その4
警戒心全開でこちらを睨んでくる。
くの字に曲げた指でいつでも掌底を打ち込む体勢を見せてきた。
やましいことは発言しないが怖いってば。
「カルラとリーネを上手く騙してくれ。 二人は必ず同行しようとするからな」
「お安いご用よ。 ……てことはもう出掛けるの?」
「今日にでも出掛けないとシルアに合う機会が当分先になるからな。 俺には一人でも人間を救う義務がある。 もたもたと先越して待ってられないんだ」
次回に先送りにすれば無危害な人達が悲鳴をあげて殺されていく。
分かってて止めないのは絶対に駄目だ。
一人でも救える命があれば救ってやる。
「二人の食い止めは任せた」
「……死なないでね?」
「ハハハ、人類最強の力が備わってんだ。 簡単にはくたばらないよ」
「死なないって約束だよ?」
「――生きて帰ってくるさ。 だから帰ってきた時に宴の用意はしていてくれ」
トルカの直感は鋭い。
正直生きて帰れる保証は出来ない。
それほどシルアは強敵なのだ。
俺の直感もそう告げている。
まだ心配をするトルカには頭を三回ポンポンポンと優しく叩いて撫でてやる。
上目使いが心を擽るが撫でるのを中止してトルカの側から離れる。
向かう先は城の格納庫。
石碑に指示された内容通りに従う。
格納庫には魔法ブロックが大量に保管してあり戦争をする場合に引っ張ってくると書いてあった。
つまりシルアと戦うとゆうことは戦争すると同等なのである。
しかし、前任者はどれほどの未来を先読みしていたのか。
シルアと戦争することを見越して石碑に霊谷の丘の格納庫に取り行けと記し、シルアが訪れる目的地の場所まで指定ときた。
レクシリアに来た時点で誘導され操られてたのではないかと思うほどにだ。
「ここだな」
以前にカルラから紹介されていたので最短ルートで格納庫に辿り着けた。
錠をされ閉ざされているが扉をブロック化し強行突破。
後で元通りに直すから許してくれ。
「これ全部が魔法か!」
山だ。 色とりどりのブロックの山が溢れかえっていた。
いちいちしらみ潰しに魔法を探っていてはキリがないだろうから適当にブロックを必要な分だけ取り出す。
適当でもかなり上質な魔法だと脳内コールが告げてくれる。
これならシルアとも互角に戦えそうだ。
さすがにポケットに突っ込むのは品がないので霊谷の丘に挑む際に使用した緑の布を創造しポーチを作り出す。
左右にポーチを造った俺は片方ずつに60個を入れて閉じる。
装備完了したポーチを腰に巻き付けて最後は格納庫に置かれた秘宝を取りに行く。
これも前任者の指示で四隅にガラスケースに中に入れられた四つのブロックをポケットにねじ込みバッチしだ。
「さてと、扉を戻すか」
鍵ごとブロックに変換してしまったため錠と扉を一緒に創造しなければならない。
記憶を思い返し創造を開始。
映像をそのまま再現しなんの問題もなく元通りだ。
これでシルアが訪れる場所に向かうだけだ。
「王様! 王様!」
「何事だ?」
慌てふためく霊闢の兵士にカルラの父親が立っていた。
相変わらず偉そうなカルラの父親だがどこが顔付きがおかしい。
何があったのだろう?
「姫様に重症をさせた水華の者に百人の兵士を投入しましたが……」
「結果はどうだ?」
「ぜ、全滅です」
「なあにぃぃぃぃ!」
なるほど。
霊谷の丘に攻めた時にやたらと兵士が少ないと思ったらシルアを討伐するために送り込んでいたのか。
生憎に戦争を想定した天黒刀に狩られたわけのようだがな。
「ですが兵士は皆生きております。 恐らく手加減されたのでしょう」
「百兵をしり退けるではなく殺さずにだと………今すぐに指揮する者に伝言しろ。 あの水華には二度と関わるな、撤退をしろとな」
「はっ! 承知しました!」
風のように兵士は消え去りカルラの父親だけが残った。
苦虫を噛んだ顔付きはどこか苛立ちしているのを感じる。
だが、カルラの父親の判断は正解だ。
いくら兵を物量で押しても最強の個体には勝てはしない。
それも命を取らずに余力をまだまだ隠し持っている相手に再度挑むのは無謀であり、兵を無駄に消費するだけだ。
百を意図も簡単にあしらうシルアと近々戦うとなると身震いしてきた。
「ほんと強敵だな。 チーとにも程がある」
吐露しながら目的地となる前任者が亡くなった土地に向かって歩みを始める。
誰にも教えられなくても何故だが鮮明に覚えているのだ。
根深く残った記憶なのか、はたまた魂の侵食がまた進行したのか分からないがカルラとリーネに悟られるとこなく脱走できる。
そしてトルカ以外にばれることなく前任者の死体が眠る場所へと向かった。




