その14
「あはっ! 男が女を置いて逃げれるわけがないとかカッコつけるの傑作だわ。 でも、逃げなかったことは褒めてあげる」
「そりゃどうも………と!」
手持ちは岩のブロック、リーネさんを拘束していた金属のブロック、謎の黒と紫のブロックが1個ずつ。
黒と紫のブロックは使えない。
把握してないブロックは創造の仕様がないからだ。
相手が油断している間に岩のブロックを創造し巨大障壁を造り上げる。
破壊するには手間がかかるはずだ。
この隙に金属ブロックの創造を開始する。
「つまんない時間稼ぎね」
造り上げた障壁は無数の切れ込みが入り氷解するように崩れ落ちる。
だが創造の時間は作れた。
造り出したのは鎖。
奴の剣に絡ませば無力化できる。
インファイトなら少し勝機は有るかもしれない望みにかけて漆黒の剣に鎖を投げ込んだ。
「あら。 やるじゃない」
「おし、成功だ!」
上手く事が運び剣に鎖が三重に絡みつく。
剣を無力化している今が絶好のチャンス。
脚の筋力にありったけの血液を流し駆け出した…が、全力で急ブレーキを掛けて希望が立たれる瞬間を目の当たりにした。
「天黒刀を封じる戦略までは良かったね……でも残念でした。 天黒刀の能力は物質の吸収。 吸収された物質は脆く灰となる」
「……嘘だろ」
最後の頼み綱の鎖は奴の天黒刀の前に吸収され塵となっていた。
他に使えるブロックはない。
くそ! 諦めるしかないのか。
あの日誓った言葉も達成出来ずに守れずに散ってしまうのか。
「策がないようだし終わらせるね」
カツカツと死の旋律がそこまで近づいてきている。
死神は待ってはくれない。
黒き剣で断罪するべく這い寄ってくる。
ごめんな皆。 俺はここまでのようだ。
悪あがきしても助からないと脱力する。
現実的に勝てる見込みはゼロで手持ちのブロックなんて役に立たない紫と黒。
僕に絶望を覆す力なんてないんだよ。
『誓いも果たせず、仲間も守れず、死ぬの?』
空耳に心臓が止まる。
――そうだ。 死んで言い訳があるか。
俺を救いを待っている人達が世界に沢山いる。
こんなところで死ねるか。
ここでくたばれば誰が奴を止める。
誰が仲間を守るのだ。
トルカは脳震盪を起こし気絶している。
カルラは胸を貫かれ一刻も早く血止めしないといけない。
リーネさんは魔法切れで動くこともままならない。
お前は仲間が無下に殺されてもいいのか。
――いいや、殺させやしない。
僕は諦めない。
彼女たちを必ず守ってみせる。
決心すると止まっていた心臓が動き出した。
ひどく頭が冴えていく。
打開する策はこの黒と紫のブロックしかない。
前任者が残した代物だ。
悪魔の剣を担いだ相手を追い払う能力ぐらい強力なはずだ。
だが、何を創造すれば……
「目付き変わった。 ……今更無駄だけど」
歩みを止めない漆黒の剣士。
距離は後5歩程度。
相手は待ってはくれない。
奴に対抗する武器。
彼女ならどう創造をする……。
『本当に守りたい者がいるなら俺を引き出せ』
忘れていた……夢の最後に語っていたことを。
本当に守りたい者……今がその時だ!
だが、引き出せば浸食は早まる。
それでも僕に出来ることは引き出すことしかない。
――あと4歩先に奴がいる。
黒と紫のブロックは元々どんな武器を造る。
探せ、探せ、探せ。
記憶の奥底から前任者の記憶を汲み上げろ。
――あと3歩先に奴がいる。
僕にはない記憶を引き出せ。
全部を持っていかれてもいい。
現状を突破できる創造を寄越せ!
――あと2歩先に奴がいる。
引き出せ……引き出せ……引き出せ……………………来た!
空白に浮かぶ意識から生み出されたのは黒と紫のデュエットした大鎌。
――引き出せた。
必ず生きて帰るぞ皆。
――あと1歩先に奴がいる。
2色のブロックを握り締め創造を始める。
黒と紫の稲妻が走り創造した中で今までにないエネルギーの衝動波が部屋全体に行き渡る。
異質な光景を目の当たりにしても黒き髪の剣士は怖じけない。
――0歩。 脳天に漆黒の剣を降り下ろされた。




