取引成立
そして取引は成立し中国国内に建前は巨大な刑務所として実態はヒミコの食事場が建設されたのである。
なぜ中国に建設になったのかと言うと…。本来ならどの国も特に米国は中国がヒミコを軍事利用することへの脅威と政権批判をしただけで刑務所に入れられる事を懸念し許すことができなかったのだが、中国以外での建設は例え凶悪犯罪者であっても簡単に死刑に匹敵するような事は許されないとの一部の人権擁護派とその主張ばかりを取り上げるマスメディアの主張により食事場を作るハードルが高かったのが現状だった。ただ建物を建設反対の主張は通ったのだが結局はどの国も犯罪者を中国に引き渡すことになるので結果は変わらないという安全保障の危険性が増しただけの主張になってしまった。
また、中国にとっても都合のよい事柄があった。それは他国から死刑制度の見直し等の話題が挙がり問題視されていた背景があり死刑制度の廃止を表明する事が出来るメリットもあったからだ。死刑執行したとしてその実態は餌になったに過ぎない。廃止宣言をすれば周辺各国が廃止しているのに自国だけ行ってることは国際社会において良からぬ批判の対象になってしまうリスクを回避できるという事もあり中国にとっては最善な解決法と言える。
一方ヒミコもこれには大賛成であった。ヒミコは自分の身の回りの世話をしてくれる召使のような者を探していたのだ。そこに美味しい餌を運んでくれる労働力を提供してくれるというのは願ったり叶ったりの条件だった。
「ヒミコ様、ご満足いただけたであろうか?」視察にやってきた国家元首が尋ねた。ここは人民解放軍の基地内にある刑務所だ。しかし普通の刑務所ではない。中は迷宮のように入り組んだ作りになっていて奥深くまで続いているのだ。
「その前にあなたのお名前は何?名乗るのが礼儀でしょ」と質問してきた。ヒミコは俗世間の事は興味はなかったので誰もが知ってるような人さえも知らないのだ。
彼女にとって重要なのは食べるか食べないか。それだけなのである。
「これは失礼致しました。私は国家主席の伯遠平と申します。以後お見知り置きを」
「ヒミコさま、こちらが死刑囚です。存分にお楽しみください」看守たちが次々に連れて来たのは様々な種類の囚人たちだ。老若男女問わずさまざまな職業や階級の人間が揃っていた。それを見て
「ちょっと、交渉の時にいた李玲玉はいないの?ここには来てないの?」とヒミコは険しい顔つきで叫んだ。
「ああ。実は‥彼女は私の秘書となっておりますのでここには来れないんですよ」と伯遠平主席が答えた。
「なんで秘書なのに近くにいないのよ。身近な世話をするのが秘書なんじゃないの?」とヒミコは不機嫌な表情になった。
李玲玉は秘書にこそなったが普段は米国の軍事大学院に留学中なのだ。将来、外交部の幹部候補生の研修生なのである。そんな状況の女性を秘書とする事に問題はないのか?と言えば特段問題はない。国家主席は基本的に公邸で生活しており休日に李玲玉と顔を合わせるくらいはしている。
それに外交上の仕事は側近たちが処理しているため本人が直接動く必要がないケースが多いのも事実ではある。
「彼女に何か用事でも?それなら大至急呼び寄せますが」と伯遠平は戸惑いながら訊ねたが
「いいわよ!別に呼ばなくても。私が言いたいのはね女の餌はいらないって事。李玲玉はその事報告してなかったのかしら。舐めてんのかな?ねえ舐めてるの?」と睨みを聞かせている…のだが表情が可愛いので本気かどうかわからないのがまた怖い。
ともかくヒミコは激昂しているようだった。
「それについては李玲玉さんが貴女の好みは男性的な感じの人が好みだろうという事で囚人はほぼ全て男性で女性はほんの僅かです」と伯遠平は弁明する。
「だったらあなたにもはっきり言っておくわ。女はまずいからいらない。とっととどこかに連れて行って頂戴」
と言うとヒミコは左手を横に薙ぎ払う仕草をした。するとその一瞬のうちに氷の刃が伸びていき伯遠平の首筋ギリギリを通過した。もし当たれば切断されていただろう。それほどまでに鋭く速い斬撃だった。
「ヒィッ……」と顔色が青ざめるがここで気丈に振舞うのも国家主席たるものだ。ここで泣き叫んでも決して助からないのだから。
「わかりました。すぐにお連れ致しますので……」と言って女性囚人を連れて去って行った。
ここで下手に時間をかければ確実に殺される。そんな雰囲気を纏っていたのだ。
「さぁ〜て、次はあなたの番よ」
とヒミコは残った囚人たちに向かってウィンクした。その瞳は妖しく輝いており見惚れるほどだった。しかしその瞳の奥に潜む邪悪なものを感じ取ると寒気がするほどであった。
囚人たちは逃げようとするも氷漬けになって動けない。まさに絶望的だ。「あぁ……」
「いやだぁ!!!」
「助けてくれぇ!!」
「ごめんなさいぃぃい!」
「殺さないでくれぇぇ!!」と命乞いをしながら泣き叫ぶ者もいたが無駄な抵抗はやめて大人しくしている者もいた。
どちらにせよ悲惨な末路を迎えることは免れないだろう。
「ふふ、みんな必死ね♪でもだめよ。逃げちゃったら」そう言ってヒミコはゆっくりと囚人たちに近づいていった。どうせ監獄内なので逃げられる心配もない。ゆっくりと一人ずつ捌いていく。あえて捌いていくというのは囚人の状況が惨すぎるからである。
「ひぃい」と恐怖におののく囚人をヒミカが触れる。
そして触れた先からパキパキと音を立てて乾燥させつつ凍結させていく。これが餌に触った時の感触だ。非常に気持ちいいらしく「あぁ……ん♡」と甘い吐息を漏らす始末である。そして最終的には骨になるまで粉砕してしまうのだ。この行為を一通り繰り返す。まるで拷問のようだが本人は楽しんでいるようだった。ヒミコは満面の笑顔で「次の人どうぞ」と次々と捕食していった。囚人たちは次第に狂乱して暴れる者が出たがそれも無駄に終わる。なぜなら暴れても氷漬けの状態の身体ではどうしようもないのだ。そのうち体力がなくなり無力化されるだけなのである。ヒミコの力は圧倒的だった。例え凶悪犯だろうが犯罪者だろうが関係ない。この女にとってはただの食糧に過ぎないのである。
ただこの施設ができてからと言うもの世界中の犯罪が激減したのは皮肉な話である。
逆説的にヒミコに差し出す生贄も激減するのだが。これはヒミコも予想してなかったことだった。中国で作られた施設ではあるがそれは中国の犯罪者だけを処刑する施設ではなく世界各国から死刑執行の依頼が来る施設だったのだ。無論依頼といってもヒミコは囚人を食料として要求しているわけなので囚人は餌となり死刑という扱いになるのである。
だから世界各国で犯罪率が激減する結果になりヒミコに差し出せる餌が減ってしまったのである。
これでは意味がない。そこで李玲玉は新たなプランを立てる事にした。それがこのプランだ。まさに非人道的プラン。それは病人や高齢者をメインに差し出すというのだ。
非人道的なプランだが伯遠平国家主席は二つ返事ですぐにそれを認めてしまった。認めなければ餌が足りないと国民もしくは自分が餌になる可能性があったからなのだから。
李玲玉の思惑はこれで十分達成したことになるのだ。そしてこの話を聞くとヒミコは大喜びした。まさかそんな素晴らしいアイデアを出してくるなんて感激してしまったのだ。
その日の晩餐は豪華なものとなったのは言うまでもないだろう……。




