42.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
チーム担当魔術師、メアリー・ウォルシュと出会ったアリス。メアリーは早速、新人二人の実力を図るため、魔物を倒すように言ってきて……。
「ええっ……!」
そもそも、魔術の使い方を知らないのに……!
おろおろしているアリスに再びレッド・キャップが襲い掛かってきたが、すれすれの所でアダンがかばってくれたので、振りかざされた鋭い爪が地面をえぐっただけで済んだ。
「大丈夫!?」
「う、うん……」
呆然としているアリスの前でレッド・キャップが再び二人に牙をむいて威嚇してきたので、アダンはアリスの手を引いてその場から離れた。
正直、アリスの魔力であればレッド・キャップを簡単に倒せるだろうとアダンは思っていた。だが、そのアリスは驚きのあまり動けないでいるようだ。
ということは、アダンがどうにかするしかない。
「あー、もう! どうにでもなれ!」
アダンはアリスを背後に隠すと、手のひらに浮かんだ魔法陣から弓矢を取り出した。
矢をつがえ、二人に襲い掛かろうとするレッド・キャップに向かって容赦なく矢を放った。
矢は真っ直ぐに飛んでいき、レッド・キャップの右肩に突き刺さった。悲鳴が上がる中、アダンが放ったもう一本の矢は額に。
やっと悲鳴が止まり、アリスはそっと顔をあげた。結局、アリスはアダンに助けてもらっただけで、何もしていない。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして。立てる?」
弓矢を再び魔法陣にしまったアダンが振り向いた瞬間、アリスの口から「あ」と声が漏れた。
倒したはずのレッド・キャップが、アダンに襲い掛かろうとしていた。
アダンもそれに気づき、二人が小さくなって固く目をつぶったその瞬間。
襲ってくるはずの痛みは来ない代わり、乾いた発砲音が鳴り響いた。
「危なっかしいなぁ」
煙を上げる銃を手に、レオは肩をすくめた。どうやら、レオが止めを刺して二人を助けてくれたらしい。
地面に転がっていたレッド・キャップの体は砂のようにサラサラと溶けていき、パウラが開いていた本に吸い込まれていった。
全ての砂が吸い込まれて、パウラが再び本に南京錠をかけたると、メアリーは腕を組んで二人に「お疲れ様」と声をかけた。さっきとは違い、笑顔は一つもない。
「なるほど、よく分かった。まず、アダン。さすがの腕前ね。油断が無ければもっといい。最初に急所を外したのはどうして?」
「まずは動きを止めないとダメだと思って」
立ち上がり、アダンも真面目な顔でメアリーの問いに答えた。
「アリスを守らないといけないし、動きを鈍らせれば逃げやすくもなるから」
「なるほどね。でも、実際に現場に出てみたら分かるけど、矢の数には限りがあるでしょ? だから、最初から急所を狙って攻撃した方がいいな。一発でも当たれば、急所を外したとしても相手の動きは鈍るからね」
「そっか、なるほど!」
「それから、アリス」
名前を呼ばれて、アリスはビクッと体を跳ね上がらせた。アダンでこんなにアドバイスをもらっているのだ。自分の評価はとんでもなく低いはずだ。
メアリーは困ったようにアリスを見つめていたが、決してアリスを責めたいわけではないらしかった。
「ごめんね、あなたはこっちに来たばかりだったわね。別世界で魔法は使ってた?」
「あ、いいえ」
アリスが首を左右に振ると、メアリーは目をまん丸にした。
「これっぽっちも?」
「これっぽっちも。先月、というか二週間くらい前に初めて魔術界のことも、私が別の世界から来たってことも、……お父さんたちの本当の子供じゃないってことも、知りました」
「そうだったの。……大変だったでしょう。心の整理もつかないまま、こっちに帰ってきたのね。急にこっちの生活を覚えろって言われても、ついて行くので精一杯よね」
メアリーに肩を叩かれた瞬間、よく分からないうちに視界が歪んだ。
「ええっ! おまっ、どうしたんだよ、突然!」
慌てた様子でレオがシャツの袖でアリスの顔を拭ってくれているのが分かる。でも、今のアリスにはレオの問いに答えることが出来なかった。
見かねたメアリーが休憩を入れてくれて、皓然が水筒に入れて持ってきた温かいお茶をコップに淹れてくれた。それでもアリスの涙が止まることはなく、アダンはずっとオロオロとあちこちを行ったり来たりし、パウラは背中をさすってくれていた。
「——アリス、こっちにおいで」
それでも、涙は止まらなくて。
それもあって、レオに手招きされたアリスは、迷うことなく兄の胸に飛び込んだ。
いつも憎まれ口ばかり叩いて来るし、最近は冷たいことが増えたレオだが、アリスが泣いている時はいつも慰めてくれる。アンがしてくれるように、抱きしめて。
「ほら、ゆっくりでいいから」
頭も撫でられると、アリスはやっと落ち着きを取り戻し始めた。
自分の気持ちに寄り添ってもらえて嬉しかったのと、それを認めてもいいのだと思えた安心感で、涙が止まらなかった。だが、一度こうやって泣いてアリスの気持ちはかなり楽になった。心が軽くなるとは、まさに今の心持のことを言うのだろう。
お茶を一気に飲み干したアリスは、みんなに取り乱したことについて謝り、レオには慰めてくれたことのお礼をした。みんなそれを責めることもないし、むしろ「アリスの気持ちを知れてよかった」とまで言ってくれたから、アリスはこのチームに入れたことを心の底から喜んだ。
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