人身売買始まる
「な、何なの一体?」突然おしよせてきた女性陣に李玲玉は困惑している。事情を聞くとヒミコが女性の治療を拒否したと話したのであった。
「なるほどね~……女性は食べてもまずいから治療しないと。そういうわけなんだ」
「はい、そうです。そして私たちが何とかしたいとお考えになったのです」
「それで私に何をしてほしいと?」
「ええ、まぁその……ヒミコ様を説得してくださいませんか?無理矢理とは言いません。ヒミコ様が了承すれば我々はそれで満足なので……」
「はぁ……、分かりました。が、彼女にとってそれなりに見返りがないと無理でしょうね。女神さまと呼ばれてはいますが所詮、彼女の食料事情による理由だけなので」と李玲玉は懸念をしめす。
そんなヒミコの為に何とかしたいというのが女性陣達の本心なのだ。李玲玉としてもできれば女性に優しい世界にしてあげたいと考えているため彼女の為に動くつもりではあった。
「わかりました。それでどのような見返りをお求めですか?」
「まず手っ取り早い見返りは自分が治療してもらう代わりに男を差し出す。ヒミコ様にとっては一番の手土産になると思いますが‥、非人道的すぎますよね」李玲玉はポツリと言った。
やはり彼女は優しい性格の持ち主なのであろう。しかしヒミコ教の教えを信じているため仕方なく提案しているのだ。
「ええ、そりゃあもう……」と女性陣達が苦笑いを浮かべている。が‥中には
「それだ!その手があったのか!」と称賛する人もいた。
「え!?」その声に驚く女性達。
まさか賛同してくれるとは思っていなかったからだ。
「ありがとうございます!是非そうさせて頂きたいと思います!」と頭を下げている。
「は?いやいや、それはいくら何でも…」と戸惑っている女性陣達だが
「だって、そうでしょ。世の中には生活苦で苦しんでいる家族なんて世界中にいるのよ。借金を苦に自殺とか。
お金はないが自分はどうなってもいいから家族を守りたいって男は山のようにいるのよ。だったらお金を渡して手土産になってもらえばいいだけの話よね。男性としても家族だけでも守れて本望のはずよ!」と説明する。
李玲玉としてもそうはなりたくないとは思っていたがこれ以外に方法がないと半ば諦めかけていたので女性陣の意見に納得してしまった。
この手を使えば餌に困ることはまずなくなるのだ。そのため多くの女性から支持を得ることができた。
こうしてヒミコ教徒達によって貧困層や自殺願望のあるような人達へのリサーチが開始された。
そして思った以上の成果があったのだ。なんと半分以上がOKをくれたのだ。中には子供を持つ親もいたため効果絶大であった。
そうして生まれたのが人身売買組織と呼ばれる団体だ。この組織は世界中に支部があるほどまでになりその影響力はとてつもないものとなった。
こうしてヒミコは餌には困らなくなってきた。治療が必要な女性には治療費としてお金の代わりにその女性の身近な男を一人差し出すというシステムが出来上がり治療費が払えないなら家族の誰かを人身売買組織を通じてヒミコの餌にすればいいという流れになっていった。
そのため大金が手に入り余裕ができる家も出てきて家族を売るかどうかで悩む家庭も出てきているのが現状だが……。ただし犯罪歴や前科があるような者は受け入れを拒否することも時々あったらしい。
それはそうだろう。犯罪歴がある人なんて何もしなくてもまたそのうち逮捕されいずれ餌となる可能性が高いのだ。それでも自殺願望のある者にとっては自分を売ることで家族を守ることができるので願ったり叶ったりなのだ。そんな男性達はこぞって人身売買組織へ駆け込んでいった。ヒミコもこの提案に喜んでいたし、中国共産党からもヒミコへのプレゼントとして男を差し出していた。
最初に中国を選んだのはこういう流れに持って行くためだったのだが……
ヒミコは不思議な感覚に陥っていた。
いつの時代も人間とは対立関係にあったからだ。その時代の最先端の武器を使って挑んでくる。そして挑んできた兵士を真っ先に食料にする。これが普通の日常だったのだ。
だが今はどうだ。食料はすでに百年以上はもつくらいある。しかもいくら食べても怒られない上に快適な生活場所さえ提供してくれるのだ
もちろん李玲玉に食料の定期的なストックも忘れないようにお願いしている。この時代はヒミコにとって最高の環境に恵まれたと言ってもいいだろう。
「ね!レイユイちゃん。これからパーティーでもやらない?」とヒミコが尋ねた。
今は食事後のデザートタイムだ。もう40代目前の李玲玉にちゃん付けで呼ぶのはヒミコの癖なのだが。ヒミコが話しかけている相手こそ李玲玉なのだが彼女の容姿は若い頃から全く変わっていない。美人だしスタイルもよく胸も大きい。肌も綺麗で白い。もう40手前のオバサンの筈なのだが、ヒミコのお気に入りのため細胞活性化をしてもらい若いままなのだが。
「はい、もちろん構いません。是非ご一緒させてくださいませヒミカ様」と李玲玉は丁寧に返事をする。
ヒミコにとって男しか食料にならないのであれば人間にとっての貴重な財産と言っていいであろう。
そして、そんな彼女はヒミコにとって唯一の友達である。唯一の友達でありながらヒミコに対して忠誠を誓う信奉者でもあるのだ。
だからこそ彼女はヒミコの命令を何があっても遂行しようとしてきた。そして、その恩返しとしてヒミコも彼女の事は気遣っていた。それこそヒミコの信頼を得てきたからの待遇であった。
ヒミコ教徒たちがヒミコと接するようになってからと言うもの彼女達もヒミカを崇拝しヒミコのために尽くすようになっていった。もちろん男を差し出すという見返りは惜しまないのだ。ヒミコはその見返りとして彼女達に幸福を与えてくれる。
ヒミコ教の教祖は李玲玉だが彼女自身は教祖になりたかったわけではない。あくまでヒミコへの貢献を目指していただけである。
「しかし、思い切った事をしたわよね。国家主席の秘書を辞めるなんて。本当に良かったの?」とヒミコが問うた。現在はヒミコ専属メイドとして暮らしているのだが、過去に国家主席の秘書をやっていた。が、ヒミコに食料を差し出すには政治的な立場だと動きにくいと判断しヒミコ教の宣教に勤しむ為にあっさり辞めたのだ。
「はい。良いんです。ヒミコ様こそが私の全てですから。ヒミコ様の為なら私どんな苦難でも乗り越えられますわ」と自信を持って答える。ヒミコはそれを見て微笑むのだった。
パーティーの準備が女性信者達によって進められた。こんな時に女性の信者は便利だ。男性だと食欲が抑えきれなくなってしまうから。
もちろんヒミコは女性には興味はない。
そして楽しいパーティーが始まった。ヒミコは終始楽しそうな表情で過ごしていた。ヒミコ教の教徒が集まり宴会を開催するのも今回が初めてではないので慣れているのだ。今回は特別に李玲玉も参加していたので、彼女にとっても新鮮な光景だったようだ。
ただ、テーブルには女性達のために豪勢な食事や飲み物が置かれていたが、部屋の片隅では手足を氷で固定された男たちがヒミコの食事用に何人も転がされていた風景は気の毒に思えたが仕方がなかった。
人間が焼肉屋やステーキハウスに行って目の前で牛が切り刻まれていても普通は気にしないだろう。そう思ったからだ。
「ねえレイユイちゃん、この料理は誰が作ったのかしら?」とヒミコが聞いてきたので李玲玉が答えた。
「はい、この店のシェフと数人のコックですね」
「ふ~ん、これっておいしいの?」とヒミコは聞いてきた。
確かに見た目は高級レストランのように見えるが味はどうなのか不安になるところであるし、ヒミコは人間しか食べないのでどう答えていいのか困ってしまう。が、少し食べてみて
「ええ、とてもおいしいと思います」と答えると、
「あら、よかった。口に合わなかったらどうしようかと思ったのよ。私には美味しそうに見えないから‥」と嬉しそうに微笑みながら言った。このヒミカの表情のギャップには李玲玉は毎回やられてしまっているのだ。これが彼女の魅力でもある。ヒミコがテーブルに着いたのはこの会場に連れてこられた男たちのエネルギーや精神力が回復するまでの時間つぶしのためなのだ。
ある程度回復したらヒミコは彼らを食す事になる。
男たちの肉体的エネルギーを吸収しながら男たちの精神も一緒に喰らい尽くすのだ。
もちろんヒミコの食事が始まっても女性たちは大騒ぎなどはしない。
ただ黙々とヒミコを見守っていた。
彼女たちにとってヒミコは絶対的な存在だから。
そんな姿をヒミコは愛おしそうな目で眺めるのだった。




