはしてるよ」
「もしかしてケンカしちゃった!?」
「ううん、すっごく優しい。好き」
「それならどうしてそんな悲しそうな顔をしているの?」
「だって! だって……!」
「だって……?」
「だって私に全然手を出そうとしないんだもん……!」
「え……?」
「ねぇお姉ちゃん、私の身体って魅力ないのかな……。それともこの大きい胸が嫌いなのかな……」
「そんなことないよ! 陽香は十分に魅力的よ!」
「ホント……?」
「きっと陽香のことを大切に思ってくれているからこそだと思うよ。でもあんまり奥手すぎるのもよくないかもしれないわね」
「ちょっと相談してみようかな……?」
「相談って、いったい誰に相談するつもりなのかしら?」
「一年生の女の子だよ。えっちな小説のことをいっぱい知ってるの。だから私よりいろんなことを知ってるかなって」
「詳しく」
そして陽香は姉に文月 流菜について説明した。エロい小説に詳しく、それ以外のことでも自分ととても話が合うのだということも。
「何その子。年下だとか関係なくすごく友達になりたい……! なんかいろいろ教えてあげたいかも」
「ちょうど明日初めてその子の家に遊びに行くことになってるの。それでその子にもお姉ちゃんがいるんだって。だからその人にも相談できたらなって」
「ねぇ陽香、それって私も行っていいかしら?」
「うーん、どうだろう。今から確認してみるね」
陽香はそう言うとスマホを操作して、文月 流菜にメッセージを送信した。
そしてそれから数分後、スマホを見た陽香は詩恩に向けて言う。
「お姉ちゃんも一緒に大歓迎って返ってきたよ」
「よかった! なんだかその人達とはとてもいい友達になれそうな気がするわ」




