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「ねえ、翔太くん。思い出してみて。彼らにこれまでも同様に意地悪を言われたことはあるの?」


 え、いや。それを言われると……べつにない。


「それは……ありませんけど…」挙手をしながらぼそりと答える。


 せ、先生ぇ! そいつらを信じすぎてはなりません。


「先生……。ぼ、僕は……補習なんて望んでないです。彼らの思いを考慮するなら、タイムカプセルの件だけ……譲歩してあげたらいい……と思います」


 あ、挙手もせずに興奮して立ち上がってしまった。


 あいつらの「クラス一丸の想い」という余計な贈り物を無下にはできなくなってしまい。反論し切るつもりが奴らの望みの後押しをしてしまった。


 それでも先生は、すべてに納得がいっていない様で。

 な、なんで?

 僕の本心なんてどうでもいいはずだ。ここは多勢に無勢だ。

 意見が割れてる以上は、先生だって全員の味方はできないはずだ。

 もう困らせたくないから僕が引けばいいだけのことだ。


「ねぇ翔太くん。一度だけ彼らを信じてあげることは、できそうにないかな?」

「うっ……せ、先生……(その目は僕を軽蔑しかけてる?)」


 あいつらの情熱にほだされましたか。

 ええ、知っていますとも。外の世界は多勢が主役だということぐらい。


 先生にそこまで言われて拒絶したら僕のこと嫌いになっちゃいますよね。

 嫌われたくないな蜜柑子先生にだけは。

 だけど、どうして嫌われたくないんだろう。外の世界は……。


「は、はい……」

「それは受けられないってことで、いいの?」


 ……じゃない方です! やば。


「あ、いえ逆です! ごめんなさい。し、信じて見てもいいです……」


 嫌われたくない一心で、心にもないこと言ってます。

 でも、もうどうでもいいんです。

 先生が先に闇に落ちた……僕の心にはもう貴女はいません、消えました。


「そう、それなら決まりね! アナタたちよかったわね!」

「わぁあああああ!! 自記(うぬき)っ!! 解ってくれてありがとう!」


 男子生徒全員に「ありがとう!」なんて生まれて初めて言ってもらえた。

 本当に、本当に僕のことをそこまで真剣に想っていてくれたんだ。


「疑ったりして、ごめん……」嬉しくて涙が込み上げてきた。





 なんていうのは嘘。

 その涙はきっと……外の世界に愛想が尽きた証なのだろう。

 外の世界に僕の魂の居場所はなくなった。


 誰の心を、いったい何で繋いでおけるのだろう。

 能面をつけた心のない学友を得てせいぜい盛り上がっていろ。



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