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09話 クラス転移した

 教室の床が輝き、大きな魔法陣が浮き上がる。


「なにこれ?!」

「ええ?!——」


 クラス全体が驚きを隠せないでいる。

 すると、一色勇御(いっしきゆうご)が声をあげた。


「みんな落ち着い——」


 次の瞬間には見たこともない場所が視界に広がっていた。

 目の前のステータス画面と一緒に。

 そうして一クラス36人、異世界に転移した。

 一人トイレに行っていた一条渉を除いて……


 ——   ・  ——  ・  ——  ・  ——


「おお!よくぞ来てくれた!」


 玉座に座ってる人が声を上げた。

 王城。

 それも謁見の間というものだろうか。

 そんな場所の全体に響き渡る声だった。


 転移したクラスのみんながざわめきだっている。


「なにこれ……」「さっきまで教室にいたのに」「なんだ?クラス転移か?」


 そんな中でも、どうにかみんなをまとめるために、クラス委員長が言った。


「みんな!……ここどこだろう?」


 クラスのほぼ全員が委員長に目線がいく。

 すると委員長が言った言葉がおかしかったのか、聞いたみんなは口元を緩ませた。


 委員長の親友である久和琴美(くわことみ)が口を開いた。


小百合(さゆり)…この状況でよく言えるね」

「ほ、ほんとのこと言っただけだよ……」


 琴美の言葉には笑いが混じって聞こえた。


「聞け!勇者たちよ!単刀直入に言う。其方たちには魔王ソウマを倒してもらいたい」


 王が告げた時、和んだ空気がまた一瞬にして凍ってしまった。

 そこでクラスの一人が口を開く。


「ちょっと待ってくれ、俺たちは帰れるんだよな?」

「そのことだが、今回の極絶魔法である大規模転移を使ったことで、国庫の予算が空っぽなんじゃ」

「なら、その魔王ソウマってやつを倒せば、その大金を賄えるってわけだな」


 王は目を見開いた。


「お主、察しが良いな。そうじゃ、其奴を倒した暁には元の世界に帰すと約束しよう」


 クラスのみんなはため息を吐いた。

 しかし、納得いかない者もいた。


「でもさ、それってこっちがやるメリットなくない?帰れるって言っても、そっちって俺らを拉致してきた悪人ってわけじゃん」


 王の顔が少し暗くなったのがわかった。


「やれ」


 そう近衛兵に命じた途端、その近衛兵は文句を言った生徒に近づきいたと思えば、首を躊躇いなく切り落とした。

 首がなくなったその体は倒れ、脈打つ様に血が「ドクンッドクン——」と切断面から流れていく。



 かたや、何が起きたのか、クラスの皆は誰も理解することができなかった。

 いや、しなかった。

 目の前で起きた出来事から、目を背けたくなる状況で人はどうなるか。


 時が止まったようにフリーズする。


 しかし、その後の反応は千差万別。


「ハハ……」と小さく苦笑する者もいれば、「キャー!」思い切り叫ぶ者もいるだろう。


 転移した誰しもが恐怖する中、王は高らかに笑った。


「ハッハッハッハッハ!!これぞ滑稽とな。さしもの勇者とてあの斬撃では死ぬか」

「……な、なんで殺した!!」


 勇吾の声色には少しの震えがあった。


「そうだな、それは我の気分を害したからではいかんか?」

「そんな身勝手な——」


 王が勇吾の言葉を遮って言った。


「身勝手?笑止!そちらでは人権というのであろうが、こちらの世界ではそんな決め事はないのだ」

「だからってそんな簡単に殺すなんて」

「いつまで我と貴様たちと対等な関係だと勘違いをしているんだ。……察しが良いと言っても先ほどのはまぐれだったのだな」


 王は勇吾に挑発するような発言をした。

 郷に入れば郷に従え。

 これ以上は無駄だと思ったのか、勇吾はもう口を開かなかった。

 追い討ちをかけるように、王は続けて言い放った。


「我ここに命ずる、貴様らはただちに能力(スキル)測定をした後、訓練し、魔王ソウマを討伐せよ。

 そうすれば、元の世界に帰そう。一度約束したことは決して違えん。その身が保てばの話だが!」


 クラスの皆はまだ知らなかった。

 この世界の特異的な現象を。

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