その1
強い日差しの中、霊谷の森の屋敷の最上階にて風鈴の音を聴きながらそよ風を浴び涼しんでいる。
日光が当たらない日陰の畳の上でのんびりとため息を吐いた。
涼むせっかくの時間がある奴に邪魔されているからである。
「えへへ、サクマの腕温かいね」
銀髪に紅の眼は吸血鬼を連想させる姫らしくない姫のカルラだ。
救出してから一週間。
あれからベットリと朝から晩まで抱きついては寝るまで一緒の始末だ。
リーネが抱きついてくるなら理性が持たないかもしれないが、カルラなら抱きつかれても特に感じないと言うか甘えん坊の妹みたいな感覚だ。
なので一日中纏まり疲れるのは限界である。
「ええい、鬱陶しい! ちっとは自粛しろ!」
「……ぶぅ」
振り払うとしょんぼりとして膨れっ面になる。
はぁ、最初に会ったときの性格と現在の性格が全く異なるのは何故なのか。
俺の印象ではどこかと上から目線で弄られキャラのロリ霊闢なんだが……明らかに性格変わってるよな?
もしくは甘えん坊で子供らしいのが本来の性格で親しくない相手にはいつものキャラに戻るのかのどちらかだ。
……鬱陶しいのには変わりはありませんが。
「ヒマワリの種を詰め込んだハムスターのところ悪いがトルカとリーネの容態は?」
「ハムスターじゃないよ! ……重症だけど命に別状はないよ。 サクマがお父様を八つ裂きにするのに数秒遅かったら危なかったよ」
八つ裂きにはしてないが顔面を砕く勢いで殴っただけだっての。
そう、クソ親父をぶっ倒すのがほんの数秒遅かったら二人の命が散ってたかもしれなかったのだ。
傷だらけで倒れていたのまでは何事もなかった。
回復させるだけで良かったのだが……どうやら戦闘員の霊闢に傷を治りにくくする能力を持った奴が居たらしく深傷を負わされたトルカとリーネは現在集中治療室にいる。
やはりあの数の霊闢を相手にするなど無茶だったのだ。
結果的に親玉を速攻で討ち取り万事解決だが愚策としか言えないのが本音だ。
「で、意識は戻ってるのか?」
「うん、ばっちし会話できるまで回復してるよ」
「そりゃ良かった」
霊闢お頭は順々に何でも言うこと聞くようになったし、カルラは以前よりも明るくなった。
さて、落ち着いた時間は有効に使わなければならない。
石碑のことをリーネから訊きだし解読をしないとな。
後継者に何を託したのかを……。
「それじゃあお見舞いに行ってくる」
「はいはーい私も着いていくよ」
「お姫様は治療する仕事があるだろう。 また後で遊んでやるから自国の者を癒しにいけ」
「……ぶぅ、約束だよ」
カルラには超再生能力が加わってるゆえ先の戦闘で被害が出た兵士の治療に当たっているのだ。
予想以上に被害が大きく傷を癒すのに間に合っていない。
ここでカルラがくつろいでいる暇はない筈なのだが治療をほったらかして抜け出している。
ミサイルを撃ち込んだり、氷漬けにしたり、殴打したりとハチャメチャなことをした。
自力で治すには時間が掛かり国の防衛となると兵士の数が必要だ。
なので急ピッチでお姫様には治しに行ってもらってる。
「えーと、病室は二階の白い扉の部屋だって言ってたな」
普段は生命に危険がある霊闢を集中治療室として使う場所だが国を制圧した俺らチームの貸切だ。
二階へ赴き白色のドアをキョロキョロと見渡し探す。
カルラの親父の趣味なのか灰色のドア一色で統一されている。
そこに場違いの白の扉を発見。
あそこがトルカにリーネが休んでいるとこだ。
早速扉前に歩みドアを三回ノックする。
どうぞと返事がありドアを潜ると元気なトルカとリーネが手を振り挨拶をしてくれた。
そこら中に包帯をぐるぐる巻きされているのが痛々しいがほんと無事で良かった。
「トルカ、具合はどうだ?」
「そうね歩くのが精一杯。 十分に動けるのは当分先ってとこね」
「まだまだ安静が必要か。 ……リーネ、具合は?」
「私は全く動けませんわ。 出来ても能力を少しばかり使う程度の余力ですわ」
「……そうか」
傷の治り具合の進行度がトルカの方が早いようだ。
リーネは全く動けないとはかなりの重症だ。
重症の患者に石碑のことを訊くのはマナー違反だが元気な内に訊いておきたい。
「いきなりだが本題に入る。 リーネ……前任者が亡くなる前に残した石碑はどこにある?」
「藪から棒ですわね。 石碑なら私の空間に閉まってあります。 出すのは辛いですがサクマには重要でしたわね」
合図せずに谷間を指を突っ込みズブリと沈んでゆく。
谷間に現れた金色の空間を腕をかき回し石碑を探しているリーネの表情が険しい……。
出すだけでも辛いとはこの事か。
万全の状態ではないのに空間魔法を使わせて申し訳ない気持ちになる。
探り当てたのか腕を引っこ抜き掴んだ石を壁に放り投げた。
高さが二メートルはあるであろう巨大な石碑が聳え立っている。




