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〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
ついに魔術師としての生活がスタートした、アリスとアダン。しかし、覚えることが一杯ですでに頭がパンクしかけていた。
そんな中、また新しい授業が始まって……。
王宮魔術師は、国と国民を守るために働く。
学生であっても、それは同じだ。勉学に励みながら、魔術師として依頼と呼ばれる仕事をこなしていく。
依頼は、ゲームで言えばクエストのようなものだ。無事に解決することが出来れば、その難易度に応じたポイントがもらえる。
魔術師はポイント制。学年ごとに定められたポイントを年度末までに集めていなければ、否応なく強制退学させられるため、魔術師たちはこぞって依頼を受けようとする。
その依頼を魔術師たちに紹介してくれるのが、チーム担当の上級魔術師だ。
「——そんなわけで、君らも今日から魔術実技が始まる。担当魔術師が許可を出せば、めでたく依頼に連れて行ってもらえるようになるよ」
担任のアドワは淡々と説明していくが、アリスはそれについて行くので精一杯だ。
アリスたち学生魔術師は基本、学業と依頼でポイントを稼いでいく。
だが、他にもポイントを稼ぐ方法はある。
一つは、上級魔術師の付き人をすること。皓然がルイスの付き人をしているのがこれだ。付き人制度は、ゼミのようなものだった。勉強したいことがある学生がその専門の上級魔術師に教えを乞う代わり、様々なお手伝いをする。ただし、上級魔術師一人につき、学生魔術師一人しか面倒を見ることができないため、この仕事に就いている学生は少ない。
もう一つが、何かの部署に所属すること。例えば、保安部。この部は王宮の平和維持活動が主な仕事だ。パウラが所属する情報課という課は、情報収集を行って国にとって不利益な情報が出回っていないか、情報漏洩をしている者がいないかをチェックする。こちらは、希望すれば所属することができる。特に、保安部は無限に人手が欲しいのだという。
——と、チームメイトたちからも教えられているから、アリスは覚えることだらけで頭が一杯になりつつあった。加えて、通常の授業もある。
正直、チームメイトが何の仕事をしているのかと、自分の仕事のことを覚えるだけで精一杯なのに。それなのに、あの担任はこれからまた新しいことが始まるのだと言うから、どこか絶望に近いものを感じる今日この頃だ。
「君たちが所属するチームは今日から魔術実技が始まる。まあ、スタートラインは同じわけだね。それぞれのチームによって得意不得意な依頼があるだろうから、依頼内容もそれぞれで違ってくるだろう。もちろん、ポイント数も。自分の所持ポイントを見ながら、付き人や部の仕事をするのを決めることになる。今日は以上、あとはリーダーの指示に従うように」
アドワが言うように、今日は昼休憩を挟んでから一年生はみんな魔術実技がある。内容はチームごとに異なるので、魔術の授業だけは進み具合がそれぞれで変わってくる。
桃子たちと食堂で昼食を取ってから、アリスとアダンの二人はそのまま魔術実技を行うための訓練場に向かった。
この王宮には、一から三百までの訓練場があった。一つ一つの部屋は作りが違っていて、ありとあらゆる状況が再現されている。
今日は、二九三番の訓練場を使うのだと、今朝パウラから言われていた。
長い廊下には、マンションのように等間隔で扉が並んでいる。それなのに、ドアの向こう側には終わりの見えない草原が広がっているのだから、アリスは軽いめまいに襲われた。
魔術師になって五日目。すでに疲れているらしいから、明日が休みで本当に助かった。
訓練場には、既に先輩たちがやってきていた。パウラは、何やら分厚くて、派手な装飾が施された本を抱えている。しかも、本には鎖と南京錠がかけられていた。
「アリスは、既にお疲れみたいだな」
「覚えることが一杯だし、ビックリすることばっかりだし」
「そうだね。明日はゆっくりすると良いよ」
そう言ったパウラがくれたチョコレートは、食べるとなぜか体が軽くなった。
「魔力が練りこんである。少しは楽になったんじゃないか?」
「うん、ありがとう」
パウラの言っていることはよく分からなかったが、少し疲労感が軽減されたのは確かだ。
水も飲んでアリスが一息ついたところで、担当の上級魔術師がやってきた。
ゆるく一つにまとめたオレンジ色の髪を揺らす、緑色の瞳を持つ若い女性だ。年は三十代前半くらいだろうか。七分丈のパンツスタイルの制服で、ベルト代わりにスカーフを腰に巻いている。その人の胸元には、三枚の羽の階級章。宝石は真っ赤なルビー。
この女性が、『あまりもの組』を引き受けてくれた上級魔術師、メアリー・ウォルシュ。そして、レオが付き人をしている魔術史学の専門家だ。
メアリーは、既に集まっていた生徒たちにふわりと微笑んだ。
「みんな久しぶり。ごめんね、新しい遺跡の発掘に手間取っちゃって」
「先生、何か発展ありました?」
メアリーにそう尋ねたのは、目を爛々と光らせるレオだ。レオは別世界でも社会科、特に歴史が好きだったのだが、それはこちらの世界でも同じらしい。
そんなレオに、メアリーもまた「あった、あった!」と楽しそうに答えた。子供のように、頬まで紅潮させて。
「大体、二千年くらい前の神殿っぽくって! 今回は花の跡が見つかったの! 多分ユリの花だと思うんだけど、やっぱり、見つかったこと自体が素晴らしいわよね!」
「まじか! 俺も今度、連れて行ってもらってもいいですか!?」
「二人とも、水を差すようで申し訳ないのですが、そろそろ始めませんか?」
咳払いをした皓然が脱線した話を戻してくれたおかげで、メアリーとレオの二人はハッと我に返ったようだ。
「ごめん、ごめん。レオ、この話はまた後でね。さて、二人ともようこそ! 担当のメアリー・ウォルシュです。専門は魔術史学。学生時代はルイス先輩に狙撃を教わったの。付き人は、そこにいるレオ。あとはねぇ……、あ、娘が一人いるから、会ったら仲良くしてあげてね」
「アリス・ランフォードです。えっと、よろしくお願いします!」
「先生、久しぶり! これからよろしくね!」
あまりにもアダンがフランクな挨拶をするのでアリスが目を見張ると、それに気付いたアダン本人が「メアリー先生は魔法使いの授業も持ってるから」と教えてくれた。
「上級の先生はあまり多くないから、メアリー先生は魔法使いの時から知ってるんだ」
「だからって軽すぎる! アダン、先生は君のお友達じゃないんだからね? 魔術師になったんだから、気持ちを入れ替えてもらえないと困るわよ!」
「はぁい」
アダンは相変わらずだったが、メアリーも本気で怒っているわけではないらしかった。その証拠に、これ以上は怒らず、肩をすくめただけでこの話を終わらせてしまった。
「さて、これからの方針について説明するね。うちのチームは火力が強いから、魔物退治の依頼が七割を占めてる。珍現象の解決が二割、残り一割は他のチームの補助。そんな訳で、二人にも魔物と戦えるくらいの力を持ってもらいます。うちは基本、習うより慣れろの精神。早速、二人の実力を見せてもらうわね。——パウラ」
「はい」
パウラは抱えていた本の南京錠を外すと、無造作に前半部分を開いた。
「“パウラ・ツヴィングリの名において、お前に姿を与える。出でよ、レッド・キャップ”」
本の上に浮かび合った赤い魔法陣から、赤いとんがり帽子を被った小さな人の形をした生き物が飛び出してきた。尖った耳に、鋭い牙が生えているそれは、混乱しているようで、あちこちを見回している。
「レッド・キャップ。廃墟に住み着いて、近づいた人を襲う悪い妖精よ。帽子が赤いでしょ、あれは被害者の血で染めているのよ」
「へっ」
驚きのあまり固まったアリスに向かって、召喚されたレッド・キャップが飛びかかってきた。しかし、アリスの前に現れた白い魔法陣によってそれは憚れる。
魔法陣を浮かばせたメアリーは、アリスの肩を抱いてニコリと微笑んだ。
「さあ! アリス、アダン。二人でこのレッド・キャップを倒して!」
「た、倒す!?」
アリスは素っ頓狂な声をあげたが、メアリーはレオたちと一緒にその場から離れて「頑張って!」なんて声援を送ってくる。
「ええっ……!」
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