その5
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彼女の死に場所に赴くこと二日と半日は掛かった。
殺風景で平坦な大地が永遠と広がる芝生。
自然を堪能できる広大な土地に不自然に芝生がない空間がポツリとあった。
そこには卵形の墓。 彼女の墓だ。
幾度も人間を救い人類最強と謳われた彼女の墓は寂しいものだ。
もっと讃えられてもいいのに立派な墓でさえ造ってくれず、そこらの丸石を取って置いただけの粗悪な物。
誰も気にやしない墓に俺はある種族の者を待ちわびている。
人間を標的にした殺人鬼の水華を。
「せっかくの墓を荒らしちまうのは忍びないな」
ここでは戦争が始まる。
死者を冒涜するようで気が引けるがそんな悠長なことを構ってはいられない。
なんせ霊闢の兵士を殺すことなく百人を倒す相手だ。
そんな化物と対峙する俺もまた物好きだな。
死ぬかもしれないのに戦闘を回避せず挑むなんてな。
「……お出ましか」
遠方に黒の装束を着た人物の陰が見える。
段々と近付いてくるにつれて姿がハッキリと映る。
三度目の対面。
一度目は村人を殺害された現場で、二度目はリーネが拘束された塔の中でだ。
忘れたくても嫌でも脳裏に焼き付いた漆黒の剣に見間違いようがない。
そして漆黒の剣士ことシルアが立ち止まり直視してきた。
「久方ぶりだな」
「…………」
「なにか喋れよシルア」
「気軽に私の名を口にしないで」
ビリっと稲妻が駆け巡ったように殺気が押し寄せる。
逃げ出したい程の殺気だが引くとゆう言葉はない。
身体プルプルと震える。
武者震いだといいのだが……ただの恐怖で身震いしてるだけだ。
「偶然に彼の墓にたどり着いた……て訳ではなさそうね。 私の言葉を忘れたのかしら?」
「次に会ったら殺すってだろ。 んなもん忘れる訳ねえよ」
「警告したにも関わらず何故姿を現したの? しかも彼の墓の前で」
「そりゃ……お前を止めるためだよ」
急激に空気がのし掛かり重たくなる錯覚がする。
比べ物にならない殺気の波が身体に伝えて呼応するかのようだ。
なんて殺気だよ。
「いい度胸ね。 あれほど実力の差を感じても尚も挑む愚かさ……滑稽ね!」
「お前の言う通り実力差は歴然だ。 だがな人間を侮るなよシルア」
シルアは柄を握り完全な戦闘体勢に入ったようだ。
こちらも事前に用意した指輪を十個装着してポーチに手を伸ばす。
どちらかが動けば死合が始まる。
「先手必勝」
先手必勝と言いつつ創造をしてないブロックをシルアに投げるだけ。
天黒刀の能力範囲を調べるために。
「なんの真似かしら? 侮ってるのはどちらかしら――放出」
空中に浮いたブロックを真っ二つに裂いて魔法を吸収。
放出と呪文を唱え吸収した魔法を外へと排出を確認と。
以下の情報から天黒刀のデメリットが分かる。
一つ、触れた物質は使用者の意図に関係なく物質を吸収する。
二つ、排出するのにインターバル一秒はいる。
三つ、放出と唱えなければ排出不可。
……ほんと弱点がない剣だ。
インターバルがたったの一秒だなんて速すぎる。
さて、天黒刀を破壊するには骨が折れるぞ。
「本番はこれからさ。 ――行くぞ!」
両側のポーチから同色のブロックを掴み湾曲した剣を造りだし放り投げる。
左右からの弧を描く投擲にどうする。
「よっと」
バク転でヒラリとかわされ桃色の剣は空振りに終わる……が想定済だ。
避けた時点で追尾するのが創造した武器の能力。
つまり破壊するまで自動追跡をする。
「追ってきた。 面倒ね!」
回転する高速の刃を叩き落とし灰になる。
この間にブロックを四つ使い大型光線銃を用意。
重心を腰に置き黒光りした光線銃の引き金を指に入れる。
「させやしないわ」
放出せず一直線で爆走してくるシルアに予め布石を打っていた仕掛けを使う。
発動にはある言葉で作動する。
それは――。
「六!」
一から十の数字を英語で発言するだけで装置が動く。
右親指の指輪は破裂すると地中から滝が逆流して噴き出す。
これには突進の勢いを緩め立ちはだかる水流を斬り裂き改めて襲いかかってくるが一足遅い。
引き金を押し込み銃口から目映い光線がシルアの胸に目掛けて発射された。
「ぐぅっ!」
咄嗟の判断力で弾道予測したシルアは天黒刀でガードする。
弾かれることなく光線は天黒刀に吸い込まれていき無傷。
流石だ。
「――放」
「させっかよ!」
光線銃を投げ捨てて新たにポーチから手裏剣を四丁作成し投擲する。
奴に放出する暇など与えはしない。
与えれば全て水の泡になるからな。
「やるわね」
横にサイドステップで移動し手裏剣が通過するが全てのブロックは魔法であるゆえ只では回避させない。
ダイナマイト級の爆発威力を味わえ。




