その15
「なん………ですって。 この鎌は!」
幻想から現れたのは寸分の狂いもない黒と紫の交わる大鎌。
想像した通りだ。
面識のある武器なのか奴は焦りで額から一粒の汗が床に落ちる。
砕けることはなく平然と受け止め、首を刈り取るのに特化した紫色の部分がポッと淡く光り出した。
「ちっ!」
鎌から剣を退けて後方にステップを踏みながら距離を空けた。
漆黒の剣が離れてから鎌は光を灯さない。
触れていないと発動しない能力だと分かる。
奴が後ろに下がり警戒するほどだ。
もしかすると撃退まで出来るかもしれない。
後退してから3秒立ち、漆黒の剣士は戦闘態勢を解き剣を下ろした。
空色の眼光でこちらを睨んできて口元が緩んだ。
「やけにリーネが人間ごときに自らの身を捨ててまで守るかと思ったらそうゆうことね。 複写煉鎌を造れる人なんてこの世でただ一人。 それを無から有に簡単に創造してしまうなんて彼の能力以外にあり得ない。 ――あなた前任者の魂が肉体に入っているのね?」
「………正解だ」
占い師がビビるほどの的中率に素直に驚く。
たった数秒の出来事で答えまで導かれる。
前任者以外に創造を可能とする者が現れてもおかしくないのに断定されたのだ。
洞察力がズバ抜けて半端ない。
これが前任者の元仲間なんだと改めて思い知らされる。
「ほんと彼を思い出せる鎌。 殺る気が薄れちゃったわ」
殺意が次第に薄れていく。
カルラが喋っていた言葉が甦る。
前任者を愛し過ぎたゆえに人間を憎まずにはいられないと……。
標的の人間である僕でも彼女の魂が有るとやりにくいみたいだな。
このまま退散してくれれば有りがたいがまずない。
「あは、殺す気は薄れたけど採点をしてみたくなっちゃった」
「採点だと?」
「あなたには私の剣技を受けてもらうわ。 生き残っていれば見逃してあげる。 死んじゃったら皆殺しにさせてもらう。 彼の尻尾をかじった程度のあなたが生きてる事はないでしょうけど」
「決めつけるなよ。 てめぇの剣技とやら軽く防いでやる」
まるでゲーム感覚で条件を突きつける。
剣技を耐えきれば俺の勝ち。
耐えきれなければバッドエンドとなるわけだ。
防ぎきっても奴が約束を守るとは限らないが
今の僕には提案を飲むしかない。
なにせ鎌の能力も知らないのだ。
実力も戦闘力も不明で追い払える自信もない。
耐えきるだけで帰ってくれるならやるっきゃない。
口を大きく開けて息を深く吸い込み脱力したように吐く。
深呼吸をし身体に入った余分な力は手に握る大鎌に集中させる。
いつでも稼働できるように。
「秘技、十蓮の舞」
そう奴は剣技を唱えると殺気が急激に膨れ上がる。
息をするのも苦しくなるような錯覚が襲う。
気をしっかりと持たないと奴に飲み込まれそうだ。
地面に向けていた剣を天井に差し構えだした。
――来る。
「一つ」
刹那――右から左へと黒い剣を振るうと蒼白き一閃が飛ぶ。
「はっ!」
大鎌を横一線に振るい衝撃波を相殺する。
すると一閃を破壊した紫色は輝き消えることがない。
……なんだこれは?
「二つ」
考える暇も与えてくれない二撃目。
どうゆう原理なのか縦に振るっただけなのに十字に光線が飛ぶ。
一回しか振るう攻撃の猶予がない俺には防ぎようがない斬撃だが……身体が前に降り下ろせと勝手に動く。
「だぁっ!」
奴から一度目に受けた衝撃波が鎌から飛び出してきた。
十字の蒼白き一閃を打ち砕く。
なるほどな。 前任者が残したブロックの能力が判明した。
触れたもの能力または現象をコピーし使用できる。
最初に触れた衝撃波が二回目に出たのが納得がいく。
これで奴からの三撃目も恐れることはない。
「三つ」
右斜めに一線すると縦横プラスに足された蒼い粒子が来る。
「ふっ!」
真正面から襲う光を奴と同じ行動で右斜めに斬りかかり粉砕する。
一振りごとに斬撃波が増えていこうがコピーをする大鎌には通用しない。
「四つ」
「かっ!」
左斜めに一振り。 記号のアスタリスクのような文字を左斜めに線を引き玉砕する。
切り裂いたの途端に持ち手にビリビリと痺れる反動に狩られる。
三度目までは衝撃が走ることはなかった。 回数を重ねることに一撃が強くなっているようだ。
「五つ」
今度は逆再生したように左から右へと剣を払う。
重なり見えないが一閃が多く混じっているのが分かる。
「ぐっ!」
こちらも左から右へと大鎌を払う。
光の線を砕くと鈍い衝撃が手に伝わり嫌な音がした。
ピシッと金属にひびが入る音。
たった五回の斬り込みで欠損した。
奴の剣技を耐えきれるか雲行きが怪しくなる。




