その10
蟻の巣窟と化した部下を見下ろして唇を噛みきり血を流す隊長。
厳選に強者だけを連れて来たのにも関わらずあっさりと屍にしてしまう人類最強に恐怖を感じる。
部下みたく天国に行ってしまうのではないかと。
「余所見していると胴体が分かれるわよ」
「ぬぅ!」
鋭利な斧で光球を弾き接近戦に勝負を挑む。
遠距離では弓兵の分があり球を拡散させる技まで有っては此方に勝ち目はない。
水華がもっとも得意とする剣の責め合いに持ち込むしかない。
絢音は隊長の意思を感じ取り、弓から双剣に替え応じることにした。
斧と双剣の異種戦闘が始まり耳をつんざく高鳴りが荒野に反響する。
スピードとパワー共に隊長が上とゆうのに攻めきれない。
否、傷一つも追わせることも出来ない。
剣術は大差なく互角で身体能力も明らかに上なのにどうしても勝つイメージが沸かない。
なぜと戦闘の最中のなのに無意味な思考が張り付いて離れない。
「なかなかやるけど……シルアには到底に及ばない力量ね!」
バカなと隊長は口癖のように空中を泳ぐ斧を眺めながらばつ点印の斬りふせられ視界が真っ黒になる。
精鋭部隊を全滅させた絢音は鼻息を吹かし死体に興味を抱かず負傷したシルアの元へと歩む。
利用され人間を殺させた悪を絶ってくれたことに猫耳のシルアの顔はとても穏やかで笑みを溢していた。
「ただいま。 仲間の場所へと帰ろうか」
「死んでも守ってくれてありがとう」
「肉体はないけど魂は生きてるけどね」
「冗談はいらないから……」
嬉し涙を頬を伝わせその水滴を拭おうとした瞬間――なにか輝く糸が絢音を腕を通過した。
ズルリと利き手の腕が地面に落ち切り口を抑え痛みにもがく。
出欠箇所を力強く握りながら放たれた光線を辿るとそこには大型な固定砲台の兵器と一人の耳を生やした水華。
どことなく権力者の雰囲気が漂うゴツい顔付き。
絢音は腕を切断されたのに笑っていた。
「っう……効いた。 不意打ちとはやるじゃない!」
「あ、あ、絢音! 腕が……腕が……」
「……問題ないよ。 久方ぶりの痛みで悶絶してただけだから」
千切れた腕に触れてブロック変換したと思いきや、傷口に掛けて同じ腕を造り完治させた。
切り口もなく血管も神経も皮膚も違和感なく接続されているのにシルアは驚愕する。
知り得ない創造の使用方法に。
「シルアは知らなかったよね。 自身であれば制約無視して創造し放題なんだ」
「だからって腕を切られて笑えるなんて狂人だわ」
「あはは、違いないや」
一息笑ったとこで砲台に佇む水華睨み声を掛ける。
「華咲一族頭領、ドルド・ムカエル。 元凶の根元の登場ね」
「ほう。 まるで来るのが分かっていた発言をするな?」
「ええ、だって死んだあの日から俺の計画は遂行されていたから」
眉を八の字に歪ませ目を細める。
まるで最初から全てを操作していた発言には憎たらしい感情が頭領に芽生える。
たかだか数十年生きた小僧に言われるのがまた憎たらしいと。
「長年の創造の具現化奪還、及び人類への報復措置に死に際に華咲一族に会った俺はすぐに勘づいたよ。 後継者に華咲一族を対抗するべく素材を収集させ、石碑で一人でわざと向かわせるように仕向けた。 千里眼で見張ってるお前らは大国から離れる後継者を目にして好機だと思い込みまんまと餌に食らい付いたわけ」
「……弱小種族めが調子に乗るなよ。 己が復活するのを見込んで人類最強を葬る兵器開発していた。 ここまで想定していたか?」
「――想定済よ」
双剣を弓へと元の姿に戻し大砲に照準をロックオンさせる。
兵器と名乗る腕を千切った大砲を目の前にしても恐れる様子がない。
冷静な落ち着き。
表情を崩さない人類最強を目にして頭領は血が上る。
「調子に乗るなよ下等生物が。 人間には越えられない絶大な砲力の前にひれ伏せ!」
「星屑の翡翠、核融合モード」
大砲からの砲撃は安易にかわせるが動けないシルアは犠牲になる。
避ける選択肢はなく真正面から撃破していくしか絢音にはない。
核融合モードと唱え弓は以前のままでだがポケットから刻鉄の蒼を二丁指に挟んで弦を引きだした。
大砲の発射口からは先ほどの輝く糸とは比較にもならない凝縮の熱が溜まっていく。
クレーターでも作るぐらいの光源を召集し放つ準備が着実と進行している。
絢音はまだ弦を離す様子がない。
限界までギリギリと力強く引っぱる。
「滅びたまえ人類最強よ」
「星屑の翡翠、刻鉄の蒼と融合し放て!」
紅き光線波と蒼き光線波が発射され通過した土は黒く焦げ魔境と成り果てる。
大地を駆けて圧縮エネルギーの手押し相撲が開始される。
衝突したエネルギーで上昇気流が発生し、激突した範囲は生物が暮らせない焦土となる。
両者共々均衡に保ち熱切れを待つだけと思いきや、蒼き圧縮球はかき消され紅き光線球に敗北した。
「くははははっ! 華咲一族の力の結晶が上回ったようだな!」
「――そいつはどうかな?」
力負けした刻鉄の蒼をセッテイングをし再び射つ準備をする。
力量では勝れないのに諦めず構える。
構えを取るだけで紅き惑星はそこまで来ている。
「星屑の翡翠、刻鉄の蒼と融合し再度、穿て!」
接触する一歩手前で蒼く輝く星が唸りをあげる。
再び核エネルギーの衝突が激化される。
「無駄無駄。 何度やっても人間ごときには越えられん!」
「人間には越えられない……か。 冥土の土産に人間が貴方を越えるとこを証明してあげる」
またも刻鉄の蒼が砕かれると思いきや紅き太陽にヒビが生じる。
錆びた鉄のようにボロボロと崩れ次第に威力が失っていくと蒼きエネルギーが打ち砕いていく。
「あ、あり得ない!」
「刻鉄の蒼――南西方角のとある小島に暮らす小数民族レクシリア。 レクシリア民族だけが持つ崩壊能力。 効力は一発目は刻印を刻み、二発目は一発目の与えた威力分の耐久値を引く。 どれだけ硬質だろうと莫大な圧縮エネルギーを放っても岩石を容易く砕くパワーの刻鉄の蒼の二発目を耐えれる物なんて――この世に存在しない」
渦巻きにスクリューしながら海がマグマを呑み込かのように大砲を目指していく。
粒子を撒き散らし紅き光線の発生源に到達すると雲を突き抜ける天の柱が花火のように打ち上がる。
付近にいた頭領は高熱の光に焼かれ丸焦げどころか原型さえ残さない灰になる。
「お疲れ様、星屑の翡翠。 ……諸悪の頭領も消し炭にしたことだしゆっくり寝付けるね」
足首まであるズボンを短パンにまでブロックに替え、上着は肩を露出するようにもぎ取りブロックにする。
弓を両断し双剣の受け皿用の収納ケースを造り上げ中に放り込む。
腰にケースを繋ぐヒモを創造し巻き付け強度を確かめたのち、へたり込むシルアに背を向ける。
「歩けないでしょ。 おぶって上げるからほれほれ」
「迷惑かけてごめんなさい」
背中にもたれた事を認識したとこで太ももをガッチリと掴み立ち上がる。
草もなく自然がなくなった荒れ果てた大地を振り替えることなく歩み立ち去っていく。
思い残すことがないかのように。
――荒野を抜けてから終始無言だったシルアの重たい口が動く。
「ねえ、私は裁いてくれないの?」
「死人に裁く権利はなく口はなし。 裁く判断は彼に任せるよ」
「……そう。 願わくば絢音に殺されたかった」
人を殺めた数は百は越え終身刑は免れないのを分かっているシルアは最も親しい彩音に引導を渡して欲しかったが叶わなかった。
シュンと落ち込むシルアに言葉を投げ掛ける。
「死人に口なしなんて言っちゃったけど、一言喋るなら''彼の力になってあげてね''」
「……生きてたら力になるわ」
同胞を殺害した犯人が目の前にいて死刑以外に選択はしないだろうとシルアは思っていた。
生きている筈がないのに絢音は力になれと不可解なことを言い出す。
絢音の温もりに優しさの喜びを感じ、死ぬことに悔やみがないように強く抱き締めた。
大好きと何度も心で囁きながら。




