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崩壊した異世界――レクシリア  作者: バル33
第三章:霊谷の森の姫

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その22


「カルラ。 お前はどうしたい?」

「……私は」

「分かっておるなカルラよ」

「……国のため尽くしたい」


 違う違う違う。

 カルラの本音なんかじゃない。

 国のための答えだ。 

 俺はカルラの言葉を聞き届けたい。


「違うだろカルラ。 ちゃんと聞かせてくれ」

「い、いや……私は……」

「国のために尽くしたいと言っておるのだ。 二度も問うではない」

「てめぇは黙ってろ!」


 狂犬の眼光でカルラの父親を睨み怒気を放つ。

 他人の意見なんて聞きたくはない。


「国のため――」

「――そうじゃない! 俺はお前の本心はどうしたいと訊いてるんだ!」

「……っ……ぅ」


 国のため尽くしたいと言い掛けたとこで再度カルラに本心を答えるよう怒る。

 家族でも国でも仲間でもなく、カルラ自信の本心を聞くまでは下がらない。


「私は……私は……」

「カルラよ!」

「こんな生き地獄の国なんて嫌! もっと自由に生きたい! 彼と過ごした日々のように笑って生きたい!」

「――その気持ちしかと受け取った。 やっと本人の声が届いたよ」


 年齢相応に相応しい泣きじゃくりで本音を語ってくれたカルラ。

 自分の意思で答えたカルラに怒りを募る父親が殺気を持った目で俺を睨んでくる。

 今にでも飛びかかりそうなほどの殺意を感じる。


「また人間がぁ……また人間が娘をたぶらかすかああ! ここで汚れた魂の根元ごと滅ぼしてくれる!」

「やってみろクソ親父。 お前の腐った性根を叩き治してやる」


 残った魔法ブロックは攻撃強化のみ。

 ゆえに武器の創造も出来なければ防具も造れない。

 拳のみでクソ親父を打倒するしかない。

 勝てる見込みはあるとは言い切れないものの格闘においても前任者は強い。

 なのでそう簡単には殺られはしない。


「装填」


 最後の魔法ブロックを身体に染み渡らせ力が皆ぎってくる。

 熱した血液を循環させてる感じでいつでも準備は万端だ。

 クソ親父も背後ろから見覚えのある刀を手に取っている。

 紛れもなく日本刀。 鋭い刃先に長くて細い形状なので間違いない。


「消え去れ人間がぁ!」

「つぅ!」


 がむしゃらに左方向に飛び去り間一髪避けた。

 速い。

 十歩先の距離を一瞬で詰めるとは危うく殺られるとこだった。

 危機関知能力を最大に引き伸ばさないと胴体が真っ二つになる。

 警戒を強め二撃目に備えリズムよく小さく飛ぶ。


「でやああああ!」


 着地したと同時にステップで飛びはね身体をずらし避けることに成功。

 瞬時に間合いを詰める抜き足には驚いたが準備さえしておけばかわすのに造作もない。


「どりゃああああ!」


 真横に直線を引く一閃に上にジャンプして回避をする。

 後方に下がれば斬られるためジャンプで対応する。


「もらったああああ!」


 気合いの入った斬り上げの攻撃に骨が可笑しくなるくらい捻り回し間一髪ノーダメージ。

 倒れ込むように床に身体を打ち付けて体勢を崩した。


「おわりだああああ!」


 次の(かぶと)わりの斬撃を回避する時間はない。

 体勢を崩した現状避ける選択肢は存在しない。

 ならば鋭く尖った日本刀に真正面から受け止めるしかない。

 そう、追い詰められた時の受け止め方……。


「白羽取り!」

「なぬっ!」


 無事に挟み込み刀が止まる。

 両手を閉じるのが早ければ手首ごと両断され、逆に遅ければ眉間を両断され、寸分の狂いも許さない精密な動きを必要とする技が白羽取りだ。

 まさか土壇場で出来るとは思いもしなかったが……さすが経験豊富な前任者だ。


「ぐぬぬっ……さっさと離さぬか下郎!」

「そうか。 離してやるからしっかりと刀を握ってろよ」


 白羽取りで抑えている刀を横にずらし床に着かせる。

 足で踏みめり込ましたとこで日本刀は武器として無力となった。

 これで殴れる。

 無防備になったクソ親父の溝に重いボディーブローを一発お見舞いした。

 攻撃強化してる故にこの一発は痛いはずだ。


「痛いか? だけどな……カルラお前から受けた痛みはこんなもんじゃないぞ」

「なにを言っている……痛みなど娘に有りはしない。 祖国に利益をもたらし皆の生活を豊かにする役目を担うことぞ最大の幸福であり、我ら霊闢(フローレ)の崇める存在である」

「……そこにカルラの意思はねえだろ。 国のため働き、国のため尽力し、国のため一生を過ごさせる……親が子を道具として使うんじゃねぞ!」

「……道具だと?」


 そう俺の親が道具として子を見てきた。

 自分の名誉のため子供を利用しそこに俺の感情なんてなかった。

 親は道具扱いしてるなんて気づかない。

 それが俺が最も嫌う分類の人間でまさにカルラのクソ親父が当てはまる。

 だからこそぶん殴って改心させる必要がある。


「我は一度も娘を道具扱いしたこはない!」

「そりゃ自覚がないお前はそうだよな。 だが実際はどうだ。 カルラは自分の意思でここには居たくないと発言したんだ。 娘の気持ちを理解しないお前になに言っても分からないだろうがよ」


 怒りを拳に乗せて追撃で溝に打ち込む。

 汚ない唾液が口から吐き出し心底腹を抱えて痛みに耐えているようだがまだ終わりじゃない。

 動ける余裕がないクソ親父に渾身の一発のぶちこむ準備を始める。

 身体を四十五度右回転をし血が滲み出そうなまで指を折り曲げて力を膨張させる。


「奥歯をよーく食いしばれ。 この拳はちっとばかし頭に響くぞ!」


 遠心力に加えて攻撃強化の魔法の右拳はクソ親父の頬に直撃した。

 めりめりと肉が骨に入っていく不快な音をするも全力で振り切る。

 殴った衝撃でクソ親父は最奥の壁まで飛んでいき激突。

 攻撃強化の魔法の効力が無くなると同時にクソ親父も意識を失ったようだ。

 だが、まだ役目がやることはある。

 一階で抑えてくれているトルカとリーネを救い出せねばいけない。

 それには頬がパンパンに膨れ上がったクソ親父を利用する。

 倒れているクソ親父の襟を掴んで引きずりながら水色の扉前まで行き触れてブロックにする。

 頑丈な障壁を壊さそうと奮闘していた霊闢(フローレ)の集団とお目にかかる。

 気絶した親玉を突きだし宣言をする。


「頭は討ち取った。 降伏すればコイツの命は取らない。 一階で戦闘している霊闢(フローレ)にも伝えろ」


 武装を解除し膝を地につけて降伏のポーズを取る。

 ある者はお頭の命が危険だと悟り一目散に一階へと走り出した。

 襲われては困るためクソ親父を部屋の隅まで引きずり込み丁寧に置く。

 まだ泣きじゃくりで顔面崩壊しているカルラの側に寄り声をかける。


「もう泣かなくていいんだ。 カルラを縛る枷は外したから」

「だっで……だずげて……ぐれるなんて……おもわないもん。 ……なびだ……どめだくでも……がっでにめがからでるし」

「よしよしカルラは頑張ったね」

「うわあぁぁぁぁーん!」


 ぽんぽんぽんと頭を三回軽く叩いて撫でてやると更に大泣きして抱きついてきた。

 ずっと我慢して堪えて溜まっていた鬱憤が出たんだろう。

 ぎゅっと俺もカルラを抱き締め泣き止むまで付き添うことにした。

 クソ親父はぶん殴ったのは遂行したものの今後のカルラを自由にするか謎だ。

 まあ、また病気が再発するなら殴って言い聞かせればいいか。

 ただの暴君に感じるがクソ親父には一番これが良い。

 号泣するカルラの頭を優しく撫で撫でしながら霊谷の森(フロラスラ)の姫を無事に救出大作戦は大成功に終えたのであった。


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