その16
「六つ」
真下から斬り上げに六個の蒼の斬撃。
同様に天を切り裂くよう力を込める。
「ぎっ!」
また大鎌にピシッと破損箇所が増え腕に鈍痛が走る。 骨に響く攻撃は俺の筋力を奪っていく。
持つだけで腕が震えるほど疲弊している。
これ以上大鎌を持つなと脳が信号を送るがそれがどうした。
脳の命令など知るか。
耐えなきゃ守れないんだ!
「七つ」
右斜め下からの斬り上げから発生する物理法則を無視した衝撃波。
休ましてもくれないなクソ。
「があっ!」
身体全体に熱を注ぎ込み奴の剣技を破壊するが刃先がポロリと欠け落ちた。
鎌との状態がリンクするかのように腕が千切れそうな痛みを伴う。
たかだか鎌を扱うだけで身体は限界に。
だが倒れることは許されない。
再度全身に熱を注ぎ込み迎撃の態勢を整える。
「八つ」
予測通りの左斜め下からの斬り上げ。
剣技とゆうよりもはや能力と例えるのが正しい。
能力以外に説明がつかない。
「っぁ!」
交差する剣圧の蒼白き壁を七つの障壁で打ち砕き8つ目を鎌で迎撃する。
踏みとどまる事が出来ずに尻餅をつく。
ついにはおおかが全体にひび割れが入る。
振れてもあと一回か二回…………どうか持ちこたえてくれ。
奴の斬撃が終わるまで砕けるなと意思などない大鎌に命令をする。
「九つ」
間髪入れず九刀の刃。
漆黒の剣を一回転させると中心に丸い窪みの斬光。
時計回りにするだけで斬撃を出せるなんて滅茶苦茶だくそ!
「うおおおっ!」
回りを囲う光の刃はコピーでなんとか凌げるが窪みの防ぎ方なんて分からない。
槍のように鎌を突き付けて受け止める形に持ち込んだ。
見事九つ目を突破した……が黒い持ち手は岩が崩れたように石つぶてと成り果てる。
目の前が真っ白になった。
次の剣圧防ぐ手段は残されていない。
最後の砦だった大鎌は9つの刃に破壊された。
せっかく9回も耐えたのにここで人生を終わらせるのか……。
「あははははっ! 惜しかったね……リーネと仲良く死になさい」
薄汚い笑いをしたのち腰を低く落とし突きの構えをとる剣士。
肩を落とし死を受け入れるリーネさんを目視する。
……殺らせない。 ギりッ歯ぎしりし足に力を込めていた。
何処にそんな力が残されていたのだろうか漆黒の剣士に一直線に走っている。
まだ終われない……終われないんだ!
防ぐ武器がないなら腕で、それでも足りないなら脚で、まだ足りないなら命を賭けろ!
息をするのも忘れて無我夢中で駆け出す。
ぶっ壊れ欠けた紫の刃物を拾い上げ奴に距離を詰めていく。
「十蓮」
一突きで完成した剣技は咲き誇る蒼の花弁。
芸術性すら感じさせるがどうでもいい。
俺はこの一戦を越えなければいけないのだ。
前任者……一時でもいいから力を貸してくれ!
「ぐおおおおおおっーー!」
彼女に通じたのか砕けた鎌の一部を蒼の花弁に伸ばしていた。
使用者が語るのかどう行動すればいいのかイメージが湧き出る。
そもそも勘違いをしていた。
持ち手と鋭利な刃がセットではないと能力を発動できないと思い込んでいた。
本命のコピー能力は刃の部分だけなのだ。
黒い棒はあくまで工程を省くためのショートカット。
大鎌の能力を引き出すには真名を叫ぶだけ。
――その真名は。
「複写煉鎌!」
解放と同時に剣技を食らい味を覚えている欠けた鋭利物が起動する。
変則的な九つの蒼き花びらを豪快に粉砕し残りは突きの一撃。
手に持った欠片で力一杯に正面から押し切る。
バキバキと刃は崩壊するが相手もそれは同じ。
腕がイカれる激痛でも踏ん張れ。
守り抜け!
「こんの野郎!」
エネルギーを燃やしエンジンを蒸かす。
残る全ての力を腕に噴火させる。
押し負けるな。
気合いで奴の剣撃をぶち壊せ!
気力で最後の剣技を受けた結果…………両方の攻撃はガラス細工のように割れ落ち床に散らばる。
体力の底を尽きた僕は地に膝をつき息を荒く吸い込んでいた。
「………末恐ろしい子」
漆黒の剣をぶら下げ近付いてくる。
クソ、抵抗も出来ずに斬られるのか。
「首を切り落としたいけど約束は必ず破らない主義なの」
そのまま通りすがりに呟き扉の前まで行くと止まった。
背を向けて語りだす。
「くれぐれも私を止めに来ないとこね。 邪魔をするなら命の保証はないわ」
黒髪の死神は扉の先へと出て行った。
なんとか凌いで皆の命を繋いだ。
やりきった僕は仰向けに寝転び天井を見上げていた。
腕も、足も、首も、ちゃんと有り生きている実感をする。
「やったぞ。 守りきったぞ前任者」
内に潜む彼女に報告をする。
聞こえているかは知らない。
喜びに浸っていると重大な事を忘れていた。
上体を飛び跳ねるように起き上がりカルラのもとへと駆け出す。
あの漆黒の剣に貫かれたのだ。
出血を早く止めないと死んでしまう。
血が一面に散乱する光景はもはや助からないと悟るもカルラの容体を確認するとスヤスヤと寝ている。
刺された胸の傷もなく衣服が破れているだけ。
命に別状がないのが分かると涙腺が緩んだ。
皆無事に生きているんだなと。




